第6話 カードゲーム

 何回も何回も、カードの絵柄が分かるまで特訓は繰り返された。


(もう、1時間くらいはやってるかなぁ~)

(けっこう見えるようになってきたなぁ~)


 銀太郎は、自分の能力がどんどん開花していくのを感じていた。


 凜が目を細くしてニヤつきながら口を開いた。


「銀太郎、もう、1時間くらい経ったかなとか思っていない?」


 また、図星だった。


「右の方の時計を見て」

「1秒しかたってないよ!」


「えっ!」

「たった1秒! なんで?」


 右側の時計の針は、カードゲームを始めた時とまったく同じ時間を指していた。


「真ん中の時計は見える?」


「見えるよ、凜ちゃん」


 凜が時計の説明を始めた。


「右側の1秒しか経っていないアナログ時計が、相対時計と言ってこの地球上で一般的に時計と言っているものよ」

「真ん中のアナログ時計は1万倍速時計といって相対時計の1万倍の速度で動いているの」

「1時間くらい経っているでしょ」

「これが、今の銀太郎の体感時間かな」


「ん? 1万倍!」


「そう、この1万倍速時計の針が見えるってことは、1万倍以上の速度を目が認識しているってことよ」

「つまり、1万倍の速度で動けるのよ!」


 銀太郎は、驚きを隠せないまま凜に聞いた。


「じゃあ、一番左の針がぐるぐる回っている時計はなに?」


「あ~」

「あれは、10万倍時計よ。私たちにはゆっくりに見えるのよ!」


 銀太郎の口は空きっぱなしとなり、理解しきれない速度の話は目を虚ろにさせていた。


「銀太郎、疲れてない!?」

「今日はこれくらいにして、休もうか?」


 彩花が優しく言った。


「うん、ちょっと疲れたかな」

「一度、家に帰るよ」


 銀太郎は少し疲れた表情で言った。するとすかさず凛がニヤついて言った。


「今日から、銀太郎もここで一緒に生活するのよ!」

「あっ!」

「一緒にと言っても、変な期待はしないでね~」


 銀太郎は、次々と自分を取り巻く状況の変化に驚いたが、同時にそれらを少しずつ消化しながらワクワク感も感じていた。


「じゃあ、凛ちゃん銀太郎を頼むわね」


「うん、私が銀太郎を寝かしつけるわ!」


 凛は、笑顔で彩花にそう言うと銀太郎を連れて、部屋を出た。廊下には何人もの警備員がいた。


「あ、この警備員は人間に見えるけどロボットだよ」


 凛は、銀太郎を先導しながら説明した。

 この基地には、さっき部屋にいた6人以外の人間はいないこと。警備ロボットの他に凛たちの身の回りの世話をするロボットもいること。身の回りの世話をするロボットの皮膚は人間と同じでまったく人間と見分けがつかないこと・・・


 凛と銀太郎は、エレベーターで下の階で降り右奥にある部屋に入った。中に入ると睡眠用のカプセルがズラッと並んでいた。


「この続きの説明は、起きてからするね」

「今日は、大人しくこのカプセルに入ってね」


 聞きたいことが山盛りだったが、銀太郎は大人しくカプセルに入り横になった。


 ふと、隣のカプセルを見ると彩花が寝ていた!?


 「ん!? どういうことだ!」


 目を凝らして、彩花の隣のカプセルを見ると翔が寝ていた。


 しかし、カプセルに入って寝ているのはその二人だけではなかった。


 銀太郎の入ったカプセルの横には、彩花、翔、圭太、俊介、凛の5人がすでに入っていた・・・











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