主なき庭に響いた添水の音 あきを告げても水注ぎ足し

あるじなきにわひびいた添水そうず

あきをげても

みずそそ









家人のいなくなった庭に添水そうずが響いた。

秋の到来を告げているようだった。(添水そうずは秋の季語)

夏が終わったことを告げても、

水は再び注がれていた。



「あき」→「秋」「飽き」を掛けて

「水」→「水」「見ず」を掛けて



(見ている人間が)飽きた、と呟いたところで、(添水の方は)飽きることなく繰り返される動作(音)だった。

という、

寂寥感せきりょうかんただよう景色に、


たとえ家人に飽きられてしまっても、鳴り止まない添水そうずの音に、家人を慕う思いを重ねている。

という、

静かな想いを込めた歌である。

と、

同時に…


夏のように、あつく燃えるような恋は、飽きられてしまった。

想い人は去ってしまったけれども、わたしの想いは続いている。

想い人が見てくれない(「見ず」)のだとしても。わたしは、添水そうずのように繰り返し、あなたへの想いを注いで。あなたが見てくれないことを、わたしは見ないよう(「見ず」)にして。あなたに振り向いて欲しい(「そそぎたし」)と願いながら。

その想い(「添水そうず」)を響かせています。

という、

情熱的(しつこい?)な歌でもあったりします。




ちなみに。

添水そうず」とは、「ししおどし」のことです。

厳密に言うと、鹿ししおどしは総称なので。

此処ここでは、日本庭園でおなじみの添水そうずと明記しました。









読み手の方には、この景色、どのように受け止められましたか?


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