第20話
「仕事の詳細は?」私は当然の疑問を口にした。
「ソフトを作って頂きたい。もし、仕事を受けて頂けるならば、詳細は、その段階でお伝えしましょう」
つまり、何も分からない状態で決めろ、ということである。なんともふざけた話だ。
こちらの不信感が相手に伝わったのか、クゼは「ご不安はもっともです。雲をつかむような話だと思いますが、そういった特殊な点も含めて、ご了解いただくこと、それも仕事の一貫とお考え下さい。無論、こちらの都合を押し付ける訳ですから、お支払いする金額は、ご期待に添うものであると自負しております」
「具体的には、報酬は幾らなんです?」私は、たいして期待せず訊いた。相手の無茶苦茶な物言いに、若干この話への興味を失っていた。
「1千万円」
札束で直接、脳内を殴打された気がした。「ご希望あれば、前金で、幾らかお支払いすることも可能です。」
「...一千万?」
「ええ、そうです」
若干の沈黙が続いた後、「ご不満ですか?」
「不満だなんて」私は即座に否定する。「ただ、あまりに現実離れしていて」
「そうでしょうか。貴方が米国で開発していたシミュレーションソフトの単価は幾らでした?たしか、数百万単位の代物でしょう。この案件の特殊性を考慮すれば、一千万円、というのは、妥当な金額だと思います」
確かにソフトの販売単価は安いもので、2~3百万円。高いものになると、保守料金含めて、そこからさらに金額は跳ね上がる。
「失礼ですが、何かしらの法令に抵触する可能性のあるご依頼でしょうか?」
その時に、私が想定していたのは、通信傍受や盗撮といった違法行為に関するプログラムである。こういった違法性を帯びる仕事であれば、仮に報酬が高額であっても、確かに仕事を受けたがる人間はいないだろう。
「いえ、その点に関してのご心配は無用です。現在はおろか、未来にわたっても、反社会的な要素を持ちえない仕事です。また、私の意図しないところで、悪用される可能性もありません」
「どうして、そう言い切れるんです?」クゼの断定的な口調が気になった。
「端的に言うと、それは無用の長物です。つまり、悪用どころか、役に立つということがそもそもない」
「
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