大迷走編
第13話 帰還
ここらへんからしばらくどう話を進めたらいいのか分からなくなって迷走しています。別に好きでイチャイチャさせている訳ではないのです。何も思いつかないから書けるように書いていただけなのです。
「おお、無事でしたか。丸1日戻ってこなかったので何かあったのかと心配しましたぞ!」
「無事戻りましたイーヒット司祭」
「お前まさかずっと待ってたのか……?」
「当たり前でしょう。あなた達は戻ってくると言いました。ならばそれを信じて待つのが聖職者として、いや、人として当然の務め。それにほら、実際あなた達はこうして無事に戻ってきてくれたじゃないですか。神よ、ふたりを無事に帰還させてくれて感謝いたします……」
「いい人だ……」
「…………」
ホリィが神という言葉を聞いて複雑な表情をしている。元が聖職者なだけに、神の実態に対する戸惑いは俺よりも大きいだろう。ホリィは信仰に対してどんな結論を出すのだろうか。信仰捨てるのかな。
「どうしましたシスターホリィ。汚物を耳から突っ込まれたかのような顔をして」
「いえ、色々あったので少し疲れているだけです」
「イーヒット司祭。立ち話もなんだし、どこかくつろいで話せる場所に移動しよう。私も彼女も戦闘を行ってきたので、少し息を抜きたいのです」
「おお、気が利かずに申し訳ない。よく見たらお二人の服装は大分汚れていますな。戦いのせいでしたか。でしたら、上級信徒用のクローズドルームにご案内しましょう。暖かいお茶と小料理をご用意しましょう。浴槽もついてますのでぜひご利用ください」
「至れりつくせりで恐縮です。ご厚意に甘えさせて頂きます」
「ありがとうございますイーヒット司祭」
「いえいえ。困ったときこそ助け合いです。では、こちらへどうぞ」
俺たちはイーヒット司祭を先頭にクローズドルームへと移動した。
「ぴゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!? 教皇様が魔王軍の幹部の4羅将でサフィラ教はグリモア王国侵略の道具だったぁ!? そんなァ! そんなァ馬鹿な……」
「ああ、やっぱりイーヒット司祭が壊れた……」
「残念ながら事実だ。証拠もある。インベントリオープン!」
俺はインベントリから教皇の死体を取り出した。セイントヒールで元通りにして回収しておいたのだ。俺は教皇の死体を聖剣で8枚開きにしてイーヒット司祭に見せる。
「らめぇ!? 罪深い光景見せないでぇっ!!」
「駄目だ見ろ」
首を掴んでグリッとな。
「ひぎぃっ!」
「ほら、体内の構造が人間と全然違うだろ。教皇が人でない証拠だ」
「馬、馬鹿なァッ! 教皇貴様これまで私を騙していたのかァッ!!!」
「そうだ。真実に目覚めたなイーヒット司祭」
「お、おおおお……おおおお……おおおおおおッ………!!!」
「イーヒット司祭がガチギレしてるの初めて見ました……」
「私はサフィラ教の真実を全国民に伝えるッ……! 教皇の目論見を完全に潰す。サフィラ教を再起不能にしたるッ……!」
「人望に熱いイーヒット司祭の言葉ならみんな信じますよ。が、頑張り過ぎない程度に頑張ってくださいね」
「ああ……全人類の救済を掲げる教義に共感して入信したのに、私の純粋な思いを裏切りやがってェ……! 潰す……!」
「ふふ、純粋な正義の心を燃やす人間というのは見てて気持ちがいいな」
「純……粋?」
「本当に、あなたはいい人だよイーヒット司祭。サフィラ教の事後処理は任せましたよ」
「任せろ。これからの私の全てをかけて跡形もなく解体してみせる。これまでの私の全てだったサフィラ教をなっ……!」
サフィラ教の今後については覚醒したイーヒット司祭に任せてもよさそうだ。間違いなく潰してくれるだろう。物理的な破壊しか出来ない俺には不可能な仕事。イーヒット司祭は尊敬に値する人物だ。
本当にあなたはいい人だよ。
俺たちは協会を出たあと、街をブラブラ歩いていた。目に見えるもの全ての意味が昨日と変わって見える。ホリィも同じ気分だろう。世界でただ二人だけが味わえる特別な気分。誰かにあげれるものなら今すぐあげたいぜ。
「私、シスターじゃなくなっちゃいました」
ポツリと、ホリィが呟く。ホリィが所属していたサフィラ教は遠からず解体されるだろう。それは即ちホリィのシスターという身分を保証していた後ろ盾がなくなるということ。唐突に自分を自分たらしめていたものを失うのはつらいだろう。だから俺は慰めの言葉をかける。
「安心しろ。シスターじゃなくなってもホリィの価値は何も変わらない」
「あ、あの、そう言ってくれるのは嬉しいんですけどそういうことが言いたいんじゃなくて、その、私、無職になっちゃいました。収入なくなっちゃった……」
「……」
思ったより現実的な悩みを抱いていた。
「今すぐ金が入用なのか」
「いえ、まだ貯金に余裕はあるので当面は大丈夫なのですが、世間体もありますし、やはり無職というのはよくないかと」
「でも、ホリィは魔王討伐隊の一員じゃないか。膨大な支度金が定期支給されるんじゃないのか?」
「うぐっ!」
「ホリィ?」
「そ、その、魔王討伐隊はクビになりました。アリアと役割が被る下位互換のお前は、敵の攻撃の的を増やすだけだからいらないって……」
「……すまないホリィ。正直クビになった理由に納得してしまった」
「……くすん。やっぱりマルスもそう思っていたんですね」
「俺はそんなことは思っていない。ホリィに俺はいつも助けられてばかりだった」
「そ、そうですか? 本当ですか?」
「本当さ。俺が言いたいのは、ホリィの魔王討伐隊での存在意義は俺との連携ありきだったってことだ。だから、俺が抜けたあと、こうなるんじゃないかと薄々予想はしていたよ」
「う、うん。マルスの予想していた通りでした。だって、誰も記憶の追想を受け容れてはくれなかったし、多分、受け容れてもらえてもマルスみたいに使いこなせはしなかった。……私、マルスがいないと、駄目なんです」
「……」
胸に、グッとくる言葉だ。
「し、仕方がないなぁホリィは! 俺がいないと駄目なんだもんなぁ! ふ、ふふふ、ははははは!」
「なんか嬉しそうですね」
「まぁな。やはりお前は俺がいないと駄目なんだな。そうか、そうかぁ……し、仕方がないなぁ! また俺がパーティを組んでやろう!」
「ほ、本当ですか!? 嬉しい……!」
「はーっはっはぁっ! 俺とお前のパーティー【ジャスティス・セイヴァー】の復活だな!」
「はい! 私とマルスはパーティーです! 今度こそずっと!」
「ああ、俺がずっと側にいる。約束するよ」
「っ!」
なぜかホリィは顔を赤らめてて俯いた。。
「今のは、反則ですよ……」
小声で何事かを呟く。聞こえなかったので俺は聞き返した。
「え、なんだって?」
「いえ、なんでも。ふふ……」
唇に指を当ててはにかむホリィ。機嫌が良さそうだ。俺とパーティを組めたことがよっぽど嬉しいのだろう。喜んでもらえて光栄だ。
隣を歩くホリィが俺の目をまっすぐ見つめる。ホリィの瞳は空のように透き通った蒼色をしている。光に照らされると空を写したような色合いを見せる、ホリィの純粋な心が宿ったこの瞳が俺は大好きだった。
心洗わられる程に綺麗だから。
吸い込まれそうな程魅力的だから。
見惚れる俺の心を知ってか知らずか、ホリィは舌を出して、珍しく少しいたずらっぽく笑った。
「今度こそちゃんと、ずっと側にいてくださいね?」
――頷く以外の選択肢を、とっくに俺はホリィ奪われている。だから力強く、俺は頷いた。
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