老舗製菓メーカーやおやきん株式会社

ネコ山

雪の日通勤編

渋谷区道玄坂のど真ん中に本社を構える

老舗製菓メーカー「やおやきん株式会社」

大雪でも通勤するのが日本のビジネスパーソン。

関東地域の雪の日の通勤は非常に困難である。


※上演時間目安は30分弱です。

※キャラがなかなか濃いので前読み推奨。

※全役性別不問。全役一人称変更可。クマダとサメジマは口調変更可。

※内容が変わるような改変不可。一人読み非推奨。


<登場人物>

・クマダ

入社二年目。

上司は自社製品「ねるねるねってね」広報部長。

性別不問。一人称、口調変更可。


・サメジマ

自社製品「ねるねるねってね」広報部長。

声を張り上げがちでよく社長に怒られている。

渋谷在住、徒歩通勤。

性別不問。一人称、口調変更可。


・シロ

新卒社員。「〜っす」という口調で話す太鼓持ち。

親族は皆、警察官。

基本は電車通勤。

性別不問。一人称変更可。


・ナナホシ

自社製品「どんぐりっこあめ」広報部長。

口は悪く、理不尽なことも言うが縁の下の力もちタイプ。

性別不問。一人称変更可。


・ヒメノ

老舗製菓メーカー「やおやきん株式会社」の三代目社長。

輩な口調で怖いが、コミュニケーション能力が非常に高い。

いつも現場に出てくる社長。

性別不問。一人称変更可。



--------お話はここから---------


クマダ:(M)見事に雪積もったなー、うちの会社、電車通勤してる人が大半だから今日の仕事は早くて午後開始になるかな…

渋谷区道玄坂の坂の途中にあるのが僕の勤務先、老舗製菓メーカー「やおやきん株式会社」

俺は会社の顔とも言える知育菓子「ねるねるねってね」の広報部長の上司の元で働いている




クマダ:先輩おはようございます!


サメジマ:おはよう、クマダは通勤大丈夫だったか?


クマダ:はい、この通り!無事出勤時間に間に合いました!


サメジマ:家を早く出たんだな、えらいえらい…というか雪の日は早めに出るのは当たり前と言っちゃ当たり前か


クマダ:僕はいつもより二時間早く家を出ました、先輩は徒歩圏内だからこの大雪でも通勤楽勝ですもんね、羨ましいです!


サメジマ:まあ、家賃は高いけど…福利厚生で自社製品のお菓子食べ放題だから何とかなってるよ


クマダ:うちの自社製品…知育菓子や駄菓子……えーと、先輩の食生活はどうであれ、渋谷区住まい本当に羨ましいです!


サメジマ:ところでクマダ、どうやって会社まで来たんだ?普段は電車通勤だろ?


クマダ:僕はですね…


シロ:(食い気味に)おっはよ〜ございまっす!


サメジマ:シロ、お前いつも以上にテンション高いな


シロ:先輩!だってただの雪じゃなくて大雪ですよ!

テンション上がらないなんておかしいっす!そいつマジでノリ悪いっす!雪を知らない愚か者っす!雪の楽しさを知らないなんてマジでめちゃくちゃかわいそうな人生送ってるヤツっすよ!そいつ!!


クマダ:シロさん、それモラハラ!日陰者にも優しくして!


サメジマ:いつも元気なのは良い事だ、うん!


クマダ:そういえばシロさんは今日どうやって会社まで来たの?


シロ:私はー、これに乗ってきたっす!


ナナホシ:おい!誰だ!!オフィスのカーペットにタイヤ痕つけたやつは!!


サメジマ:ナナホシ部長、おはようございます


ナナホシ:おはよう、誰か!オフィスにこのタイヤ痕つけたバカがどいつか分かるか?


サメジマ:へぇ〜シロさん、セグウェーで通勤だなんて頭良いなあ


シロ:除雪済みの車道走れたから間に合ったんすけど…セグウェー、充電切れちゃったっす☆


ナナホシ:ほぅ…シロ、ご丁寧に社長のデスク前にあるコンセント使ってセグウェーの充電しやがってんのな…


クマダ:な、ナナホシ部長…


ナナホシ:シロ…お前、今すぐセグウェー駐輪場へ移動させろ!それと床が雪まみれの泥まみれだから掃除だ!!


シロ:ええー!部長〜セグウェーの充電終わらなかったら私どうやって帰れば良いんすか〜


ナナホシ:普通にいつも通り電車で帰れ、本当にお前はアレだな!


クマダ:(小声で)アレってバカってことだよな…たぶん

そういえば部長は何使って会社まで来たんですか?


ナナホシ:私はいつも通りだ


サメジマ:はっ!そういえばナナホシ部長だけ通勤用装備がほぼいつも通りだ…


シロ:えっ?ナナホシ部長…正気っすか?


クマダ:いつものヘルメットにゴーグルが着いてること以外はいつも通り…

肘当て、膝当てを装備されている…ということは…


ナナホシ:いつも通りローラーブレードで来たが、なんだ?お前たち


クマダ:…まじすか…(ドン引き)


シロ:ナナホシ部長、すんげえっす!!


サメジマ:さすが「とんぐりっこあめ」広報部長!!地球に優しいエコロジスト!


ナナホシ:よく分かってるな、「ねるねるねってね」広報部長!!羨ましいぞ、この徒歩通勤、渋谷区住まい!このセレブ風味拗らせてるクソ野郎!!


ーハイタッチする部長二人


クマダ:ナナホシ部長、それただの僻みでは…?いつも思うけど…

「どんぐりっこあめ」も「ねるねるねってね」も商品名大丈夫??



ヒメノ:おい、お前ら何だべってんだよ


ナナホシ:社長!


サメジマ:社長、通勤大丈夫でした?


ヒメノ:お前ら、誰に向かって言ってんだ?あ?!


サメジマ:しっ、失礼…致しました!!ですが、

社長の通勤に使っている手段を知っているからこそ

心配で心配でして…


ヒメノ:サメジマ…社長のあたしを舐めんなよ

あたしはこの「やおやきん株式会社」三代目だぞ、

ジジイと親父の背中を毎日見て育って来たんだ、

社長ってのは社員の見本にならねえといけねえ


クマダ:社長…いつも通りだあ…ははは


シロ:社長!今日もべらんめえ口調、たまんねえっす!


ナナホシ:シロ、社長に失礼だぞ


シロ:えへへ(笑)すみませんっすー


ナナホシ:へらへらしやがって、この野郎…!!


ヒメノ:口調に関しては気にしてねえよ、だがな…サメジマ


サメジマ:ん?だがな??とは?どうしました社長?


ヒメノ:ハテナが多いぞサメジマ!お前!覇気がねえぞ!!朝からこの大雪の中通勤してへばっちまったのか?あ?!


サメジマ:ひいぃ!社長!申し訳ございませんっ!!


シロ:おお〜!かっけえっす!社長!


ヒメノ:シロ、お前今日の昼着いて来い

(少し低音ボイスで)…この渋谷で最高にうまいリーマン飯、食わせてやらあ


シロ:やったー!社長よろしくっす!


クマダ:シロさん…いいなあ…


ナナホシ:おいクマダ、お前この雪と泥まみれの床掃除しろ


クマダ:へ?なんでです?ナナホシ部長


ナナホシ:社長がシロと昼飯へ行かれるんだ!!

シロの掃除が昼までに終わらなかったら社長の昼が遅くなっちまうだろうが!

なんだ?お前、社長を待たせても良いっていうのか?


クマダ:ええー!そんなこと言ってませんよ!


シロ:社長オススメのリーマン飯、楽しみっす〜


クマダ:なんでシロさんばっかり…!理不尽過ぎるぞ!!


サメジマ:社長、電話です!内線回します!


ヒメノ:あいよ、はい〜もしもし〜


ナナホシ:(手を叩く)就業開始時間だ、大雪でも無事出勤時間に間に合ったんだ、キビキビ動け!!

今日も一日気合い入れていくぞー!


シロ:はいっすー!


クマダ:自分だけ…掃除ですけどね


ナナホシ:なんだ?クマダ、早く掃除終わらせないと取引先の担当者来ちまうぞ


クマダ:やば!っていうか取引先との商談ある自分より今日のスケジュールが真っ白のシロさんが掃除したほうが良いと思うんですけど…


ナナホシ:なんか文句あんのか?


クマダ:いえ…はぁー(ため息)…


ヒメノ:おい、クマダとかいったなお前


クマダ:はい!どうしました?社長!


ヒメノ:お前、今日しっかり定時で上がれよ…

(少し低音ボイスで)ナナホシと一緒に連れて行ってやるよ、夜の渋谷のリーマン飯


クマダ:社長!!


ヒメノ:にしても、本当に昔のナナホシそっくりだな…お前


クマダ:?…そうなんですか?社長


ヒメノ:ああ、ナナホシのやつ言ってることはめちゃくちゃだが…裏ではちゃっかりみんなの仕事のサポートしてんだよ、この営業部のマニュアルなんか今やナナホシの担当じゃねえのにあいつが一人で作りやがったしな


クマダ:そうだったんですね…


ヒメノ:ああ、会社の一番の宝は「人財」なんだよクマダ、よーく覚えておけ


クマダ:人に財産の財で「人財」…社長、素敵な言葉ですね!


ヒメノ:この言葉に共感出来るやつはどこ行っても人に恵まれる良い「人財」になる


クマダ:社長!自分、もっともっと頑張ります!!



サメジマ:はぁ…はぁ……社長!大変です!!


ヒメノ:どうした、サメジマ…息切れし過ぎだ


サメジマ:しゃ…社長の…愛車が…


ヒメノ:あ?はっきり言えや!クソボケ!!


クマダ:社長、先輩めっちゃ息切れしてますから…


ヒメノ:さっき言葉発したんだから喋れるだろ?サメジマ!!


クマダ:えええ…(ドン引き)


サメジマ:社長の愛車のスタッドレスタイヤが、、


ヒメノ:タイヤがどうした?勿体ぶらずにとっとと言えやクソボケ!


サメジマ:ツルツルになってます!!


ヒメノ:はぁ?!なんだとーーー!!


クマダ:え?!先輩、それだけですか?!


サメジマ:クマダ、お前…それだけですか?!って…社長の愛車のタイヤがツルツルってことは、だ…


クマダ:はい…


サメジマ:雪道で止まる力が無くなってるタイヤ、イコール滑る、そして落車ということが起きる!由々しき事態なんだよ!!


ヒメノ:クソがーーー!!


シロ:社長のあの運転なら、タイヤがツルツルになるのは納得っす〜


ナナホシ:社長の趣味は愛車でドリフトだからな


クマダ:…え?…通勤経路に峠やヘアピンカーブでもあるんですか?


ヒメノ:んなもんこの渋谷区道玄坂にあるわけねーだろ!うちは会社まで愛車で片道十分だ!このボケナス!!


クマダ:ひいぃ…なんかすみません…


シロ:そういえば社長、最近専務と常務見ないっすけどどこで何してるんすか?


ヒメノ:専務は愛車に振り落とされて入院中、常務はスポーツジムで鍛えすぎによる疲労骨折で自宅療養中だ


クマダ:愛車に振り落とされる専務に…疲労骨折で自宅療養中の常務…二人ともやばい人??というか愛車に振り落とされるってどういうこと…??


ナナホシ:クマダ、お前何も知らないのか?


クマダ:はい、業務で直接関わることがないので…専務、常務については分からないことが多いんです


ヒメノ:ま、専務も常務もあたしと違ってコミュ障拗らせてやがるからな


シロ:社長は本当にコミュニケーションの天才っす!


ヒメノ:シロ、リーマン飯じゃなくて今日の昼飯は寿司にするか?廻らねえ寿司、広尾に良い寿司屋があんだよ


シロ:社長!良いんすか?!えへへ(笑)


サメジマ:社長、タイヤのスペアがあれば私が今すぐ交換します!


ヒメノ:おい、サメジマ…今は就業時間だ、お前はお前の仕事をしろ

お前は「ねるねるねってね」広報部長だ!

「ねるねるねってね」はこの「やおやきん株式会社」の看板商品なんだぞ!

ぬるい仕事してんじゃねーぞ!!このデコスケ野郎!!


サメジマ:はい、かしこまりました…ででででで出過ぎた真似をしてしまい大変申し訳ございません…!


ヒメノ:サメジマ、わかりゃあいいんだよ

さ、お前ら業務へ戻れ!

…くっそ、午後から取引先へ行かねーといけねえのに…

昼休憩今とってタイヤ交換行ってくるか

おい、ナナホシ


ナナホシ:はい、社長


ヒメノ:今から昼休憩行ってくる、先方から連絡あったら一時間後に戻るって伝えとけ


ナナホシ:かしこまりました!


ヒメノ:シロ、すまねぇ、そういうことだ

最高にうまい廻らねえ広尾の寿司、明日行くぞ


シロ:社長!了解っすー!


クマダ:ねえ、シロさん


シロ:どうしたんすか?クマダさん


クマダ:社長の愛車、知ってる?


シロ:ん?知ってるっすよ


クマダ:老舗製菓メーカーの三代目だから、凄い車乗ってるんだろうなあー


シロ:社長の運転テクはマジでヤバいっすよ!


クマダ:スタッドレスタイヤがツルツルになるくらいだし…社長は相当なドライビングテクニックを持ってるんだろうな…


サメジマ:愛車にまたがる社長のお姿はまさに頭文字H!!あ、「H」はヒメノ社長の頭文字な


ナナホシ:おい、サメジマ、広告代理店から電話きてるぞ


サメジマ:ナナホシ部長、了解!…はい、担当のサメジマです…はい、はい…


シロ:部長たち、通常業務に戻っちゃったっすね


クマダ:ところでー…シロさん、何やってるの?


シロ:んーこれはっすねー、雪と泥のついた愛車セグウェーのナンバープレートを磨いてるっす


クマダ:へ?


シロ:クマダさん、セグウェーは軽車両で原付バイクと同じ扱いなんすよ?ナンバープレート無しに車道や公道走ったら捕まるっすー!


クマダ:へー、そうなんだぁ…というか社長と昼ごはんの約束無くなったんだからシロさんが床の掃除をするべきでは…??


ナナホシ:あ?!なんだと?!…社長の愛車用のスタッドレスタイヤが無い…だと?


クマダ:え?車のスタッドレスタイヤが売り切れてる…?!

まあ、関東じゃあこんな大雪滅多にないから在庫も無くなるよな…


シロ:クマダさん、社長の愛車のタイヤはスタッドレス以外も在庫よく切れてるっす


クマダ:え?普通の高級車じゃないの?


ヒメノ:…くっそ!!


シロ:社長おかえりなさいっす!


ヒメノ:ああ、戻った…最悪だ…


サメジマ:どうしました?!社長!


ヒメノ:いちいち声張るんじゃねえよ!うるせえぞ、サメジマ!!


サメジマ:ひぃいいい!大変失礼しました…


クマダ:社長、タイヤ無かったんですか?


ヒメノ:そうだよ…くっそ!!この雪で電車は動いてねえし、どうやって取引先行けばいいんだよ…


シロ:社長!これ、使ってくださいっす!


サメジマ:シロ?お前、セグウェーを社長へお貸しするのか?


シロ:困っている人を助けるのは当たり前のことっす!!


ヒメノ:さすがだ、シロ


シロ:いやあ、それほどでもあるっすー


クマダ:謙遜しない新卒社員…シロさんってなーんか漠然とした大物感あるんだよなあ


ヒメノ:シロ、お前の魂こもった愛車、セグウェー…ありがたく借りるぜ


シロ:はいっすー!


ナナホシ:社長!スタッドレスタイヤ、ありました!!


ヒメノ:お?ナナホシ、いつの間に


ナナホシ:社長の愛車の為ですよ、社長の秘書ツキノがまだ出社出来てないので俺が代わりに探して宅配の手配もしておきました!


ヒメノ:さすがだ、ナナホシ!!


ナナホシ:社長、スペアタイヤも用意したのでスタッドレスタイヤ合計2個、約一時間後にここに届きます!


クマダ:ん?スペアタイヤも用意してタイヤ2個?


サメジマ:クマダ、お前知らないのか?


クマダ:何がです?


サメジマ:ヒメノ社長の愛車


クマダ:社長の愛車って言うとやっぱり…ベンツーかレグザス…それかBNWですか??


サメジマ:はぁ(ため息)…


シロ:クマダさんが我らの社長の愛車を知らないなんて…正直がっかりっす


ナナホシ:そういうとこだぞ、クマダ


クマダ:え?え?


クマダ:(N)そして一時間後


シロ:社長!届いたっすー!


サメジマ:自分がタイヤ交換します、社長!!


ヒメノ:(低い声で)サメジマ、手前の愛車は手前で管理するって決めてるから手出しは無用だ…お前は黙って自席へ戻って仕事しろや


サメジマ:は、はいぃぃーー!!


クマダ:社長の愛車…(震える)


ヒメノ:あ?どうした、クマダ小刻みに震えやがって


シロ:社長こそ真のエコロジストっす!


ヒメノ:今の一流企業は地球に優しくてナンボだ、あたしは排気ガスが出る車になんざ一生乗る気はねえよ


クマダ:いやいや…だからってこれは…

僕、小学校以来ですよ…これ見るの…(震える)


ナナホシ:社長のドライビングテクはまさに一級品だ


ヒメノ:よせよ、ナナホシ

おっし!さっそくタイヤ交換だ


クマダ:ねえ、シロさん…これは公道走る時ナンバープレートが必要な車?


シロ:ナンバープレートはいらないっす、社長の愛車は車や人通りの少ない道であれば公道も走行可能っす!


クマダ:へぇー……というかこれ一輪車だよね?!間違いなく一輪車だよね!!!


ヒメノ:あ?クマダ、あたしの愛車になんか文句あんのか?あ?言ってみろや


クマダ:文句だなんて、滅相もございませんっっ!!

(M)渋谷区の一等地を一輪車で通勤て…社長、強いんよ…


サメジマ:たしか先代は通勤三輪車でしたね


ヒメノ:ああ、うちの親父もエコロジストだからな


クマダ:…一輪車も三輪車も乗らずに歩いた方が早く着くと思うんだけどなあ…にしてもシロさんって交通ルール詳しいね


シロ:そうっすか?当然のことっす!


サメジマ:シロの家は代々警察官の家だそうだ


シロ:サメジマ部長バラさないでくださいっすー、個人情報の漏洩はこういう些細なことから起こるっすよー


クマダ:え?シロさん、そうなの?


シロ:そうっすよ!両親もいとこも刑事課で働いてるっす!あ、来年は弟が警察学校入るっす


クマダ:そ、そうなんだぁ…(ドン引き)


サメジマ:私は徒歩通勤、シロはセグウェー、ナナホシ部長はローラーブレード、社長はスタッドレス一輪車で大雪の中でもこうして無事出社出来たわけだが…


シロ:クマダさん、今日は何に乗って出社したんすか?


クマダ:え?


サメジマ:そういえばお前、いつもは電車通勤なのにどうやってきた?電車は運休だっただろ?


ナナホシ:私がいつも通勤時に併走している山手線も動いて無かったな


シロ:ナナホシ部長のローラーブレード、どちゃくそ速いっすもんね!


クマダ:山手線と併走しているローラーブレードて…どんだけ速いんだよ!!


ヒメノ:クマダ、どうやって出社した?


クマダ:え?僕は…


ヒメノ:もったいぶらずに早くゲロっちまえよ


サメジマ:クマダ、社長が早く聞きたがっていらっしゃるぞ


ヒメノ:サメジマ、お前は黙れ!うるせえぞ!


サメジマ:ひぇえ!!申し訳ございませんっ!!


ヒメノ:いちいち声張るんじゃねえよ!


サメジマ:は、はぃいいい!!


ナナホシ:クマダ…まさか、だよな?


クマダ:まさかとは?


ナナホシ:…会社の駐輪場に置いてあったアレで今日出社したのか?


クマダ:はい、そうです



クマダ:雪がなかなか深かったんで、竹馬に乗ってきました

竹馬なら雪の上を移動出来るんで結構快適でしたよ



ヒメノ:くっ…!!


シロ:クマダさん、正気っすか?!


サメジマ:なんて奴だ…


ナナホシ:通勤中に聞こえたカランコロンって音、あれはクマダの竹馬の音だったのか!!


クマダ:はい


ヒメノ:あたしの一輪車や親父の三輪車よりもエコな通勤していやがるとはな…上には上がいるもんだ


クマダ:竹馬は竹と麻紐で作ってるので自然にかえせますし、竹はすぐ伸びるんで!


ヒメノ:クマダ、お前やるじゃねーか!!


ナナホシ:…クマダの方が私よりエコロジスト……(震える)


サメジマ:ナナホシ部長!気を確かに!!


シロ:あ、ちなみに竹馬は一輪車と交通ルールは同じっす!


ヒメノ:む?…おっ!!……(天啓)


ナナホシ:社長!!社長が!何か閃かれたようだ!メモだ!メモ!!


シロ:わくわく、わくわくっす!


サメジマ:社長今度はどんな商品ですか??


ヒメノ:…竹馬…竹…馬…馬い……


シロ:わくわく、わくわくっす!


サメジマ:…社長?!



ヒメノ:「たけうまい棒」だ!!



クマダ:へ?


ヒメノ:竹のような筒状のスナック菓子だ、子供から大人まで幅広い層をターゲットにした…


シロ:おやつにもおつまみにもなるってやつっすね!


ヒメノ:ああ、そうだ!それだ!シロさすがだ!


シロ:いえいえ、それほどでもあるっすー


クマダ:本当にシロさんは謙遜しないんだよなあー、にしてもさっきの社長のあれは何だったんだろう?


サメジマ:子供から大人まで…となると比較的安価な物じゃないと


ナナホシ:そうだな、「どんぐりっこガム」くらいの価格…一本十円辺りが良さそうだな


ヒメノ:一本十円ならバラ売りでコンビニとか駄菓子屋にも置けるな、あと三十本くらいまとめて大袋にしてドンクホーテとか大型店に置いてもらうのも良し…


シロ:はいはいっすー!


クマダ:シロさんどうしたの?


シロ:自分、商店街やショッピングモールのクジ引きの残念賞ポケットティッシュよりお菓子が良いっす!!ポケットティッシュは道ばたで死ぬほど配られてるからいつもバッグがパンパンになって大変なんすー


ナナホシ:一本十円ならポケットティッシュよりも安くて満足度も高そうだな!それに、その場で食べてしまえば荷物にならないうえに小腹を満たすことも出来る!


サメジマ:これは…個人から企業まで幅広く指示されるかもしれない!!これはいける!!絶対いける!!


ヒメノ:たりめーだろ!!いけるに決まってんだよ!

ヒメノ:おっし!お前ら!!気合い入れろ!


シロ:はいっす!


サメジマ:はい!


ナナホシ:はい!


ヒメノ:「たけうまい棒」、商品化するぞ!!

ヒメノ:うちのスナック菓子、「もろこし輪二郎(わじろう)」の工場ラインを使えば筒状のスナックは作れそうだ


シロ:おおお!!すごいっす!!社長の閃きから商品が生まれる瞬間に立ち会えるなんて…!!自分わくわくが止まらないっす!!


クマダ:…どんどんみんながアイデアを出してく……これが社長の言っていた「人財」の力…!!


ナナホシ:子供から大人まで楽しめる味か、人気フレーバーの市場調査だな


サメジマ:「やおやきん株式会社」の歴代スナック菓子のフレーバー一覧をまとめて…個人的にはコーンポタージュ味のスナックが食べたいなあー


シロ:コーンポタージュ味のスナック、美味しそうっす!!


ヒメノ:その味良いな、サメジマお前やるじゃねーか!


サメジマ:社長!!ありがとうございますっ!!


ヒメノ:サメジマいちいち声張るんじゃねえ!!うるせえぞ!!


サメジマ:ももももも申し訳ございませんっ!!!



クマダ:(N)雪の日の通勤から生まれた「やおやきん株式会社」の筒状スナック菓子、「たけうまい棒」

クマダ:この「たけうまい棒」が発売されるやいなや大ヒット商品になるのはみんなの予想通りだった

クマダ:そしてこの大雪の日から半年後、僕は入社三年目にして「たけうまい棒」の広報部長へと昇進したのである


クマダ:「やおやきん株式会社」の「たけうまい棒」…これも商品名大丈夫??


-完-


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