第25話 フォージ家の嫡男
公彦達が軍に向かう2日前
シュミール国北にある軍事都市マーフ。魔道国リンデンに近く、緊張感のある雰囲気が漂っている。また、国境付近には、オーガの住まう森があり、彼らを刺激しない様にしなければならない。マーフにある兵舎の作戦室でフォージ家の嫡男フォージ=カイルが副官のリンデルド=ナードと話しをしている。
「父上から話して頂いているが、やっぱり難しそうだな。」
「左様ですな。奴隷達が生み出した車を軍で使用する案、上層部だけでなく、シュミール国全体で、拒否感があるのでしょうな。」
あの移動手段があれば、速い上に、飼い葉の持ち運びがなくなる。さらに、車には休憩がいらない為、早く現地に着く事ができる。ただ、大きな問題として燃料確保が困難であり、それを魔石等で代用出来る様に改良し、荷運び等に使用するという案をフォージ家として提案したが、一蹴された。「奴隷が産み出した物等、ろくなもんじゃない」と。父上が提案しても、却下されるなら、他にもこれはと思う物もあったが、無理だろう。何故そこまでの悪感情が持てるのか、自分達の中にあるシュミール人の血自体、薄くなっているだが。
いや、認めたくないのだろう。まぁ、フォージ家は元々、常に新しい事を取り込む改革派と知られており、その考えは今でも根強くある。
日本人が転移した際、少数ながら日本人以外も転移してきていた。外人というらしいが、日本人ほどシュミール人との出産率は高くなく、中には手足の長さがエルフやリザードマンに似ている為、嫌悪され排除の対象となる人間もいた。そこに目をつけた祖父は下級貴族が行っていた「繁殖」に手を出した。
繁殖とは、見目の良い日本人の男女に子供を作らせ、一人目の男女のみ繁殖に回し、その後の子供は、上級貴族の住込み奴隷として渡すという事を下級貴族が行っていた。祖父のやっていた繁殖は、身体能力の高そうな外人と日本人を掛け合わせ、身体能力の高い、繫殖能力のある人間を目指していた。自分達世代の父母が、その繁殖された人間にあたる為、武家の貴族の若い世代には、異国の雰囲気を持った貴族もいる。自分も副官のナードもそうであり、肌は日焼けをした様な黒みがあり、彫りの深めな顔をしている。そして他の者より身体能力は高い。
「・・ル様!カイル様!」
おっと考え事が過ぎた様だ。
「おぉ、すまん。考え事をしていた。」
「それで、探索の件ですが」
探索だが、ここから馬車で2~3日ほど移動した所に、この前、転移してきた日本人の村がある。弟のガイウスが攻め、奴隷を捕まえてきたが、逃げた生き残りがいる、もしくは、活動家軍がいる可能性があり、もう一度、確認しに行く。
「森の中を探索する隊と村に直接行く隊に分かれます。村に直接行く隊は2~3日後に到着、その後、村を探索します。森を経由する隊は、4~6日後ほどで村に到着。戻りの際、奴隷が見つかる様なら、奴隷を乗せた馬車を首都のココに送ります。ここまでの日程で何か気になる点はありますか?」
「森の中の隊に関して、オーガの住む森を刺激しない様、注意して探索する事。また、リンデンから密偵が来ているかも知れない。その時は、必要なら殺せ。ただし、死体は分からない様にしておけよ。」
「はい、心得ております、森の探索に関して、私が率いて対応させて頂きます。」
「宜しい!頼むぞ。村への隊は、騎士団長を。・・・それとな、念の為、車も何台か持ってきてくれ。燃料含めてな。」
「かしこまりました。騎士団長には私から伝えておきます。それでは、明日出発します。」
「ああ」
ナードは頭を下げ、部屋へ出ていく。
カイルは一人、どうすれば上層部に意見を通せるか考えていた。
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