神田 真

午前二時五分

 うちの猫

 ブランケットに

 包まれて

 夢の中へ

 そっと踏み出す


 午前二時五分。少しの仮眠をとって、私は目が覚めた。

 いつものように、そばに寄り、君を優しく撫でる。

 おそらく今日だと、もう聞いていた。

 微かに暖かく、すべすべして、もふもふの体。だけど、家に来た時みたいなまるまるとした肉付きはなく、あばらを感じる。

 君はいつもその好きだったブランケットに包まれて、寝ていたね。

 主人が臓癌で亡くなって、四十九日。法要が終わって主人の書斎に行くと、お魚を咥えて、まるで漫画みたいに君がいた。

 さも当然というようにくつろぐ君は、主人が生まれ変わって戻ってきてくれたのかと驚いたし、嬉しかった。

 最初はすごく怖い目をしてた。お風呂は入らないし、トイレもいろんな所にする。だけどだんだん、目が穏やかになっていった。

 煮干しが好きで、出汁に使ったのを奪い去って書斎に隠してしまう。

 それに怒ったら、今度は直接催促してくるようになった。

 のら猫は家族に死に目を見せないっていうのに、君はそんなにふぬけたの?

 微笑んで君を撫でる。だけど、もう何も返してくれない。

 君がいた間、すごく幸せだった。

 君のおかげで新しいことに挑戦できた。知らなかったことを知れた。

 たくさんの優しい人と巡り会えた。

 何度も君と苦労したけど、それが楽しかった。


 なんの病気もせず、天命を全うしてくれてよかった。


 おやすみ。楽しい夢を見てね。


 私は

 うちの猫を

 大好きだった主人のブランケットに包んで

 夢の中に

 そっと送り出した。

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