第55話 白雪姫とお出かけ 5

 フードコートへと足を運んだ俺と凛花は一通りお店をぐるりと回り、何を食べるかを決める。時間帯的に混んでいるかと思われたが、今日が平日と言うこともあり、ちらほら席が空いていた。席が無くてその場をうろうろする必要がなくなり非常に助かった。


「じゃあ俺買ってくるから」


「うん、お願い」


 俺が買いに行って、凛花が席を確保する。この役割分担はフードコートなどでは定石。荷物を置いて確保するときもあるが荷物を取られる可能性があるためそれはやらない。後個人的に荷物を置いて席を確保するのが好きじゃないって言う理由もある。


 そして何より一人の時間を作れるというのが最大の理由だったりする。はぁ……ようやく落ち着くことが出来る。今日はいつも以上に体とメンタルへのの負担が大きい。こうして一人の時間挟まねば午後がもたないだろう。


「はぁ……マジで疲れたぁ」


 まだ数時間しか経っていないかつ睡眠もバッチリ取ったはずなのに、まるで1日居眠りなしで学校を乗り切った時並みの疲労感を感じる。


 いやね?他の男子とかからすればラッキーなのかもしれないし、このことを涼太とか彼女欲しいマンに話したら絶対にキレられるシチュエーションなのは分かるよ?でも気まずさが勝っちゃうのよ。


 友人を頼るのは普通だし、仲良くなれば距離が近くなるのは当然なんだけど凛花は近すぎるのよ。それは友達以上の関係値に進んでる人たちの距離感なのよ。


 多くの人は関係がどんどん進んでいくにつれ、色々なものを許していく。物の貸し借りであったり、話し方であったり、距離であったりとほとんどのもので今までよりも規制がどんどん緩くなっていく。


 その規制を緩めた関係の代表例が親友、恋人、家族と呼ばれるものであり、ただの友人、知り合いなどとは一線を画すものである。


 それを踏まえて俺と凛花の関係を見てみよう。凛花がどう思っているかは分からないが俺は友達だと思っている。少し仲の良い知り合いでも可としよう。


 うん、明らかに距離感おかしいですよね。


 周知の事実ではあったが、やはり今日の凛花の距離感は異常である。離れられると嫌われてるのかなと感じてしまうが、こんなに近すぎるのは逆に不安になるし居心地が悪くなってしまうのだ。


 いや本当になんで今日こんなに距離が近いの?普通に心臓に悪いからやめて欲しいんですけど?


 最初は視界がいつもよりも狭いから仕方がないと思っていたが、それでも明らかに近すぎる。まぁ誰かにぶつからないよう、俺の近くにいるのはあると思う。でも普通はなんか羞恥心とか、居心地悪いなぁとか感じると思うの。それでも自然と距離を置くと思うの。


 もしかして男として見られてないってやつですか?もし仮にそうだとしたら普通に困るんですけど。あ、別に付き合痛い的なニュアンスではなく、シンプルに気まずいし心臓へ負荷がかかりすぎてたいへんなことになっちゃうからと言う理由です。


 まぁ午後からは多少なりとも距離が離れるとは思うんだけどさぁ……。


 先ほど凛花を支えた時のことを思い出す。以前も似たようなことがあった。その時も数日気まずい空気が流れるというよろしくない状況が生まれてしまった。まぁあの時はお互いのすれ違いも相まって長引いただけだから、さすがにさっきのは今日中に清算してくれると思う。が、

  

 俺、この後どうしよう。


 逆に言えば今日一日はは気まずい空気に耐えなければいけないという事なのだ。


 1日と言うのは見方によって長くもなるし、短くもなる。残念ながら今回は前者の方。あと数時間も気まずい空気の中で何とか酸素を肺に取り込まなければいけない。想像するだけでもう既に逃げ出したい衝動に駆られる。


 あぁ……考えるだけで憂鬱だぁ。なんで楽しいはずのお出かけがこんなに自分の心を痛めつけてくるんですかねぇ。


 午前中は凛花の距離が近くて心がズタボロに、そして午後はほぼ確実に流れる気まずい空気のせいで心がズタボロにされる。うん、これなんて地獄?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る