第8話 孤高のソロプレイヤー

 キーンコーンカーンコーン。


 チャイムの音が午前の終わりを告げてきた。

 俺たち新入生は、昼で下校するのでここで終わり。ホームルームを終えているが、周りにいる人の数は中々減らない。みんな、楽しそうに喋ってる。


 知らない人と喋って友達を作ると決めていた俺は。

 周りが楽しそうに喋っているのに対し、一人静に忙しいふりをしてスマホでラノベを読んでいる。

 

 べ、べ、別にタイミングがなかっただけだし?

 友達を作ることなんてすぐできるし?

 というか、俺の席が黒板から見て右斜奥にある隣の席がいない端っこなのが悪い。

 前の席の人たちは元からの知り合いっぽくて話しかけづらいし?

 あーあ。完全に入学式で変な視線を浴びたところからおかしくなった気がする。


「はぁ」


 大きくため息を吐くと。


 横からニコニコした優々がやって来た。


「理央くん。なんで一人でいるの?」


「…………たまたま」


「そんなわかりやすい嘘つく必要ないのに。私まだこの教室に入ってから、理央くんが一度も知らない人と喋ってないって知ってるよ」


 前の席なのによく俺のこと見てるな。


「俺は孤高のソロプレイヤーってやつなの」


「どうせさっきまで読んでたラノベに書いてあったかっこいい言葉でしょ」


「なんでそこまで……」


「窓に反射してて何読んでるのか丸見えだったけど」


 ほらほらぁ〜と、楽しげに反射してる窓を指さしてきた。

 本当に丸見えだ。慌ててスマホを伏せる。


 入学初日をぼっちで終わりそうな俺は暗く沈んでるのに、優々は随分と明るいな。


「あっ別に私、こんなこと言いに来たわけじゃないんだった」


 優々はまるで誰かを呼ぶかのように教室の奥の方に手招きし。

 俺へ自信満々な顔を向けてきた。


「新しく友達ができました!」

 

「どうもこんちは〜。うち寺島てらしま阿栗あぐり。優々っちの友達でぇ〜す」


 赤みがかった茶色の長髪が特徴の、チャラチャラしてる女性が握手の手を差し伸べてきた。


 俺はその手を……取らない。


「友達は選んだほうがいいよ」


「寺ちゃんは悪い人じゃないから!」


 いやいやいや。

 優々の中学生時代の友達って、お淑やかな人だった気がするんだけど。


「柏原ちゃん。もしかしてこの人が理央って人?」


「あー……うん。そうなんだけど」


 優々は少し分が悪そうに口ごもった。

 

 一体なにを話したんだ? 

 どうせろくなことじゃないだろ……。

 気のせいかもしれないけど、寺島さんから向けられる目がちょっと鋭くなってるきがするんですけど!?


「なるなる。てことは、さっき言ってた大」


「ちょっと寺ちゃん。一回静かにしようね」


 寺島さんはなにか言いかけたが優々に口を塞がれてしまった。


 こんな動揺するなんて。

 ……本当になにを話したんだか。


「わ、私はちょっとまだ喋っていくから先に帰っていいよ。じゃそういうことだから!」


 優々は早口でそう言い、寺島さんを連れて女子が話してる輪の中に行ってしまった。


 忘れてたけど、優々って俺と違って誰にでも好かれて人ウケが良かったんだった。

 初日ぼっちの俺とは大違いだ。

 まぁ、怖気づいて何もしてないのも悪いけど。


 今日はこれからどうしよう……。

 やることないし、優々がもし一人で家に帰るってなったら一緒に帰ろうかな。


 別にぼっちで寂しいわけじゃないし?

 

 



【あとがき】

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