第4話 『攻略本』を用いたアイテム収集

「こっちか」


「次はこっち」


「ぜぇぜぇ、こっちか。本当に合ってるんだろうな?」


 一人きりとなったダンジョン攻略。一人で残されたことに対して悲しく思ったのか、自然と独り言が増えてきた。


 一人暮らしの時間が長くなると、独り言も増えると聞いたことがある。そこに一歩足を踏み入れてしまったのだろうか。俺はため息つきながらそんなことを考えていた。


「お、アイテムあるじゃん」


 長い道のりの先にはアイテムボックスが置かれていた。本当なら、このボックスに罠がないかを確認する必要がある。


 しかし、『攻略本』を使うことでこのアイテムボックスに罠がないことは確認済みだ。それどころか、開ける前からここに入っているアイテムが何であるのか教えてくれていた。


『レベルアップの欠片』。そのアイテムの効果も頭に自動で流れ込んでくる。どうやら、文字通り俺の冒険者としてのレベルを上げてくれるらしい。


 俺の今のレベルは5。色んな特訓を付けてもらってようやくレベル5になったのだ。早乙女達はもう二桁のレベルになったと聞いたな、どうやらできが違うのだろう。


 俺はそのボックスを開いて『レベルアップの欠片』を手に入れた。本当なら、ダンジョンに入ったときはアイテムは山分けにするのだ。しかし、このようなレベルを上げるアイテムは俺達の元にはおりてこない。基本的に一軍の皆様が使われるのだろう。


「まぁ、黙って使ってもバレないだろ。……そういや、どうやって使うんだ?」


 そんなことを考えると、俺の脳にそのアイテムの使い方が流れ込んできた。これも『攻略本』の効果なのかもしれない。


 なんか『攻略本』って大まかなギフトだと思ったが、使いようによっては結構使える能力なのかもしれないな。


 俺は『攻略本』から教えてもらった使い方通り、その欠片を指の先で潰してみた。


 すると、潰れた欠片が周囲に舞った。煌めく欠片の破片が舞っていく中で、体の奥の方が微かに熱くなるのを感じた。


 俺は何気なしにステータスが記載されているカードを確認して見ることにした。多分、使い方があっているのならば、レベルとかステータスが上がっているはず。


「おー、本当にレベルとステータスが上がったな」


 俺のレベル上昇に従って、ほぼすべてのステータスが上昇しているのが分かった。あれだけレベルを一つ上げるのに苦労したというのに、こんな欠片一つでレベルが上がるのかよ。


「一軍は、これにプラスして豪華な食事つきか。そりゃあ、いつまで経っても距離が縮まらない訳だ」


 きっと、どこかに行く度にこういうアイテムを見つけて使用しているのだろう。


 羨ましいと思う反面、今さら三軍に戻って訓練を受けるのも馬鹿らしく思えてきたな。


「……なんか、アイテムの反応がそこら中にあるな」


 俺の『攻略本』が反応していたので、周囲に意識を向けてみるとアイテムの反応があることに気がついた。


 しかし、アイテムの反応がある場所まで行っても周囲にはアイテムボックスのような物はなかった。


『攻略本』の誤反応? いや、そんなことはないと思うのだが。


 そう思ってその反応する場所に目を凝らしてよく見てみると、そこには赤色の結晶のような物が落ちていることに気がついた。


 それを拾ってよく見てみると、それが『攻略本』が示していたアイテムであったことが分かった。


 誤反応などではない。ただ俺が気づくことができなかっただけだったのか。


「これは、『攻撃力向上の欠片』。アイテムボックスにも入ってない物なんてあるのか?」


 アイテムって、こんな形で落ちてたりもするんだな。俺は『攻略本』の情報から、それが何であるのかを確認した。


ていうか、こんなの鉱石とかに詳しい人じゃないと分からないだろ。


俺はその赤く輝く結晶を角度を変えて眺めていた。先程は『レベルアップの欠片』を勝手に使用してしまった。今回は持って帰った方がいいのだろうか。


「まぁ、たまには羽を伸ばしても罰は当たらないだろ」


 俺はそんなことを考えながら、『攻撃力向上の欠片を』指の先で砕いたのだった。


 俺の攻撃力が上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る