第16話 ふりかけとスプレー Ⅳ

 1年後くらい…


「これいいっすよ! 」


 事務所で伝票の整理をしている時に店長が部屋に入ってきました。


「これ本当にいいですから使ってください!」

 手にはなにか黒色のスプレー缶が握られています。


「なに…?」

 なんでしょう…店内にはスプレーがたくさんあります。

 防水、糊付けやスタイリングや消炎、そうそう殺虫剤だってありますからね…。


「この前のは“ふりかけ” でしたけれど、今回のはスプレー式なんですよ!」


 ふりかけ…? スプレー…? なんのこと…?


「やってみましょうよ!」


 なんでそんなにノリノリなの…?


 店長はそう言いながら床屋にいったばかりの僕の頭をニヤニヤしながら見ています。


 “ふりかけ”…

 ひょっとして…


「これいいっすよ…」


 相変わらず僕の頭頂部は…

 これ以上書きたくないので書きませんが…


「差し上げますからやってみましょうよ!」


 なんか楽しんでないか…店長。


「じゃあ使用前ということで…」

 スマホで僕の頭頂部の写真を撮ります。


 スプレー式です。

 アルコールのにおいがけっこうします。


「すっげーこれはすごい! なんだこれ! 」


「糊付けする必要ないんですよ…すごいな…全然わからない!」


 なにがわからないのさ…


「すげーな…堀さん、まずは写真をどうぞご覧ください」


 使用前は“ちょっと” “なんとなく” 薄い感じがします。


 使用後…

 ふさふさです。

 違和感なし…

 本当に…


「これで店に立ってください…すごいっすよ…これ売れるな…」


 けっこうというか本当に目立たなくなります。

 いいですよ…

 もう結婚しているし、もてる必要がないので実はまったく使っていません…


 シャンプーで落ちます。

 ですが黒い水滴が浴室内に散らばります。

 黒い点々がね…


「パパ、ちゃんと流しておいてね」

 娘と妻に言われました。


*****

 薬局にはいろいろなものをおいています。

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