第36話:大地を司る龍の神【前編】
決戦当日、即ち新月の夜。
いつ来るか分からない龍神を待っていれば、圧倒的な神威が屋敷を襲った。
身を竦ませるほどの圧とも言えるその神威……それを感じて空を見上げればそこには巨大な龍の姿が。
「約束通りに来たぞ禍津神!」
原作通り金色の体躯を持つ巨大な龍神、どうやったら勝てるのか分からない程の霊力を放っておりあまりの存在の差に息を呑む。
それどころか龍神が現れた瞬間に屋敷だったこの場所の見た目が変わり宮殿が建っているだだっ広い空間に俺と龍華は誘われた。
「貴様が罪人か……まだ子供ではないか、全くもって愚かしいな」
傲慢不遜なその態度、今世でまともに声を聞いたのは初めてだが声にすら力が宿ってるのは流石龍神と言っていい。
「龍華もいるのか……吾の勇姿を見に来たのか?」
龍華に対する龍の声音は優しかった。
本当に彼女を大切にしてるのが分かるくらいに優しいモノであり、その姿からは慈愛すら感じえる。
「そんな訳ないでしょう、私も貴女と戦いに来たのよ」
「……吾が与えた力でか?」
「えぇ、それでもよ――今日、私は刃と一緒に戦うの」
「罪人の影響か?」
「いいえ、私の意志よ」
「……ならばその意志を突き通してみせよ」
次に龍神は明らかな怒りを顕わにして俺を睨んでくる。
さっきの態度が嘘かのように俺一人に敵意や殺気を向けているのだ。
「……貴様に問おう、禍津神はどうした?」
「神綺なら出ねぇよ、お前の相手は俺だ龍神」
「そうか、何処までも愚かなのだな貴様は――ならばその魂ごと砕いて見せよう」
「お前こそ、やられるなよ――せっかく準備してきたかなら」
「そうか、ならば足掻いてみせよ大罪人!」
開始の合図はない。
……ただ始まりは相手からだ。
龍が叫んだ瞬間に地面から木々生え俺に向かって牙を剥く。
ここ数日の間逢魔さんに木の術を見せて貰っていたが規模が桁違い、一瞬で樹海が生まれその木々全てが根を伸ばして俺を襲ってきた。
「……折々と巡らせろ――起きろ、四季」
襲われる最中、俺は言葉を捧げて四季を呼んだ。
手の中にに現れる一本の太刀、子供の俺からすると重いが身体強化をあわせることによりなんとか扱える。
ついでになんだが、俺の服装も替わった。
子供用の服から黒い死装束へ。
なんで変わるのかは未だ疑問だが、神綺の趣味らしいのでそこにツッコミを入れても意味が無いだろう。
「すぅー――いくぞ、冷気解放」
刀を構えて冷気を解放する。
今まで溜めに溜め練り続けていた霊力純度100%の冷気。
それは今までのモノより圧倒的な寒さを誇り、俺に迫る根を全て一瞬で凍らせた。
「ついでにこれだ――冬の陣、凍装」
黒い死装束の上に氷の鎧を纏う。
触れれば敵を凍てつかせるこの鎧、寒さに強いのか冷気を掻い潜ってきた根達はそれに触れるだけで凍って砕けた。
樹海の先には龍がいる。
……原作の龍華と剣では近付くだけでも精一杯だったが、冷気を使えて根を防げる俺にはそれは関係ない。
冷気による自動防御がある以上、植物の攻撃は俺には通じない。
「岩石巨剣――デイダラ!」
龍華の声が聞こえ、そっちに向かえばそこには龍に向けて巨大な剣を発射する彼女の姿が見えた。視認した瞬間に俺は冷気を練って追撃するように数十を超える数の冷刀を一気に放った。
「もう来たのか罪人!」
「思ってたんだけどその罪人っていうの止めようぜ、俺は
「死ぬ貴様の名前を覚える気など無いわ!」
「そうかよ――それと頭上注意だ龍神様」
始めての戦闘である孤蝶との戦いで作ったその術、練度も上がり効果や数も増えたそれが相手に襲いかかる。
巨体が故に小回りの利かない龍神がそれを避けられるわけがなく、いとも簡単に龍の体にいくつもの傷を与えた。
「ぐぅっ! ――水よ生まれろ!」
龍が言葉を発せば、それに従う様にこの空間に湖が生まれた。
龍がその湖に霊力を注げば六匹の龍を象った水流が生まれ俺のみに照準を合わせて水のブレスを放ってくる。
冷気によって阻めると思ったが、水の密度が高いのか簡単に凍る事なく俺の凍装を砕いた。体には届かなかったが、こうも簡単に鎧が砕かれるとなると使い続けるのはかなり厳しいだろう。
それならば鎧に霊力を回すよりも攻めた方がいい……が。
「で、厄介なのが――植物も敵になることだよな!」
水の砲弾、根の槍、その上……岩石が武器へと変わり迫ってくる。
この龍の能力は大地に関するモノ全てであり、言わば龍華の上位互換。共闘してくれる龍華も攻撃をしてくれてるが元が龍神の力故か術が全然効いていない。
術特化の彼女からすれば本当にキツいだろうし、俺も防ぐので精一杯。
原作でも言われてる時期を間違えたボスの名の通りにこの龍は本当に強い。冷気で防ぐのは砲弾は無理で、岩石で出来た武器は避けるしかなく、植物の攻撃を防ぐには凍装が必須。
なんだこの糞仕様と叫びたくなるが、そんな事を言ってる暇などなく。文句を言う前に前に進むしかないのだ。
湖に触れさせすれば全部の水流は凍らせることが出来る。
だけど、それを相手も分かってるのか植物や岩石で阻害してくるのだ。
単純に辛く、龍華の援護で前に進めはするが……これと言った決定打がない
「だからといって負ける訳にはいかないだろ!」
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