第12話 重要な事柄?
妖精の村を飛び出したエルは、すぐにヴィーへと連絡を行った。
ギルド支部長へ妖精狩りを捕縛した事を伝え、妖精狩りを引き取りに衛士が来ると言う事。
女王が知る他の妖精の村は襲われてもおらず、はぐれの妖精もまた居ないと言う事。
そして、オーゼス王国の国王が、明日の夕刻には衛士を派遣するので、街道にて待つように言われた事などを連絡した。
エルからの連絡を受けたヴィーは、捕縛した男達を文字通り身ぐるみ剥いで真っ裸にした。
そして、屯していた場所付近の木に、まるでこも巻きの様に括り付けておいた。
裸に引ん剝く際、一部意識を取り戻して暴れた者も居たが、そんな者は物理的に大人しくさせた。
男達の持ち物などを調べてみたが、これといって誰かに繋がる証拠となるような物は出てこなかった。
しかし、武器に使われていた金属が、ここオーゼンではあまり採掘出来ない物で揃っていた。
これは他国の干渉の可能性もあるので、引き取りに来た衛士に渡すため、一括りにして男達とは離して保管しした。
男達への対処が一通り終わったので、ヴィーはタープの中も検める。
そこには、先に確認していた妖精を閉じ込めるための鳥かごの他、何らかの魔道具らしき物も発見した。
魔道具の用途は不明であったが、いかにも高価そうな道具である。
男達の身なりからすると、そう裕福には見えず、寧ろ見るからに生活に貧窮している様にしか見えない。
身ぐるみ剥いだ男達の服などは、どう見ても先程男達から取り上げた武器類にそぐわない程にボロボロだ。
高価そうな武器類や魔道具などを手に入れるだけの財があるのであれば、普通は真っ先にボロボロの服を変える。
それをしていない所を見ると、子の武器や魔道具は何者かによって貸し与えられたのかもしれない。
そして、首尾よく妖精を捕まえる事が出来、依頼主に引き渡し、初めて報酬を貰えるのだろう。
もっとも、重罪と分かっている妖精狩りを依頼し、この様な高価な武器を貸与できる程の者達が、まともに報酬を払うとも思えないが。
先程のエルからの連絡からかなりの時間を費やし、ヴィーは男達の装備や持ち物を確認した。
別に何か予感がしたから…とかでは無いのだが、ふと見上げると眩しく輝く太陽も、すでに中天を過ぎていた。
中腰で確認作業をしていたため、うんと腰を伸ばしていたヴィーの視界の端で何かが動くのが見えたので、目を凝らしてそちらを見てみると、それは虹色の軌跡を曳きながら一直線にこちらへと飛んでくるエルであった。
『マスター、来ました!』
あっという間にヴィーの方までやって来たエルが、とても上機嫌にそう言った。
基本的に、エルがヴィーを呼ぶときは、『マスター』か『ヴィー』のどちらかだ。
エルの中では、お仕事モードの時は『マスター』、それ以外の時は『ヴィー』と呼ぶと決めているらしい。
らしい…と言うのも、特に呼び方をヴィーと話し合ったり取り決めをしたりとかをしていないからである。
どうでもよい事だとヴィーは思うのだが、エルの中では譲れない線があるらしいので、特にそれをとやかく言う事は無い。
実際、お仕事モードの時と普段のエルとでは、口調も変わっているので、呼び方がどうであれそう違和感は無いのだが…。
先程エルから聞いた内容を、再度確認した後、ヴィーとエルは、今日の所は一旦家に帰る事にした。
その頃になり、また意識が戻った男達は、ぎゃーぎゃーと喚いたが、当然ながら2人は視線の一つも送る事なく無視をする。
「エル、帰るぞ 」
『了解!』
ヴィーの言葉に、エルはとても嬉しそうに良い返事をし、定位置であるヴィーの肩にくっ付いた。
来た時と同じ様に、ヴィーは強く地面を蹴って高く跳躍し、樹々を足場に高速で移動を開始する。
エル1人であれば、空を飛んで行く方が何倍も早いのだが、今はヴィーの肩にくっ付く事を優先していた。
樹々の上を跳躍中のヴィーの耳元で、
『そう言えば、女王様がぁ~、早く帰って来いって煩さかった』
と、エルが告げたのを聞いたヴィーは、妖精女王が駄々をこねる光景がありありと目に浮かんで、軽い頭痛を感じた。
やがて森と村の境界に着地したヴィーは、そう言えば…と、肩に乗っていたエルルへと話しかける。
「エル、ギルドへの報告はどうだった? あぁ…狼の方」
『ちゃんと森狼の事もボスの事も言ったよ~。支部長さん、引き続き森の警備お願いします…だって』
「そっか、了解」
昨日ヴィー達が討伐した森狼に関して、エルがきちんとギルドに報告し、追加で森の警戒依頼も受けたらしい。
『あとね、マールちゃん、またおっぱい大きくなってた 』
「…」
時折エルは、ヴィーが予想だにしない余計な一言を話に付け加えたりするが、意外とそれが重要な事だったりもする。
エルの本日の一言が、ヴィーにとって重要な事柄であるのかどうかは、その後ヴィーが無の表情で黙り込んでしまったため、誰にも真相は分からなかった。
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