終末の世界

蜜柑 猫

第1話

 今からそう遠くない未来の話。

 人類は五度目の世界大戦を繰り広げ、第四次世界大戦後。

 分裂したアメリカの左派国と、中国の大統領が暗殺されたことにより分裂した社会主義左派の一国とが手を組み連合国軍を作り上げ、その資金の援助にロシア政府も関与し、四年後――第五次世界大戦中、新型爆弾の実験の最中に起こった爆発事故により、炎と熱波は地球を一瞬にして飲み込んだ。


 その爆弾の名を、その世界に終焉をもたらした兵器の名を。

 人は『死灰』――エスカトロジーと呼んだ――


※※※※※


「あー……?」


 少女は、絶え間なく捧ぐ朝日の光に耐えられず、簡素なベッドの上で無気力に目覚める……。それもそのはず、そもそもここには日差しを遮るものはおろか、屋根すらない。

 あるとしても、即席で作ったトタンの雨除けくらいで、それでも物足りないのだが――


「……さすがに住んで都になったところで、こんな所じゃねえ」


 そう、どこか抜けた声を出しながら、関節を鳴らす。

 流石にベッドとはいえ、そこら辺から拾ってきたソファじゃ満足に眠ることなんてできない――しかし、だからと言って彼女が望むようなものなんて、この世界には多分無いと考えた方が無難だった。

 大分年季の入ったソファだ、移動するだけでも軋む……。


 ソファの周りには、その場で身支度できるようにあらゆるもので囲まれている――まるでクローゼットの中で寝ているような感じだ。

 その場で短い髪を梳かし作業着に着替え、そして靴を履く。


「おわ……とうとうここにも伸びてきてしまったか」


 と、もうツルが中まで侵入していることに驚きつつも近くにあったハサミで、根元から切り取るや否や、外へと放り投げる。


「お前も動かせたら申し分ないんだけどねえ」


 と、錆びた柱を撫でる。

 生い茂った山の中で放置された廃バスが、彼女の住居だった――

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