ゲーム世界に現実のステータスが反映されるので、現実世界のダンジョンで必死にレベルアップして最強ゲーマーになります。―冒険者兼探索者で二つの世界を謳歌する―
第10話『探索者っていうのはやっぱりこうだ』
第10話『探索者っていうのはやっぱりこうだ』
昼休憩も終わり、午後の部へ。
いつもダンジョンへ向かう前に通過してくるセンターの中には、探索者にはありがたいシャワールームやお風呂、休憩スペースや食事処が用意されている。
そこで丸々1時間過ごした。
そして今、午後の予定を立てるためにダンジョンへ通じる通路にあるベンチに腰を下ろしている。
「よし、午後の部はもう少しだけ欲張っていこう」
『暁様、午後の予定はどのようにいたしましょう』
「そうだな。午前中は金銭重視だったが、久しぶりに経験値効率をあげようか」
『かしこまりました。では、補助装置の開放はいかがなさいますか?』
「んーそうだな。あれも久しぶりに使おう」
『わかりました。少々お待ち下さい』
補助装置。
探索者試験を合格し、16歳という年齢に達した人が誰でもダンジョンに入れるようにするもの。
簡潔に言うと、身体補助強化装置。
アシスタントAIの制限解除と共に装備が義務つけられており、レベルを上回る能力を発揮できるようになる。
『準備完了です』
「じゃあこれからはフルアシストで頼む」
『上限解放の準備をいたします。今のうちに討伐したいモンスターを決めておいてください』
「了解」
そうだな。
せっかく久しぶりに上限解除をするんだから、普通のモンスターではもったいない。
なら……。
『暁様、全ての準備が整いました』
「さすがはカナリア。じゃあ対象モンスターは、【スネークアダー】でいこう」
『さすがは暁様。単身でボス攻略というわけですね』
「ああ。探索者として、少しだけ血が騒いできた」
『では取り巻きに関しては自動排除モードを実行しようと思いますが、問題ありませんか?』
「それで頼む。じゃあ、行くか」
俺は立ち上がり、再びダンジョンへ向かった。
ダンジョンに突入し、自動走行モードで走る。
これはカナリアに俺のほとんどの意志を預け、無駄のな力を一切使わずに走ることが可能。
そして、
『ギイィ』
『ギャア』
俺を襲うために飛びかかってくるスネーカー達は次々に灰となっていく。
しかしそれが成されるのは俺の手であり、カナリアの自動排除モードだ。
これも自動走行モードと同じく、カナリアが自動で索敵し、半自動で俺の体を操作して剣でなぎ倒す。
注意しなければならないのが、俺のレベルより同等もしくは格上のモンスターの場合はモードが停止してしまう。
「ボスエリアまでもう少しか」
『はい。各モードは継続します』
「ああ頼む」
もはやここまでくると自分の体が自分のものじゃなく感じる。
普通だったら息が上がる距離を既に走っているだろうが、ほとんど疲れを感じない。
『暁様、到着いたしました』
「ここからが本番だな」
『全力でアシストいたします』
たどり着いたのは、ダンジョンの一角にある部屋。
四角い形状をしているものとは違い、放物線を描いたようにくり抜かれてあり、ここより先に道はなく、最奥に空いた穴から【スネークアダー】が這い出てくるだけ。
「出てきたな」
俺という侵入者を感知したのであろう。
蛇は蛇なんだが、頭部がエラを張ったように広がっている。
当然、大きさも違う。
たぶんまっすぐ伸ばしたら俺の身長よりは大きい。
だが胴体の半分ぐらいから体を反り立たせているため、目線は俺の胸元ぐらいだ。
俺は左の手汗をズボンで拭い、剣を左に持ち替えて右手の手汗をズボンで拭く。
その後、剣を右に持ち替える。
「すぅー、ふぅー。心躍る、熱い戦いをしよう」
『勝利は確実です。なんせ、私がいますので』
「言ってくれるぜーーっ!」
俺は地面を蹴り、前進。
『シャーッ!』
ーー回避。
威嚇と同時に毒液を飛ばされ、右に跳ぶ。
「すーっーー!」
再び地面を蹴る。
『避けます』
突進する俺の行動を操作し、突如スライディングをする。
考える時間はなく、風切り音が俺の胴体があった場所で鳴った。
『行きます』
今度は前進ーー後、上へ跳ぶ。
次は足があった場所で風切り音。
「なるほどな」
『シィッシャー!』
「どうどう、そんなに怒るなって」
スネークアダーは避けられるはずのない攻撃を2撃も回避されたことにご立腹のようだ。
油断していたわけではないが、カナリアに助けられた。
今の間、俺の目が追いつかないところでスネークアダーが繰り出してきた尻尾の攻撃。
カナリアのアシストがなければ、今頃俺は間違いなく死んでいた。
『自動排除モード、継続』
目の前で怒りに震えるボス。
しかし敵はそれだけではない。
スネークアダーを視界に捉えたまま、隙をついて攻撃しようとしてくるスネーカー達。
それをなぎ倒しつつ、思考を巡らせる。
先程の攻撃は、かなりの速度だった。
しかし、1撃目、2撃目を経て目が慣れてきたから、次からは意識的に回避できる。
カナリアのアシストがあるからとはいえ、俺の体力は無尽蔵なわけではない。
なら、次の攻防で終わらせたいところだ。
「カナリア、次できめる」
『かしこまりました』
部屋に入ってきた最後のスネーカーを灰に変え、着地と同時にスネークアダーへ突撃開始。
『シャアアアアアアッ!』
「ふんっ!」
『シャッ!?』
すまないな。
「この剣、超強いだろ」
攻撃手段であり、ご自慢の尻尾の先端を切り落としてやった。
「で、次は毒なんだろ? なら、カナリア」
『自動回避モード、続行』
『シャ! シャッ! シャァ!?』
右に、左に、後ろに、前に跳ぶ。
全ての攻撃を予測し、回避。
驚くのも無理もない。
しかし、ここまでだ。
「はあぁっ!」
毒を吐く感覚を見計らい、俺はスネークアダーの懐へ飛び込む。
そして、一閃。
スネークアダーは断末魔すら上げることなく灰となった。
『暁様、ご苦労さまです。そして、おめでとうございます』
「ああ、カナリアもお疲れ様。そして、ありがとう」
『これぐらいお安い御用です。それでは回復を』
腰に巻いてあるポーチからタブレットを取り出し、一粒だけ口に放り込む。
特に怪我を負ったわけではないが、疲労感が徐々に抜けていくのを感じる。
『現在のレベルは23です。帰路に就きますか?』
「いや、せっかくだからもう一戦やっていこう。それで25になるんじゃないか?」
『はいその通りです。次のスネークアダーが出現するまで残り24分15秒になります』
「ああわかった。じゃあ少しだけ休むか」
『各種モードは常に実行しておきますので、もしも眠ってしまったとしても大丈夫です』
胸の高まりを抱えたまま、壁際へ向かって座る。
この感覚、この感覚だ。
この感覚が俺を高ぶらせる。
初めて味わったときから忘れられない。
緊張感のある戦いでしか得られない、この熱さ。
探索者っていうのはやっぱりこうでなくっちゃな。
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