闇堕ち転生~転生先が主人公だと思ったら闇堕ちする方の双子の兄でしたw~
鬼怒藍落
第一部:推し漫画の世界に転生
一章:闇堕ち予定の男に転生
第0話:兄の方でワロス
最終決戦の手前、そこでは一つの因縁が終わろうとしていた。
崩壊する大地、空は暗雲に支配されており床には倒れる男がいて目の前で同じ顔の青年が涙を流している。
冷たくなっていく男を前に、トドメを刺した青年は何も言わない。
「泣くなよ
「……泣いてない、
「嘘つくなって、どうせこれで会うのは最後だ……顔見せろよ兄弟」
二人は兄弟であり本来なら一緒に戦うはずの仲間であった。
――だが、何の因果か兄は敵となり弟である彼は兄を殺す事になったのだ。
力なく倒れ、先程まであった覇気を一切感じない男はいつまで経っても動かない弟を前にして、しょうがないなと笑って立ち上がる。
「……なぁ兄弟、約束だ。あいつはお前が倒せ、俺を倒したんだお前なら出来るぞ」
そう言って背中を押して男は振り返る。
何も言わずに先に進む青年に対して最後に何年も浮かべてなかった笑顔を浮かべて……。
「さぁ相棒最後の仕事だ――弟……剣の門出を邪魔する奴は全部叩っ切ってやるよ!」
◇
そんな、何時かの夢を見た。
何処かの誰かの記憶、忘れられない――忘れてはいけないそんなワンシーン。
これを見ていた誰かは、そのシーンを見て涙して……何より推しキャラの死を見届けて――。
「はーい、そろそろご飯の時間ですよー」
微睡みから目が覚めて最初聞こえたのはそんな事、何かと思い目を開ければそこには黒髪の美人がいた。
「だぁー?」
訳が分からないかも知れないが、言葉が発せられなかった。
俺は今絶対に誰だ? と言ったはずなのに、自分の耳に届いたのは赤ん坊の声。それも聞こえ方的に多分自分のもの。
意味不明な状況に周りを見渡そうとも、上手く首が動かない。
えぇ……と思いつつ、ようやく見れた鏡に視線をやればそこにはザ・赤ん坊みたいなのが映ってた。
数秒間状況を理解したくなくて、首を振れば連動するように動く鏡の中の赤ん坊。
何故か頭に過るオタク知識を参考に思考回路を巡らせれば、浮かんで出てくる単語が誘拐か転生。
「今日は元気ねー、哺乳瓶持ってきたわよ」
なんかわかんないけど助かった。
詳しいことは覚えてないけど、今の精神状況での飯とか多分脳破壊される。
ぐっじょぶ今までの俺! とか思いながらも慣れた手つきで俺は哺乳瓶を頼り食事をする。
「なんでこの子のは哺乳瓶派なのかしら? 最初からずっと嫌がってたけれど」
「気にする必要ないんじゃないか? ……それより、今日もお疲れだ凜」
「あ、
美人の横に現れるイケメン。
何故か見覚えのあるその男に違和感を覚えながらも、食事を終えて周りを見渡せばそこはかなり豪華な和風の寝室? だった。
四方には何やら札が張られた一目で分かる高い道具が置かれてるさっきの鑑があるその部屋。やはり見覚えのあるその景色に疑問符だけを浮かべ続けていれば、誰かに服を握られてる事に気がついた。
誰だか気になって横を見れば、そこには同じ顔した赤ん坊がいる。
「それにしても今日も仲良しね、
へぇ、凜に昴……刃に剣かぁ。
……なんか凄い聞いた事あるというか……なんだろうすっごい心当たりがあるんだが。いや、でも気のせいだ。そんな事は有り得ない。だってあれだぞ? そんな今時転生とか有り得ないって、ほら今の流行はVRMMOとかラブコメとかで……そんな漫画の世界に転生なんて……。
「生まれたばかりでこんなに仲良しなんだ。この子達はきっと手を取り合ってケモノを倒してくれるだろう」
アウトかも知れない。
ケモノという単語で今一気に平和要素がゼロになったが、まだ希望はあるかもしれない。そう、それは俺が剣の場合だ。
仮定だが今俺は前世で大好きだった漫画の世界に転生した可能性がある。
九割ぐらい当たってるかも知れないが、そこは置いておいてまだ俺がまだ刃ではない可能性が存在し、それならまだマシなのだ。
だって、剣の場合だったら主人公に転生したパターンの可能性があるから。だけど刃だったらヤバイ、絶対にマシな道が残ってない。
今挙げた刃というのは俺の前世の推しであり、大好きなあの漫画での闇堕ちするが花とまで言われた超絶格好いいキャラ――死に際はイケメン過ぎて男だが惚れそうになったし、たまに入る刃視点は壮絶すぎて休む暇など無くて……とか、語ってる場合じゃないなこれ。
まじでお願いだ神様、この世界の神とか碌なものじゃない奴ばっかりだが、今だけ願いを聞いてくれ。
刃だけは嫌だ――何が何でも刃だけは嫌だ。頼む、本当に頼む。
推しキャラになるという点でもこの先に待ってる未来的な意味でもマジで刃だけは嫌だ――だけど、現実は残酷であり、俺の今世での母親はこう言った。
「剣もご飯の時間ね、剣は飲んでくれるわよねー」
あ、詰んだわ俺。
これ、俺が
その事実に気付いた俺は、あまりの情報量に意識を落とした。
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