第8話 CM
撮影前にシュタイヤー舞曲を練習していたが、飽きたのでボカロで私が大好きな曲を弾き語りしてたらスポンサーに目を付けられた。
「
知らないおっさんと監督の問いに私はこの時代にボカロは開発されてなかった事を思い出した。ボカロが無ければ歌だって存在しない。
「えっと……私が作りました。」
本当にごめんなさい!調べられても出てこないからね!だから誤魔化しで自分で作ったと大嘘を吐いた。
「誰かの曲じゃなくて
おっさんの言葉にこくりと頷いた。
「遊んでごめんなさい。ちゃんと今からシュタイヤー舞曲の練習します!!」
ええ、飽きたからボカロで遊んでごめんなさい!ちゃんと練習するからね!と意思表示するも監督とおっさんは何やら話し込んでる様子。
「
おっさんの言葉に
「え?あの曲ですか?売り物にならないと思うんですけど…」
売って欲しいと言われたが、私としては作Pさんの曲なので売りたくない。
「そんな事はない!この『満月の珊瑚』の主題歌にぴったりなんだ!」
そう言われて考えると確かにと思ってしまった。
「…でも、子供が作ったものだし……それに主題歌って決まってたんじゃ?」
嫌々とごねるも
「確かに主題歌の候補はあるが本決まりではないし、あれだけの完成度だ!是非とも起用したい!」
この通りと私を拝んできたおっさんにたじろいだ。
「ん……ん~ん、じゃあ、売り上げの10%くれるなら良いですよ!」
CDの著作権印税料は基本的に売り上げの6%と言われている。10%なんて暴利を吹っ掛けられたら引き下がるだろうと思って提示したら
「分かった!それで良いよ。その代わりCMで弾き語りをして欲しいな。」
あっさりOKが出た。嘘だろう!!?
「………はい。」
条件を飲まれたのだから仕方ない。
「楽譜は書けるかな?」
「
「ノートはいつも持ち歩いているのかい?」
監督の言葉に
「たまに弾きたいと思ったメロディが沸いてくるので書き留めるのに使ってます。」
持参しているよーと伝えると何やら考え込んだ。
「じゃあ、撮影後に書いてくれるかな?」
おっさんの要望に
「分かりました。次の撮影が最後なので、その後に書いて渡しますね。」
了承しその場を離れた。
楽譜を渡して1週間が経過した。おっさんことスポンサーの
「
CMディレクターの言葉に
「分かりました。」
緊張した
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。楽しそうに弾き語りをしてくれたら良いからね。」
その言葉に不安だよと思いつつ頷いておく。
「じゃあ、先ずは着替えからだね。」
スタイリストのお姉さんに連れられて着替えをする。
サックス色のフレンチスリーブロングワンピースを着て薄っすらと化粧を施される。極め付けに麦藁帽子を被り夏を演出する。今はまだ冬だから寒いんだよ!コロンとしたおでこ靴を履いてピアノの椅子に座った。
ペダルの位置を調整し、鍵盤で指を慣らす。インナーにホッカイロを貼っているとはいえ、寒いものは寒いのだ!
ブルブルと震えながら撮影の合図を待つ。
カチンとスタートの合図を皮切りに私はボカロの曲を弾き語りした。
♪ーー♪ーーー♪♪ー♪
私が描いた一条
2番目の歌詞に差し掛かった時にカットと声が聞こえたので演奏を止めた。
「上手だったよ、
CMディレクターのOKの合図に私は寒さのあまり鼻水を垂らしてしまった。
スタイリストのお姉さんがティッシュを持ってきてくれた。有難い。
「さっき歌ってた曲の歌詞は1番目だけじゃないよね?」
そう聞かれたので
「歌詞は2番目までありますけど…」
正直に答えておく。
実は
「え?貰ったのには1番しか書いてなかったよ。」
「2番目の歌詞がいるとは思わなかったので…」
正直に答えると
「2番目の歌詞も教えてね。」
有無を言わさぬ笑みを貰った。
「はい……」
話し合いが終わったのかCMディレクターが
「
凄く良い笑顔で2番目の曲を催促してきた。
1番目の歌詞から通しで最後まで歌ってね、と言われたので諦め半分で頷いた。
こうして私は『月夜』(
因みに1番目だけの物は音声だけ抜き取って映画の予告編を作った。私も一条
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