第167話 コラボ
~織原朔真視点~
僕の手を引いてくれたのがパウラちゃんだとすると、他の人達もおそらくブルーナイツのメンバーだ。
カミカさんと
そしてカミカさんと恋さんに残りのブルーナイツのメンバーを紹介しようとしたところで、蘭さんは僕に目を合わせた。
それを察したのかカミカさんは口を開く。
「あぁ、この子は気にしないで大丈夫だから……」
「まだデビューしてないラバラブの子とか?」
「いやぁ~、そんな、ような、感じ?」
「ひなみちゃんのお友達でこれからデビューするなら、今度コラボしようよ~」
もう、コラボしてんのよ。しかも薙鬼流を持ち上げた人が鷲見さんなら彼女に見出だされて今の僕があるようなものだ。
僕がどう返事をしたものかと思案していると蘭さんが言った。
「このメイド姿の馬鹿が薙鬼流ひなみでその馬鹿の同期がこの2人」
パウラちゃんとエミルさんを蘭さんが紹介する。エミルさんとはアーペックスの大会で一度相対したことがあるが配信中に話したことはない。
──この人と戦ったのか……
「んでぇ、このダサいファッションの──」
残るブルメンを紹介し終えるとカミカさんが言った。
「てかさ、新界さんとルブタンさん来てるの知ってる?」
「え~そうなの!?」
蘭さんと鷲見さん、霧声さんにエミルさんはこの2人と面識があるようだが、他の3期生や4期生の2人と薙鬼流とパウラちゃんは存在は知っているが全く面識がない。
「あとVユニのキリカと零夏も来てるって」
「マジで!?なんでそんなにストリーマー来てんの!?」
薙鬼流が言った。
「愛美先輩かな?」
それを聞いたパウラちゃんがエミルさんに訊いた。
「愛美先輩?」
「シロナガックスさんのことでしょ?」
「あ~!」
納得するパウラちゃんの横で霧声麻未さんが言った。
「え!?MANAMIさんもここの学校なんだっけ!?」
「あれ?知ってるもんだと思ってましたけど……」
薙鬼流の言葉に霧声さんは忘れていたことを思い出すかのように返事をする。
「…そう、だよね。かたりんの同級生で話題になってたもんね……」
自分の頭の中を整理するみたいに発言する霧声さんとは違って、来茉蘭さんははしゃいでいた。
「やばっ!MANAMIちゃんに会いたい!!」
FPS配信をする霧声さんや蘭さんはシロナガックスのことを勿論知っている。蘭さんに限っては美少女に目がないことで有名であるため、一目拝みたいと配信でも言っていた。
すると薙鬼流の同期であるエミルさんが言った。
「てことはこの前の田中カナタ杯のひなみのチームの内2人が同じ学校にいたってことになるよね?運命じゃん。てかルブタンさん来てるなら挨拶しなきゃ」
エミルさんは田中カナタ杯でルブタンさんと同じチームだったのを僕は思い出すが、冷や汗をかく。
──その先の質問はどうかしないでほしい……
霧声さんが言った。
「ひなみのチームってあと1人誰だっけ?」
僕は自分の願いがすぐに否定されたことに肩を落とす。
鷲見さんが答えた。
「エドヴァルドさんでしょ?」
ビクリと心臓が跳ねた。そんな僕には気付かずに鷲見さんは指を拝むように組みながら続けた。
「私の推しが今や世界的に有名になっちゃってさぁ!もう最高よ!!」
3期生のマリアさんがそれに反応する。
「あの声は反則だよねぇ。エッチすぎて最後まで話聞けないしぃ……」
「あれ?マリリンも推してたの?」
「推してますよぉ!!」
僕は下を向く。カミカさんと恋さんと薙鬼流の視線が刺さる。
ブルーナイツの3期生がデビューして以降、ブルーナイツのメンバーは男性Vチューバーと絡むのがご法度となっていた。話題にあげることすらあまりない為、3期生のマリアさんが僕を推してることを僕はおろか、同じブルメンの鷲見さん達も知らなかったようだ。
「寧ろカンナ先輩よりも早く知ったくらいですし!!」
「はぁ?古参アピだるいんだが」
そこに霧声麻未さんが入る。
「エドヴァルドさんっていうとやっぱりかたりんでしょ?かたりんもこの学校の生徒なんだし……てかこの学校にエドヴァルドさんとゆかりのある人たくさんいることになるよね」
「……」
もうその話題やめない?僕がそう思うと薙鬼流が僕の腕に絡み付きながら言った。
「エド先輩は誰にも渡しませんから!!コラボする時は私に声をかけてからにしてくださいね!?」
マリアさんが言った。
「はぁ!?なんでお前の許可がいるんだよ!!」
鷲見さんが続く。
「てかなんでその子の腕にしがみつきながら言うわけ?」
薙鬼流は僕の腕からパッと離れる。薙鬼流が答えあぐねていると麻未さんが言った。
「てかかたりんって本当にこの後LIVEするの?昨日まで名古屋でLIVEやってたし、今日は朝から撮影でしょ?」
麻未さんはスマホをいじりながら言った。おそらく音咲さんのSNSをチェックしながら発言したのだろう。その発言にカミカさんと恋さんが驚く。
「え!?」
「ん?」
僕は薙鬼流を睨んだ。薙鬼流は唇を尖らせて口笛を吹きながらそっぽを向く。
──コイツ言いやがったのか……
まぁ、別に言っても構わないのだけれど、カミカさんと音咲さんを会わせてはいけない気がしていたのだ。2人は音楽番組で会っているし、その前にもディスティニーシーでも会っている。僕の正体に音咲さんが勘づく可能性がある。
僕は黙り、鷲見さんがカミカさんと恋さんに音咲さんのゲリラLIVEについて説明した。
「──え~~!!ヤバッ!!絶対見る!!」
「あたしも見たい、何時からやるん?」
鷲見さんは薙鬼流の方を向きながら時間を確認した。
「16時30分だよね?」
薙鬼流は、はいと言って頷いた。
するとカミカさんは時計を見てまだ時間があることを確認する。
「じゃあ私達はこれからスマホの画面修理の模擬店行くから、その時また会おうね?」
「そんな模擬店あんの!?」
「え!?」
「ふぁっ!?」
「ふぉぉ……」
「は!?」
「なんですかそれ!?」
「どんな模擬店だよ!!」
「はい!?」
流石は『ブルーナイツ』所属のVチューバー、皆それぞれのリアクションをとった。
僕らはブルメン達と別れて、目的地へと向かった。
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