第42話「悪友って認識でいいのかな?」

 寝て起きたら通知を見てみたら、またなぜかバズったようだった。


「なるほど、わかんない」


 見てみたけど、外国語での反応が多かったので俺には読めない。

 一応、クーには伝えておこう。


「青月鉱(ブルームーンアルク)を売ったら、思ってたよりも話題になっているみたいだよ」


「あの程度で? やはりニンゲンは脆弱な下等生物」


 クーは顔をしかめながら、邪悪なラスボスみたいなことを言う。

 まあクーからすればどんなやつだって軟弱かもしれないけど。


「しっかし需要があるなら、少しずつ売ってもいいよね?」


「うん。ニンゲンどもの手にあまらない範囲なら、やまとが好きにすればいい。やまとのものだから」


 俺の確認に彼女は即答する。

 俺だけのものって言うと、語弊があると思うんだけど。


 もっとも、家族はみんなダンジョン関係に興味がない。

 だから俺が何を言っても「ふーん」で終わる可能性がかなりある気がしてる。


「10グラムでも大変だったらしいから、1グラムずつにしようかなぁ」


 天王寺って人がどれくらいすごいのかわかんない。

 だから一応、あの人よりも加工が上手くない人がいることも想定しておこう。


 あれだけ反響になるなんて思わなかったから、もうちょっと慎重になったほうがいいんだろうね。


「ほかの素材を売るのはちょっと待ってみようかな?」


 と俺は思った。


 青月鉱(ブルームーンアルク)だけであの騒ぎとなると、もっといい素材を出すのはひかえたほうがよさそうだ。


「それがいい。ニンゲンどもは愚かで脆弱」


 クーは賛成する。


「売るならもう少しランクの低い素材にしたほうがよいでしょうね」


 とエリも反対はしなかった。


「青月鉱(ブルームーンアルク)よりも下の素材? 何かあったっけ?」

 

 俺は首をかしげる。

 あれより下ってうちにあるんだろうか?


「わたしに心当たりはない」


 とクーは言って、ちらりとエリを見る。


「おまえが探せよ」


 命令口調が気になったので、俺は割って入った。


「いや、俺だってやるよ。俺がやりたいことだから」


 誰かに丸投げするつもりはなかったんだ。


「ではいっしょにやりましょうか」


 エリは『いっしょ』という点に強調して微笑む。


「は?」


 案の定、クーはカチンと来たらしい。

 エリって懲りないというか、タフというか。


 クーを挑発するような言動を何度もする、唯一の存在だ。

 悪友って認識でいいのかな?


 俺が学校に行ってていないときはべつにギスギスしてないので、プロレス的なやつの可能性がありそうなんだよね。


「わたしも行く。そのほうがはかどるよ?」


 とクーは俺をじーっと見る。


「たしかに」


 クーは俺の近くにいるほうがいいんだろうしね。


「やった」


「あら」


 クーは手を叩いて無邪気に喜ぶ。

 エリはというと、予想していたとばかりに微笑んだだけだ。


 まあクーが邪魔になる状況って考えにくいもんね。

 

「学校から帰ったらやってみようか」


 さすがに行く前にやる余裕はない。


「了解」


「準備しておきますね」


 エリの準備って何だろう?

 疑問に思ったけど、家を出なきゃいけない時間になっている。


「いってらっしゃい」


 ふたりに見送られて、俺は玄関のドアを開けた。

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