第11話 養子縁組
養子縁組
自身の姪っ子を養子として手続きする場合、姪っ子が成人である場合は書類を提出するだけだが、未成年の場合はそう簡単にはいかない。
家庭裁判所への申し立て→必要書類の準備→審判→許可が降りたら各市区町村への書類提出という流れだ。
猪木からの連絡が途絶えて2週間。
仮に裁判を起こすのであれば、向こうも準備をしているのだろう。
俺の方はというと、淑美を自分の子供として正式に迎えるため、養子縁組の手続きを進めた。無論、俺の決心を知った情報屋の鉄男からの勧めであったのだが。
そして、今日が最初の審判の日。
つまり、家庭裁判所からの呼び出しに応じて、俺は一人で重々しい建物に入っていった。裁判所なんていうだいそれた場所だが、前科がある俺にとっては懐かしさの心情が勝っていた。あの時の記憶は、判決の主文を聞いた時くらいしかないな。率直な感想はやっと終わったか……くらいだった。
だが、今回は軽い気持ちで自身の刑量を待つ身ではない。正直、願いや祈り、期待……様々な想いが複雑に絡んでいるのを感じていた。
◇◆◇◆
「養子縁組に必要な書類に不備はありません。お預かりし、審判を進めます」
「はい」
年配の裁判官らしき男女二人と対峙していた事務的な個室で行われた手続きは、あっさりしたものだった。
俺としてはもっと都合の悪い事を根掘り葉掘り聞かれるものだと思っていた。
「一度調査員が自宅へお伺いしたいのですが?」
「は、はい」
なるほど。
まだこれからが本番なんだな。
今日はただの受付に過ぎないのだな……。
なんだか腹が痛ぇな……。
そういえば朝、血便だったな。
姪っ子が俺の子になるか否か、つまり天国か地獄かの審判は俺の精神をかなり圧迫していたようだ。
◇◆◇◆
「叔次。なんだかお前、痩せたな?」
「そうか? 飯は普通に食べてるぞ」
2週間ぶりに会う鉄男に養子縁組の手続きが進行中とファミレスで報告をした。
「あんまり淑美ちゃんの事で思い悩むなよ? とりあえず、今どんな状況だ?」
「別に思い悩んでなんかないぞ。まあモヤモヤはするがな。とりあえず3日後、淑美が帰って来る前に調査員が家に来るらしい」
「なるほど。そこで色々聞かれるわけだな」
「ああ。それから淑美が帰ってくるのを待ってるとの事だ。淑美にも話を聞くらしい」
「なるほどな。仮にも裁判所の調査員だ。淑美ちゃんには変な話はしないと思うぞ」
「ああ、わかってる。様子を探る程度だろうな」
「お前には懐いているから問題ないだろう。猪木の方はどうした? 何か動きはあったか?」
「ないな。連絡すらない」
なんだかまた腹が痛くなった。
遂に猪木という名前を聞くだけで拒絶反応が出るようになったか。
「前にも言ったが、お前に懐いている淑美ちゃんを無理矢理引き剥がす様な事はしないと思うぞ」
「そう願いたいな」
現状、実子という権力を振りかざして来る事はない。だが、嵐の前の静けさという言葉もある――そんな事を考えていると再び腹痛が起こった。
また、明日の朝も血便か。俺も淑美が来てからは意外とデリケートに……いや、普通の人間の感覚になったという事か?
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