第15話 大商人の末路【サイド回】
【サイド:デルモン】
私は商業国家テスマンを束ねる、大商人デルモン・バンディット。
この国はまだまだ小さな小国だが、私がようやくためた金で立国したものだ。
もともとテスマンは商業都市として栄えた。
それも、すべて私の手腕によるものだ。
そう、この国は文字通り、私のものなのだ。
私が自分自身の力と金で手に入れた、理想の国家である。
だからもちろん、好き勝手やってもいいのだ……!
税金は死ぬほど高くしてやった。
収入の9割は税金として私に支払わねばならない。
もちろんそんなの当たり前だ。
なぜならここは私の国なのだからな。
こんな理想的な国家に住まわせてやってるだけでも感謝してもらいたいものだ。
理想の国家に住むのなら、それなりの対価は必要だろう?
そんな高い税金で、国民が納得しないだろうと思うかもしれない。
だが、国民の納得などそもそも必要ないのだ。
なぜなら私の国だから。
最初、税金を高くするといったら、国から出て行こうとした連中がいる。
なので私は法律を変えた。
まずこの国から外へ出ようとするやつらには、通行料をとることにした。
それも、法外な額だ。
だからまあ、よほどのことじゃないとこの国からは出られないようになっている。
一時的に出国するやつらには、支配の首輪をほどこすという法律にもした。
支配の首輪の効果で、逃げたりはできないように縛り付けた。
なので高い金を支払えば、旅行などにはいけるが、そのまま他国に逃げることなどは許さない。
もし他国に移住したい場合は、さらなる法外な金が必要になる。
まあ、そんなシステムを作り上げたから、私は儲かりまくったし、国から人材の流出もしなかった。
あとは他国の優秀な人材を、騙して金でひきつけて、我が国に来させたりもしたな。
とにかく、そんないろんな手を使って、我が国は発展していった。
テスマンは、観光国としても有名だ。
国内のやつらからも搾り取るが、もちろん観光客たちからはもっと搾り取る。
うちの観光の目玉はギャンブルだった。
テスマンには巨大なカジノがいくつもある。
だがどれも、巧妙にイカサマをしているのだ。
しかも、相手が破産しないように、ほどほどに勝たせてある。
まず最初にいくらか勝たせて、そこから一気に搾り取るのだ。
ちなみに、掛け金がでかすぎて破産した観光客は、そのままうちの奴隷に落ちてもらっている。
それから、娼館ビジネスも盛んだった。
金で買ってきた美人な女たちが何人もいるからな。
観光客からはさんざんむしりとってやったわ。
もちろん、国内の男どもを娼館にはまらせ、むしりとってもやった。
それから、うちの国は物価も高い。
とにかく国民たちからは税金を搾り取りまくった。
消費税は25%だ。
ある日のことだった。
国民の一人である、シュネスカという男が、私の家にやってきた。
シュネスカの家は、税金の支払いが滞っていた。
「デルモンさま……! もうしばらく、税金を納めるのを待っていただけませんか……! うちも家系が苦しくて……。お願いします……!」
「はぁ……? そんなの許せないホイ。さっさと金を持ってくるホイ」
シュネスカは私に頭を下げてくるが、そんなので許すはずがない。
税金を納めるのは国民の義務だ。
その義務が果たせないのなら、国民ではない。
「そんな……! お願いします……! うちの子の学費も払わなきゃいけないんです……!」
「そうか、お前は結婚していたな……。よし、なら貴様の嫁を娼館で働かせるホイ? そうすれば、もうしばらく税金を待ってやってもいいホイ」
「そ、そんな……! それは無理です……」
「ならお前が奴隷になるホイ」
「っく……そ、そこをなんとか……お願いします……」
「ええい、金が払えないのならお前は国民ではないホイ!」
私はシュネスカに奴隷紋を入れようと、奴の腕をつかむ。
「っく……や、やめてください……!」
そのときだった。
私の部屋に、伝令兵がやってきた。
「デルモン様……! 大変です……!」
「なんだホイ。今は忙しいホイ!」
「それが……魔王軍が攻めてきました……!」
「な、なにいいいいいい……!?」
なんということだ。
我が小国に手を出す不届きものがいるとは……。
だが、まだ焦ることはない。
我が国には優秀な兵士たちがいる。
それに、外部から大量の傭兵を雇ってあるからな。
いちいち国で練兵するなどバカのやることだ。
それよりも金が大量にあるのだから、他国から優秀な傭兵を雇ったほうが強い。
しかし、どんどんと傭兵部隊が突破されていく。
「っく……どうなっているホイ……!」
「わかりません……! 傭兵たちの様子がおかしいです……!」
そして兵士たちもやられていき、ついに、敵が我が城に侵入してきた。
「に、逃げるホイ……!」
私が逃げようとしたその瞬間、私の首に、大きな剣が付きつけられる。
振り返ると、そこにはデュラハンがいた。
ここまでか……。
「あんたが大将か。死ねぇ……!」
デュラハンはまず、私の足を切り落とした。
私が逃げないようにするためだろう。
「いたいホイ……! ぎやあああああああああ!!!!」
私は地面に倒れてしまう。
その際に、私のポケットから、大量の金貨がこぼれ落ちてしまう。
「お、お金……! お金ちゃん、待ってホイ……!」
私は地面を這いずって、落ちたお金を拾いにいく。
お金はなによりも大切だった。
私は常にお金を身に着けていた。
そしてお金は一銭たりとも無駄にはしない。
お金だいすき!
「なんだ……? そんなに金が好きなのか……?」
「お、お金は大好きだホイ……!」
「だったら、くれてやるよ……!」
すると、デュラハンは私の代わりにお金を拾い集めた。
くそ、私のお金をどうする気だ……!
「お、お金ちゃん、返すホイ……!」
「おらよ……!」
「ぐぽおおおばばなばっばあっばあ……!!!!」
デュラハンは、拾い集めたお金を、私の口めがけて突っ込んできた。
そして、部屋に置いてあった他のお金も集めてきて、どんどんと私の口の中に突っ込む。
ぐ、ぐるしい……。
息ができない……。
「ぐぼぼぼぼぼあおおあおおあおあおあおあお」
「これでトドメだ。死ね……!」
お金で口がいっぱいになった私の首を、デュラハンはそのまま一思いに刎ねた。
わ、私のお金ぇ……。
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