第2話 おでんーたべてますよーねー

「ごめんくださーいー」


こちらの反応を期待しているのか、

再度その変な口調で呼びかけられる。


「はいはい、今行きます」


時刻は午前1時。

人の家を訪問するのには物騒な時間帯だ。

妙な胸騒ぎから玄関の扉を開けるのに躊躇し、まずは穴から外の様子を確認する。


そこには人の姿は確認できなかった。

玄関前の廊下の壁が見えるだけだった。


あれ?でも声はしていたよな。


「ごめんくださーいー」


思わず体を振るわす。

なんだか背筋に寒気が走った気がした。


あれ?怪談か?

人が優雅におでんを食おうとしていたのに

いつのまにか怪談が始まってしまったのか?


自分でもアホらしいと思いながら

不気味な現状をどう解釈するべきか

わからないでいた。


「あのー山田さんー?いないんーですかー?

おいしそうなにおーいー、おでんーたべてますよーねー」


なかなか反応がなく苛立ってきたのか

扉の向こうの見えない来客者からふたたび

声かけを受ける。

その声が高く、女のものらしく聞こえた

こともあって俺はとりあえず扉を開けることにした。




つづく





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