恐らく世界最高難易度の下校
体が……動かねぇッ!
筋肉が
あ゛ぁー足が震える。
まともに歩けないぞこれ。
花園さんが俺に一緒に帰りたいと言われてから、ずっと誰かに殺意を向けられている状態なんだよなぁー……。
……怖。
「はい、じゃー今日はここまでー」
最後の授業が終わった。
つまり……下校時間になった。
ノートとかを……
殺気のせいで体が……。
いやこの後に起こることをめっちゃ緊張しているせいもあるが。
何とか右手を動かしてノートを仕舞う。
鞄を背負って、めっちゃカクカクと歩く。
筋肉さぁーん、柔らかくなってくれませんかねぇ〜?
下駄箱に着く頃にはもうなんというか……見てくる人が100人くらいいた。
嘘じゃない。
下駄箱付近に100人くらい人がいる。
もちろん俺を見に。
そんな見に来る!?
いやまあそりゃそうか、学園のマドンナが直々に一緒に帰ろうと言った相手を見に決まってるわな。
皆見たか? 相手こんな陰キャでっせ。
あーもうなんか視線だけでなんて言いたいか分かるわ。
『なんでお前みたいな奴が!』
そうだろ?
俺だって嫌だわ!
まあ運命の人と帰れるのは嬉しいけど……こんな視線浴びながら帰るのはねぇ!?
靴を履き替え校門に向かって歩く。
そして後ろからゾロゾロと人が来る。
なんか人増えてね!? 200人くらいになってね!?
そして校門の門に寄りかかる花園さんが手を振ってきた。
すると、後ろからずっと聞こえていた足音が止む。
あれ? お前らどうし――
「まずい! 花園様が手をお振りになったぞ! 急いで目を逸らせ!」
「手遅れです! 気絶者数100人突破!」
「衛生兵ぇー! 衛生兵ぇー!」
あっ、これが最近実装された新しい地獄ですか。
てか花園さんが手を振っただけだぞ!? そこまでなるか!?
は……破壊力半端ねぇー。
ササッと花園さんの元へ行く。
「じゃあ帰りましょうか」
「はっ、はい」
俺の後ろにいる
……もしかしたら彼女もジロジロ見られまくるのに飽き飽きしているのかもしれない。
そして歩き出したが……後ろから足音が。
振り返ると……
『ザッザッザッザッ』
おいおいこの世界ドラ◯エじゃないよな?
勇者の後をつける仲間かってくらいついて来てるぞ?
しかも学校出る時よりも増えてるし。
「は、花園さん……」
流石に彼女も気付いているよな?
「何でしょうか?」
あ、これもしかして気付いてない?
えっ、嘘だろ?
「えっと……後ろの人達どうにかしません?」
「後ろの人……?」
そこで彼女は振り返る。
「ただ下校しているだけじゃないの?」
仮にそうだったとしたら約250人全員同じ道を同じ時間に下校している事になるぞ!?
「多分これついて来てるんじゃ……」
「そうだとしたらこんな堂々としてるかしら?」
花園さん、よく考えてみてくれ。
少し太い道とはいえ250人全員が隠れられる様な場所があると思うかい?
一応振り返ると隠れるようなそぶりを見せるが、何故かついて来ている人の後ろに隠れたりしている。
お前ら尾行下手すぎんか?
「でも一緒に帰るにしては多すぎませんかね?」
「うぅーん……」
【探知】で逃げるべき場所はすぐ分かる。
あとは花園さんに逃げようという意志を持たせるだけ。
……【探知】さぁーん! よろしくお願いします!
花園さんを説得させられる言葉を【探知】さんに教えて貰う。
頭の中に文字列が浮かび上がる。
「え、えーと……でも仮につけられてたら怖くないですか?」
あれぇ? 俺これさっきも言ったと思うんだけどなぁ……。
だが、花園さんの表情が変わったのを俺は見逃さなかった。
まあ、すぐに戻っちゃったけど。
「そうね、ちょっとだけ急ぎましょ」
そう言って花園さんはスタスタと早歩きで駅に向かった。
♪
「けっ、結構歩くの速いんですね」
いやそりゃそうか、運動神経抜群の花園さんと運動神経平均以下の俺とじゃあ早歩きの速度違うに決まってるわ。
「……さっさと乗っちゃいましょう」
花園さんはまた早歩きで改札を通った。
「は、速い……」
息を切らしつつ俺も改札を通る。
そしてホームで電車を待っていると……。
「あのさ」
「は、はい!」
「一緒に帰ってくれてありがとう」
……あれぇ? 誘ったのはそっちじゃ……
「本当に帰ってくれるとは思ってなかったわ」
花園さんのお願い断ったら翌日俺の机の上には間違いなくお花が飾られてますからね。
「ははは……花園さんと帰りたい男子なんて沢山いると思いますよ? 女子の方にも沢山いるでしょうし」
そう言うと彼女はこちらを向いて
「そういう人達って私をいやらしー目で見てくるじゃない?」
「男子はともかく女子ではあまりいないと思いますけど……?」
「女子だったら色んな所に連れていかれそうじゃない」
「それは……まあ、確かに」
「でも君は私をいやらしー目で見たり変な所に連れて行こうともしなかったでしょ?」
「そう……ですね」
「それに私が電車に乗って来ても変な目で見なかったじゃない? それどころか、席まで譲ってくれて」
多分それ譲ろうとしたけど花園さんと喋るなんておこがましいって思って譲れなかっただけだと思いますよ?
「だから一緒に帰ってみようかなって思ったのよ」
なぁーるほどね、よーするに自分に興味がない男子がいたから一緒に帰ってみることにしたと……
こう言うとなんか凄い性悪女みたいに聞こえるな……。
『まもなくー、一番線に――』
「あら、電車が来るみたいね」
そしてすぐに電車が来た。
「さあ、乗りましょ」
そう言って花園さんは電車に乗った。
「……ま、俺も乗りますか」
最近の電車内での視線が少しトラウマになってきているが、花園さんがいるから大丈夫だろう。
顔少し見ればそんなもん全部ぶっ飛ぶし。
その後、フツーに視線が痛かったが、花園さんと普通にお喋りをした。
まあ、【探知】パイセンを使いまくったが。
そのおかげか、連絡先を交換するにまで至った。
いやぁー、学校の奴らが聞いたら……間違いなく俺は死ぬな!
羨ましがられるとかいう次元を超えてる!
『まもなくー、××駅ー、××駅ー』
「あっ、私が降りる所だ、もう着いちゃったんだね」
「早いですねー」
「今日は本当にありがと、後で連絡する!」
「分かりました」
……よっしゃ! まさか花園さんの連絡先をゲット出来るなんて……夢にも思わなかった……。
【探知】様! ありがとうございます!
その後はもうルンルン気分で家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます