第9話 シルバー・サムライの緊急配信

「えっと、ここをこうして……ボタンを押して……うん、できた」


“お”

“お”

“きた”


「ええと、こんばんは。『華神一刀流道場』のシルバー・サムライです」


“こんさむ~”

“こんさむ”

“さむ”

“こんさむ(迫真)”


「まず初めに、今日は皆さんにご心配をおかけしました、ごめんなさい。配信の後のコメントにも書かせてもらったんですが、ちょっぴり無理しすぎちゃったみたいで、ダンジョンで気を失ったらしいです」


“無事でなにより”

“やっぱヤバかったんだ”

“無理しないで”

“師範代に怒られた?”


「はい、おじいちゃんにもすっごく怒られちゃいました。鍛錬が足りない、華神一刀流の後継者がこんなのでどうするー、って。えへへ」


“あぁ^~”

“シルサムスマイルすこ”

“シルサムスマイルは世界を平和にする”


「でも、今は元気いっぱいです! もう皆さんを心配させないように、精進していきますので、これからも華神一刀流道場をよろしくお願いしますっ!」


“おk”

“体に気をつけて無理のない範囲で毎秒配信しろ”

“よかった”

“健康第一だよ”




“あの仮面の奴は知り合い?”


「仮面の……あ、配信に映っていた方ですね」


“そうそう”

“登録者100万人のアホ”

“動きヤバかったよね”

“クソ強かった”


「すいません、あの方については何も知らないんです。でも、あの方に命を救ってもらいましたし、もしもまたお会いできるなら、ぜひお礼させてほしいと思います!」


“俺です”

“オッス、俺だよ!”

“仮面マンですよろしく”

“ここに連絡して→”


「あ、嘘つきさんですね! いけません、嘘つきさんは泥棒さんの始まりですよ!」


“ごめん”

“す許何”

“ん?”

“ん?今何でも”

“いつまで語録使ってんだよ”




“シルバー・サムライから見て、仮面の男はどうだった?”


「ええと、どうだった、と言いますと?」


“戦闘スタイルとか強さとか”

“気になるわ、評価聞かせて!”


「評価ですか、私みたいな半人前は人を評価するほどの立場じゃないですよ?」


“でもチャンネルだとモンスター討伐の指南してるじゃん”

“モンスターの倒し方、すっごく参考になります”

“シルサム師範代名乗って”


「し、師範代だなんて、そんな……!」


“お願い、ちょっとした乾燥でいい殻!”“←誤字で草”


「……わ、分かりました。私から見た仮面の方についての感想をお話しします。で、でも、ちょっぴりだけですよ!」


“おおおおおお”

“やったぜ。”

“きかせてきかせて”

“いいね!!”


「まず、動きの機敏さや反射速度は、私より上だと思います。並のモンスターでは対処できないでしょうし、武器を生成するスキル……と仮定した上で、汎用性も非常に高い、オールラウンダーの探索者ではないかと推測しています」


“なるほど”

“ふむふむ”


「ですが、行動そのものには気になる点もありました。何と説明すればいいか……他の誰かが操っている、ようにも見えます。思考より体の動きがほんのわずかに遅れていて、引っ張られるような動き、と言えばいいんでしょうか……不思議ですよねぇ」


“がっつり分析してて草”


「あ、そ、そうでした! この話はおしまい、おしまいですっ!」


“かわいい”

“かわいい”

“手を振るしぐさ好き”

“本気恋愛しちまうよ……”


「とにかく、これからは皆さんに心配させないよう、一層剣の道を極めていきます! こんな私ですが、応援よろしくお願いしますっ!」


“おうよ!”

“ずっと応援してるぞ”

“次回も楽しみだ”


「ありがとうございます! それでは皆さん、えっと、次回の配信でまたお会いしましょう! お疲れ様でした!」


“ばいさむ~”

“ばーざむ~”





「……ふう」


「とてもじゃないけど、言えないよね。体調不良で倒れたんじゃなくて、見えないに襲われたなんて……うぅ、まだちょっぴり首筋が痛いや」


「おじいちゃんにも『超実戦派剣術が不覚を取るとは何事か』なんて怒鳴られちゃうし、あんなに怒らなくたっていいのにぃ……でも、それよりも……」


「……録画で見たRKさん、すっごくカッコよかったなぁ……♪」

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