第2話 結局変わらないスクールカースト

「聞いたか? 坂口の奴、今日から一軍だとよ」


「まじか、誰が二軍落ち?」


「谷村。なんか『投てき』のスキルが『狙撃』よりもいいらしい」


「いやいや、そんなことないだろ」


「まぁ、俺達三軍が知っても仕方ないよな」


 俺達がこの世界に連れてこられてから数か月が経過した。そして、俺達は連れてこられた数日後、クラス分けというものが行われた。


 俺達のクラスは30人程いたため、その中から能力が高い順に振り分けられたのだ。


 まず一軍。これは戦闘に特化した『ギフト』を持つ者達が集まる、エリート集団だ。『勇者』や『戦士』、『魔法使い』や『回復魔法師』などが挙げられる。


 次に二軍。これは補助や生産系の『ギフト』を持つ者達が集められた。『錬金術師』や『鍛冶師』などが挙げられる。いわゆる、後方支援をするための集団だ。


 そして、我らが三軍。これはただの余りもの集団だ。一軍にも二軍にも入ることができなかったハズレギフト持ち。


 それぞれのクラスによって、与えられる食事や武器、アイテムが異なるのだ。噂に聞いたが、一軍の皆さま達は食べるだけでレベルが上がるような食事を頂いているとのこと。


 分かりやすく言えば、一軍様は総理大臣のような食事を。我々三軍は刑務所のような食事を食べているといった感じだ。


 そして、クエストにもまともに連れて行ってもらえない我々には逆転のチャンスなどはないのだ。


「上田! 一軍司令官がお呼びだ!」


「はい、はい」


「お、案内人か? 頑張って来いよ」


「はいよ」


 そして、こうしてたまに用があるときだけ呼ばれるのだ。


 仕事が終わったらまた元の三軍に戻される。俺が這い上がるためにはこの少ないチャンスを活かす他ないのだ。


 まぁ、そんな意気込みがあればの話なんだけどな。




「上田! 久しぶり、よろしく頼むな」


「え、ああ。おうよ」


 どうやら、俺が呼ばれたのはダンジョン攻略のためらしい。ダンジョンに向かうまでの道中。俺に気さくに話しかけてくる奴がいた。


 クラスの中心人物でサッカー部のエース、早乙女王子君だ。


 名前の通りの甘いマスクに、生まれ持った運動神経だけで周りからの信頼を勝ち取ってきたのだろう。なぜ高校生というまだ何も成功していない年齢で、それだけの自信を身に纏えるのか。


 学校の七不思議としてカウントしてくれないかな、本当に。


 倒すべき相手である魔王とも話し合いで解決とはしちゃいそうなタイプ。そして、この男のギフトは『勇者』だという。


 なんで異世界まで来てまで勝ち組なんだよ。いい加減にしてくれよ、神様さんよ。


「なんか、しばらく見ないうちにごつい装備を付けるようになったんだな」


「え? ああ、これかい? 飯田君とか大野さんが俺用に武器とか防具を作ってくれたんだ! ここにいるみんなは、クラスメイトが作ってくれた装備を身に着けているんだ!」


「はえー」


 そう言った早乙女はなんか金色の防具と、金色の大剣を担いでいた。どこかの成金みたいだな、とでも言ってやりたいが、そんな事を言ったら周りから非難されるのは俺だろう。


 それにしても、みんなか。一軍様は良い装備品を貰えるんだな。


 そんな俺は制服に腰から短剣をぶら下げただけの装備だった。なんかこの中にいると俺だけ異世界から来た人みたいだな。だって、皆さん異世界に馴染んでいらっしゃるんですもの。


「こいつ必要なのか?」


 そう言って来たのは、同じくクラスの中心メンバーである悪原誠人。こいつは名前にふさわしくないほど腐った性格をしている。確か何人かいじめの被害にもあっていたはずだ。細い腕のくせにヤンキーを気取っている子なのである。


 反撃をして手でも出したら停学になる可能性があるから、一方的に殴られてやっている人がいるというのに、自分を強いと錯覚しているらしい。


 まったく、おめでたい奴ですよ。


「上田って、『案内人』ってギフトだったかな?」


「いんや、『攻略本』」


「本? いや、本ってなんだよ」


 もはやフォローに入ろうとした早乙女も俺のギフトを聞いて、なんとも言えない笑顔を浮かべることしかできないでいた。


 それも当然だろう。俺だって内心は同じ気持ちだからな。


 結局、異世界に行ってもスクールカースト上位の奴が良い『ギフト』を貰って一軍にいた。中には、クラスの隅にいた奴が一軍に上がったりもしているらしい。


 そいつは、きっと今頃ラノベの主人公気取りだろうな、羨ましいぜ、本当に。


 いや、突然連れてこられた異世界。そこで、衣食住を無料提供してもらえる時点で俺達は勝ち組なのかもしれないがな。


 そんなやる気のない俺は周りとの温度差を受けながら、ダンジョンの入り口までやってきたのだった。

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