第3話







 私は帰宅すると、使用人たちへの挨拶もそこそこにお父様の書斎へと飛び込んだ。



「お父様!!ベンジャミン様との婚約、解消させてくださいませ!」



「ルシル……もっと小さい声で話すようにいつも言って……婚約解消?!ルシル、どういうことだ!」


 あれほど私が懇願して結ばれた婚約を解消したいと言い始めたことに、お父様は困惑し声を上げた。私は、学園でのベンジャミン様の様子、そしてヴィクトリア様との関係のことをハキハキと伝え、愛し合う二人を応援したいと締め括った。




「話は分かったが、ルシル……少し待ちなさい。婚約解消するなら、事実関係を調べる必要があるし、ベンジャミン殿のお父上とも話をする必要がある。婚約解消のことは、まだ誰にも言ってはいけないよ。勿論ベンジャミン殿にもだ。」



「ベンジャミン様へは先程お伝えしました!」



「ル~シ~ル~!!!!大事な話は自分で決めずにまず家族に相談するように何度も言っているじゃないか!お前は猪のように真っ直ぐにしか進めないのだから、進む前に相談しろと!」



「う……お父様、ごめんなさい……。」



 怒り狂うお父様に私は謝るしか出来なかった。お父様は肩を落とし「はぁ……もういい。ベンジャミン殿のお父上と話してみるから、お前はもう余計なことはするなよ。」と釘を刺され、私は自室へと戻った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る