犬の骨 41

車で家に帰る際に近道に使っている道がある。

古い民間とアパートに挟まれた狭い道だが、利用者は少なく対向車に遭遇したこともほとんど無いので、頻繁に利用していた。


ある日、夜その道を通っている最中、左手のアパートの駐車場に人影が見えた。

背の高く細い男のようで、170センチ以上はあるであろうフェンスの上から肩から上辺りが見えており、身長は180センチか、2メートルはあるのではと思った。

道に向かってゆっくり進んでいたので、出てくるかもと思い徐行して男を気にしながら車を進めた。


ある程度近づいた所で違和感を覚えた。

男は網目状のフェンスの向こうにいて、確かにフェンスの上から男の肩より上は見えているのだが、網目の部分に男の姿は見えなかった。


男に近づき、黒いシャツを着ている事や角刈りかスポーツ刈りのような髪型であること、口を半開きでじっとこちらを見ている事も認識できた。

フェンスの向こうに男の身体は見えなかった。


それから男の方を見る勇気は無かった。

急いでその道を出たかったが、危険というより、男を刺激する事が怖かったので、徐行しながら男の横を通り過ぎ、いつも通りのスピードでその道を通り過ぎた。

バックミラーは覗かないようにした。

それ以来、あの道は通っていない。

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