第5話 アルカナ
唸り声と共に多くの足音が、3人の方へ近づいてくる。
「なんだ?何体もこちらに来る感じだな」
ガクソンが警戒した。
「気がつかなかったのか?並のボス・ゴブリンがこれだけのゴブリンを従えて群れを作っているわけないだろ。本命のボスが来たってことだ」
ゾラは悠長に酒を呑みながら言った。
確かにと思った。これだけのゴブリンを従えることが出来るゴブリンになると、【キング・ゴブリン】【ゴブリン・チャンプ】だろうか?どちらにせよ討伐には、A級冒険者並みの腕前が必要だろう。
「ヴォォオオオオオオオオオオ――」
唸り声のような叫びと共に魔物の群れが現れた。
ゴブリンが50体ぐらいだろう。
その中に1対、武装したツノの生えた魔物が見えた。
「まさか?オーガがゴブリンを従えているってことなのか?」
アルマは、腰にある剣を鞘から抜いた。
剣は全体的に黒を基調に出来ているが、細かい所に何カ所も傷がついているのを見る限り、幾度も戦いをこなしてきたのが分かる。
「ほう、これは面白そうだ」
ゾラがなぜか楽しそうな声をあげた。
あっという間にゴブリンの群れが3人を取り囲んだ。
威嚇のような声が騒音のようにうるさい。
「ココ、オレ、ノ、クニ、コクミン、コロシタ、オマエ、ラ、シケイ」
オーガが人語を話した。
基本、魔物と人間の意思疎通は出来ない。だが稀に、強い魔物の一部が人語を使って、人間とコミュニケーションがとれる個体が存在する。
「話せるオーガ?それにここを国と言ったのか?」
ガクソンは、呆れ顔で盾を構える。
「オレ、ゲンジロウ、サマ、ノ、シタ、イタ、オレ、ツヨイ」
「なんだと……」
剣を握る手に力が入る。。
ゲンジロウの率いていたのは、武装したオーガ軍。その中の一体ってことか。
じゃなんでここに居るんだ?しかもゴブリンなんかを率いて……。
「イケ」
そうオーガが言った瞬間、ゴブリンの数体が矢が放つ。
アルマに当たる前に、ガクソンが盾で矢の雨を間一髪防ぐ。それを皮切りにこん棒や斧を持ったゴブリン共が一斉に突撃してくる。
ゴブリンの攻撃をかわし、まず一体を斬る。そこから流れるような動きでアルマはゴブリン共を斬る。数体のゴブリンが放つ矢はガクソンが全て防いでくれた。
数体のゴブリンの同時攻撃を躱しながら、次々とゴブリンを斬り伏せる。
アルマの反射神経は速く、動きも普通の人間とは思えないほどだった。
「それがお前のアルカナか。道理で強いわけだ」
ガクソンが横目で感心している。
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【アルカナ】
アルカナとは、生まれ持った魔力の性質のようなものだ。
戦闘を行う際、ドーパミンのように自身が持つ魔力が全身を巡る。その魔力の性質は人それぞれ違う。ということを異世界人のタロウは発見し世に広めたことだ。
火の魔法が苦手とする者が、実は土魔法が得意だったり、戦闘系魔法より回復系魔法の方が得意だったりと、個人の特性にあった魔法を使うことを教えた。
魔法を苦手とする戦士は、いわれる【
それぞれが持つアルカナは、鍛錬することでその効力を向上できるが難易度が高く、多くの者が生まれ持ったアルカナの力に依存する。だが努力次第では強くなる可能性があると分かっている。
現在、戦闘の才能があるかどうかは、どれだけアルカナの力を発揮できるかにかかっている。
さらに、アルカナとは常に発動しているわけではなく、体力消耗や深い痛手によって魔力が全身にうまく巡らなくなった時は、戦士たちのバフ状態は解除され、魔法使いは魔法を放つことが出来なくなる。それは戦闘不能を意味する。
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アルマの圧倒的な力で、すでに半数のゴブリンを斬った。
ゴブリン共は恐怖を感じたのか、突撃を躊躇するように動かなくなった。
「さて、これからどうするか……」
アルマは呟く。
ガクソンの攻撃は期待できない……。今でも呑気に酒を呑んでいるゾラは……とりあえず考えることをやめておこう。
「オマエ、ツヨイ、オレガ、アイテ」
そう言ってオーガが前に出た。穂が大剣のようにデカい槍を持っている。
オーガはその槍をブンブンと回した後、槍を構えて戦闘態勢になった。
「こりぁ強いぞアルマ」
「ああ、ゲンジロウの下に居たのは本当だろうな」
オーガの威圧を全身にビリビリと感じる。
そして、オーガの姿が消えた。
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