第2話 森の休憩所
街道にあるスポットの休憩所の近くの沢に降りてみる。
そこには、ところどころでブルースライムが水浴びをしていた。
基本的にスライムは水が好きだ。
こういう森の中などではそこかしこで見られる。
●ブルースライム。
水色の半透明のモンスター。この大陸全体にいるらしい。
お饅頭型をしており、目や口はかわいらしい。
温和であり、攻撃力も大したことはない。
ただし酸を出すことがあり武器などの鉄製品を腐食させる。
水分の多い場所を好み、雨の後に頻繁に出没する。
よくスライムトイレといってトイレの下に放り込まれており汚物処理に活躍している。
都市によっては水洗トイレで下水道が完備されていて、その下水道にスライムを飼っていることがある。
剣でも倒せるものの、ぶよぶよした体を斬りつけてもダメージは少ない。
魔法には弱いとされる。
魔物に漏れず魔石があり、これを取り除くと死んでしまう。
触手を伸ばして捕食することが知られている。
大半は何を考えているか分からない程度の知能だが、稀に知能が高い個体もいる。
特に長年テイムされて育てられた俗にいう「レベルが高い」個体は知能が特に高い。
酸弾を飛ばすことがある。
まあこんな感じかな。
「どうしたんですか? ラミルさん」
「なんでもないよ。モーレアちゃん」
「ふふふ、スライム好きなんですね?」
「えへへ。そりゃモンスターだもんね。私が最初に興味を持ったのもスライム」
「へぇ」
「いろいろな種類のスライムがいるんだけど、ブルースライムは基本中の基本なんだ」
「なるほどですぅ」
モーレアちゃんもブルースライムを観察しているようだ。
それをさらに観察する私、なんちゃって。
人間ねぇ。人間。
●ヒューマン
知能がある人型の生き物。世界最大の人口を誇る。
二本の腕、二本の足。二足歩行。
知能が割合高い。道具を操るのが得意。
ただし争いごとが好きなのか、人間同士でも戦争をする。
実はヒューマンをはじめ人間にも魔石はある。
しかし人間の魔石を取ることは禁忌とされ、タブー視されている。
人間も魔物ではないかというのが科学アカデミーの意見だが、教会ではこれを断固無視しており、人間は神に作られた特別な存在だとする。
ちなみに『人間』なんだけどヒューマン種を含むエルフ種、ドワーフ種、獣人種などを含んだ包括的ないいかたとされる。
ただし教会などではヒューマン、エルフ、ドワーフ以外の種族を『亜人』と呼んで区別することがある。
まあこれも獣人差別問題、または亜人差別問題というよくある話だ。
神話ではどうだか分からないが、会話が可能な友好的な種族は平等と見做すというのが最近のトレンドのようだった。
これを平等主義とかいうけど、私は政治には興味がないので、まあそれは置いておく。
教会と獣人亜人種との長い間のお互いの不信感はそうそうなくならない。
「スライム、標本持っていこか」
「え、スライム狩りですか?」
「うん」
「見学してますね」
「それじゃあ、失礼して」
バシャバシャと沢に降りて、剣でスライムをブスリと刺して致命傷を与える。
魔石を取り除くと、ご臨終だ。
そっとサブのノーマル級のマジックバッグに回収する。
「よし、完了」
「そうやって、集めているんですか?」
「うん。実はみんなブルースライムかと思ってたら、違ったりするかもしれないし」
「そうなんですか?」
「アクアスライムとか」
「アクアスライム、へぇ」
「私が暫定的に付けた名前だけど、特に水が好きなのはアクアスライム。ブルースライムは普通は草原型で水辺にいるのとは違うみたいで」
「そうなんですか」
さて麦粥にしよう。
脱穀して皮を剥いた麦粒を水からお湯で茹でたものだ。
その辺の若葉と干し肉を少し入れて、それから塩で味を調えたら完成だ。
本当はここに「出汁粉」という旨味のある粉を入れると抜群にうまい。
毎食のように出汁粉を使っていたら切らしてしまった。
この出汁粉は魚の粉末で作られていて、東の果ての村の特産品だ。
今はその出汁粉目当てで、東の端を目指している途中というわけ。
「あちち、麦粥ですけど、美味しいですね」
「うん。美味しい。やっぱり麦粥だよ。庶民の味だね」
「所有物からしたら大金持ちなのに、貧乏飯なんです?」
「別に売ればお金になるだけで、お金があるわけじゃないし」
「そんなものですか?」
「そんなものだよ、世の中」
「ふーん」
若葉を入れたので見た目に緑が散っていて美しい。
この季節はタンポポ草などが道端によく生えているので入れる。
ほんの少しの苦みがアクセントだ。
それから低級薬草のヒール草も入れてある。
こちらは味はあまりしないんだけど、風味がいい。
健康には毎日三食のヒール草がいいと考えられている。
このヒール草、どこにでもたくましく生えているのでとても重宝する。
このヒール草を凝縮して錬金したものが低級ポーションとなる。
錬金術は私の専門ではないけど、低級ポーションくらいは自作できないと旅商人などやっていられない。
ので作り方は嫌というほど熟知している。
たまに辺境の村とかでは大変重宝されるから。
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