第5話
警察がクルーザーに乗り込んで来て、その場にいた全員の話を聞いた。
Aも、血が滲んでいるずぶ濡れの衣類のままで、バスタオルで髪の毛を拭きながら、聴取を受けた。
その時の供述内容は……。
【Aの供述】
■潜水艇の中に入った時の話をしてください
「ハッチから、梯子を降りて中に入ると、社長が床にうつぶせで倒れていました。背中から血が流れていたので、それを見て驚いて悲鳴が出ました。止血をしようと、近づいて身体を引き寄せた時に、自分の手や衣類にも血が付きました。社長の身体をさすった時の感触で、すでに死んでいると思いました」
■潜水艇の中に他に誰かいましたか
「誰もいません、社長だけです」
■凶器のようなものを見ましたか
「分かりません。そんな余裕は無かったので」
■それから、どうしました
「少しして、頭が冷静になったので、ここを荒らしてはいけないと……。それで艦内から急いで外へ出ました。潜水艇の甲板に出た時に、靴底の血か何かに滑ってしまい、海に落ちてしまいました。それでスタッフに浮き輪を投げ込んでもって、ひき上げてもらいました」
勿論、Aが落ちた辺りの海底の土砂を
【他のスタッフの供述】
■Aが潜水艇に入る時と、出る時に何かを持っていましたか
「Aは入る時も出る時も、何も持って無かったと思います」
(もう一人の供述)
「そういえば、Aが潜水艇に入る前に、Aから社長用のマグボトルを手渡されたので、受け取りました」
■それには、何が入っているのですか
「おそらく、ホットの抹茶風ドリンクです。社長が好きなので……。ああ、たしか潜水艇に乗り込む前にも、社長が飲んでいました」
そのスタッフが預かっていたマグボトルを検査すると、スタッフが言った通りの抹茶風ドリンクが入っていて、毒などの成分は発見されなかった。
■潜水艇を引き上げている時に、最後にクルーザーの甲板に出て来た人は誰ですか
「操舵室の操縦士を除くと、警察に通報をしていた、Aが最後だったと思います」
Aに、なぜ遅かったのかを聞くと、
「通報した後に、抹茶風ドリンクの残りが少ないのに気が付いたので、それを補充していて遅くなりました。その時は、社長が死んでいるなんて想像もしていなかったので」と答えた。
「どうじゃ、レティーシャ、何か分かったか?」
僕には、謎が、全く解けなかった。
「……その潜水艇に、中村青司が作った、四人目が乗れる秘密の小部屋が有ったとか」
と、勢いで言ったが、モニターの向こう側で、(それは無いだろ)と、権造に鼻で笑われたような気がした。
その後で、主人公の姉弟探偵の活躍の話と、Aの犯行方法を聞いた。
そして権造は、午前一時丁度に、お約束の『グッドラック!』を言ってから落ちて行った。
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