第3話 血まみれの姫

 岩山に到着し、通常ここからゴブリンの巣らしき洞穴を探すのだが、違和感のせいですぐに分かった。


「血の匂いだ」

 ガクソンが顔をしかめる。


 血の匂いが強い方へ向かうと、3体のゴブリンが斬られて死んでいた。


「豪快にやったなぁ。もしかして他の冒険者とクエストが被ったのか?」

 

 ニャルさんがそんなミスをするだろうか?


「とりあえず先に進もう。運が良ければボス・ゴブリンの一部をもらえるかも。それさえあれば、ここにはもう用はない」


「破壊はどうする?」

 ガクソンが難しそうな表情だ。


「もしクエストが被っているのなら目的は一緒のはずだ。違ったのならちゃんと説明すればなんとかなるだろう」


 そうして2人は洞窟のようなゴブリンの巣に入ると、戦慄を覚えた。


「これをやった冒険者は、きっとA級以上だろうな」

 ガクソンは、ゴブリンの死体を見ながら言った。


 どのゴブリンの死体にも共通点がある。それは真っ二つということ。

 並大抵の冒険者が、こんなこと出来るとは到底思えないやり方。


「なんでこんな強いのに、ゴブリン討伐のクエストなんてやってんだ?」


「ただの暇つぶしって可能性もあるな……。たまにストレス発散と小銭稼ぎでゴブリンを討伐する奴もいるからなあ」


「だとしたら運がいい……それなら今日は予定より早く帰れるかも」

 

 洞窟の中は、あちこち置かれている松明のおかげで視界も良好だった。

 勿論、歩く速さもあがる。……俺は早くA級に上がりたい。


「うっ、匂いが酷くなってきた」

 正直、我慢するしかない。何かが近い証拠だ。


 ゴブリンの巣は、結構広くて複雑に道が分かれている。

 しかし、松明の明かりと匂いが進むべき方向を教えてくれているようだった。


「それにしても血が酷い。まるでゴブリンを殺すのを楽しんでるみてぇだな」

 ガクソンが眉をひそめる。


「たしかに、この先にいる冒険者には警戒するべきだろうな」


 2人はゴブリンの生き残りの襲撃に警戒しながら進んでいたが、結局そんなことは無駄に終わった。


 洞窟の奥の開けた場所に到着すると、異様な光景が見えてきた。

 それは、100体以上はあるゴブリンの死体で出来た山。


「この巣には、こんなにもゴブリンが居たのか……」

 入口からここまでおそらく50体のゴブリンの死体があった。


 つまりこの巣には、150体以上はゴブリンが居たことになる。


 1人だったら苦戦しただろうな……。


「おいおいマジかよ……」

 ガクソンは、上の方を向いて驚いている様子だった。


 ガクソンの目線の先には、ゴブリンの死体に山。頂上には大きいサイズのゴブリンの死体。それは間違いなくボス・ゴブリンだ。


 驚いたのは、そのボス・ゴブリンの死体の上に人が居ることだ。


 全身にゴブリンの返り血まみれの女性が1人座っている。

 片手には酒樽を持ち豪快に酒を呑んでいた。


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