奇跡的な遅刻
『キラァーン!』
日光が目に攻撃を仕掛けてきやがった。
そのせいで俺は起きる。
「んん〜」
目を
『AM 06:55』
おぉ〜……日光のせいでいつもより結構早めに起きたなぁー。
基本的に俺は07:30起きだ。
眠いというのが理由だけど。
愛花はまだ寝ているだろうし、昨日買った映画をこっそり見てしまおう。
部屋にあったDVDを手に取ってリビングにあるテレビの下にあるDVDレコーダーに入れる。
よぉーし。あとは電源を点けるだけー♪
あっ、愛花を起こしたら悪いから音量下げとこ。
そして映画が始まった。
◇
『逃げろ!』
『でっ、でも!』
『後から駆けつける!』
『ッ……分かった、絶対来いよ!」
『おう!』
……予想外だった。
バカおもろい。
今のテンプレ死亡フラグを見ただけでは分からないだろうが、
どハマりして終盤まで見てしまった。
「このくらいにしておくか……」
遅刻をしたくはないのでここら辺で切り上げる。
「そういやこれ何時間くらいあるんだ……?」
ふと気になってDVDケースの裏面を見る。
『総時間 約2時間35分』
「二時間さんじゅ…………え!?」
待て待て待て待て、俺あともう少しで終わりってくらいまで見ちゃったぞ!?
今何時だ!?
走って自室にある時計を見る。
『AM 08:15』
ほああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「愛花ぁー!」
そう叫んで部屋にダッシュする。
「ん〜? どうしたんですかお兄ちゃん……」
「遅刻だぞ!」
「遅刻? そんな訳な……ヤバッ!」
「急いで支度するぞ!」
「はい!」
部屋に戻って制服に着替える。
遅刻は確定してるが、出来る限り急ぐ。
まあ、その方が先生達からヘイト買わないから……。
朝ごはん? そんなもの食べてる暇はない!
…………………………いや! やはり食べてはダメだ!
こんな状況でも食べたくなるぐらいの美味さがある愛花の朝ごはんが食べれないのは非常に惜しいが、今は急がねば!
走って駅に着く。
『まもなくー、◯◇駅行きの電車が――」
ナイスタイミング!
急いでそれに乗る。
だが約20分後……電車内に神風が吹いた。
「え?」
何故だ? 何故こんな時間に?
「あら?」
花園さんがいるんだ!?
☆
『ピピピピ ピピ――』
すぐに朝っぱらからうるさい悪魔を止める。
……はぁ、朝が来てしまった。
嫌だなぁーと思いつつ学校に行く支度をしてリビングへ行く。
「おはようお母さん」
「おはよう舞」
私のお母さんは元気で優しい人だ。
ちょっとだけふくよかな体型だけど、まあ性格が見た目に出た結果だろう。
「朝ごはん出来てるから食べちゃって」
「はぁーい」
そのまま朝ご飯を食べて学校へと向かう。
「はぁ〜」
と溜息を吐く。
『ジロジロ』
『ザワザワ』
『グサグサ』
これが学校に行く時の普通。
沢山の人に見られ、沢山の人に指さされ、沢山の人の小時間の話のネタになる。
……流石に何年もやられると精神的に参ってくるわね……。
私がこの容姿になったのは中学二年生辺りからだ。
急に発育が良くなり、顔に付いていた余計な肉やニキビなどが取れ、とてもスタイル抜群で容姿も良い女性となった。
ほんとなんでこんな事になったのかは分からない。
でも、そうなってからずっとこれ。
そろそろどうにかなってしまいそう。
近くの公園のベンチに座って休む。
疲れた時なんかにはよくこの公園のベンチにお世話になる。
あ〜……なんか頭がボーッとして――――
そのまま私は寝てしまった。
「はっ!?」
あれ!? 私どのくらい寝ちゃってた!?
急いでスマホを取り出して時間を確認する。
『AM 08:40』
「…………」
驚きすぎて声が出ない。
大変! 急いで行かないと!
走って駅に向かう。
沢山の人に見られているが気にせずやってきた電車に乗る。
な、なんとか間に合っ――
「あら?」
目の前には、昨日たまたま隣になった少年がいた。
制服を見るに同じ学校よね?
驚いたわ、まさかこんなに遅れた私と同じ電車になるなんて。
というか、私の記憶に残る人ってあんまりいないのよね。
残るのは大体私を変な目で見てない人。
つまり彼は私を変な目で見ていないという事……よね?
試しに隣に立つ。
そしてこっそり見てみる。
……凄い緊張してそうな顔。
顔赤いし。
「……大丈夫?」
そう声をかける。
「………………」
あれ、どうしたんだろう。
「だ……大丈夫……です」
あっ、返事してくれた。
多分……後輩君だよね? 同じ学年で見た事ないし。
何故だか、何故だか電車に乗るのが楽しみになった気がした。
☆
あばっ、あばばばばばばばばばばばばば。
花園さんがまたまた隣に来たんだが!?
おっ、落ち着け俺。
「……大丈夫?」
あっ
「大丈夫?」
ってされたよな!?
よし、大丈夫だと答えよう。
「だ……大丈夫……です」
よっ、よーし! 何とか答えられたー!
……あっ、あれ? なんか花園さんの表情が少し柔らかくなった気がする。
いや、多分気のせいだな。うん。
てかめっちゃ見てた訳でもないのにそんな分かりきったような口きいてすみません。
そして今日は目の前の席が空くと言うこともなく、普通に駅に着いた。
「ねえ」
「はひゃい!」
あーーー……やっちまった。
「えと……名前、教えてくれないかな?」
えっ、名前? 花園さんに俺の名前を?
「なっ、なな名前は……」
落ち着け俺、ただ名前を言うだけだ。
それ以上でもそれ以下でもない。
「岩井……岩井 了太です」
よっしゃ! 噛まずに言えた!
「岩井……岩井君ね。ありがとう」
「はっはい!」
そう言って花園さんは学校へと走って行ってしまった。
……名前……花園さんに……。
……遅刻して良かった。
マジ良かった。
「やあ」
そう後ろから声をかけられる。
「うひゃお!?」
振り返ると幸天さんがいた。
ビビったー! マジビビったー!
「
「お前も凄ぇ遅刻してんじゃん」
幸天さん……マジであんた何者なんだ……?
幸せを届けに来た天使だって言うけど……流石に……ねぇ?
「朝起きたら遅刻する時間だったからのんびり来ただけ」
そう言って幸天さんは俺より数歩前に出て
「早く行かないとヤバいよ」
と言って駆け足で学校へと向かった。
「……たっ、確かにヤベェ! 奥村先生(めちゃ怖教師)に怒られるのだけはマジでまずい!」
そう言って俺も走って向かった。
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