第165話 生まれ変わる
~織原朔真視点~
無事?2年A組の教室をあとにした僕は、再びカミカさんと
3年生の校舎へ入るとカミカさんはお化け屋敷を発見する。明るい廊下だが、その教室の前だけが異様に暗かった。
僕らはそこに入ることとなった。
「どうぞこちらへ……」
文化祭なのにテンションがやたら低い受付の3年生の男子学生。怖さを演出しているのだろう。その3年生の受付の人に案内され、中に入ると真っ暗な世界が広がる。
昔家族旅行で善光寺に行ったことがあった。
おそらくこの3年生の出し物であるお化け屋敷はそれをモチーフにしているのだろう。なるほどこのクラスは特進クラスで殆どが受験勉強の為、不参加だが、このお化け屋敷なら少人数で運営可能だ。
僕は暗闇の中、分析する。自分の前にいるはずのカミカさんはおろか自分の手や足も見えない。思わず光を求めてポケットにある自分のスマホを光らせたくなるがしかし、そのような行為は禁止されていた。
「めっちゃ恐くない?清水寺にあったよねこんなの?」
カミカさんの声が前から聞こえる。僕の後ろにいふ
不安を募らせて、壁にそって歩き、もう片方の手を前方に伸ばす。3年生の教室とはいえ、僕の教室と変わらない筈なのに、暗闇のせいでとても広い空間なのではないかと錯覚してしまう。すると行き止まりにぶち当たった。おそらく廊下から教室に入って窓際まで来たと予測される。そして窓際を沿って真っ直ぐ歩ける通路を見つけた。
その時、恐怖を煽るような音楽がかかった。
「ヤバいヤバい、これで驚かす人達とか来たら終わるんだけど!?」
前からカミカさんの怯えた声が聞こえる。確かにそうだと僕はカミカさんの言うことに賛同していると、教室の窓側の一番後ろに到着した。今度は廊下へ出る道筋となっていた。既にどのくらいの時間が経過しているのだろうか?何も見えないと時間の経過も曖昧になる。しかし僕らは歩いた。教室から入ってコの字型のルートを辿っていることになる。
廊下へ向かって歩くと微かに光が見えた。そしてカミカさんの後ろ姿も、僕は後ろを振り返って恋さんがついてきているかを確かめると、恋さんは普段と変わらない表情をしているのがわかる。しかしその恋さんの更に奥に、影がモゾモゾと蠢いているのが見えた。僕は後ろを見ながら前方へ進んでいると、その影の正体がわかった。なまはげのような鬼の面をした人が後ろから迫ってきている。
「うわっ!!」
僕の声に反応したカミカさんは後ろを振り向く。僕が驚いた存在にカミカさんも気付いたようだ。
「いやぁぁぁぁ!!!」
僕とカミカさんは真っ直ぐ走って廊下に出たその時、カミカさんが躓いて転んだ。そのカミカさんに躓いて僕も転ぶ。
「きゃぁぁぁ!!」
「うおっ!!!」
カミカさんにのしかかるような体勢となった僕は慌ててカミカさんの脇にずれる。
「ご、ごめんなさい!!」
「い、良いってことよ……」
僕らが廊下に両手をついているところを恋さんが悠々と廊下へ出てきた。なまはげの面を被っている3年生の肩に手を置いて一言告げる。
「面白かったよ」
「全然恐がってなかったっすよね?」
僕は立ち上がり、カミカさんに手を差しのべた。
「大丈夫ですか?」
僕の手をとってカミカさんも起き上がった。
「ま、まぁまぁ怖かったわね……あっ!!」
「ど、どうかしました?」
カミカさんは首からぶら下げていた自分のスマホに注目した。先程まで下敷きになっていたスマホだ。案の定スマホの画面がひび割れており、カミカさんのテンションが下がる。
なまはげの3年生が自分のせいだとあたふたしていると
「これ元々だから」
僕は言った。
「紛らわしいな!!」
「いやでもここのヒビが広がったような……」
スマホ画面に顔を近付けるカミカさんに文化祭の案内図を広げた
「向こうにスマホ画面の修理してる模擬店があるよ」
「どんな模擬店だよ!!」
僕らはその模擬店へと向かおうとすると廊下から声が聞こえてくる。
「せんぱ~~い!!」
この日、最も会いたくない奴の声が聞こえる。
僕は後ろを振り向くと、メイド姿をした薙鬼流ひなみが僕の腹に向かって全速力で走ってきた。そしていつものようにタックルを決められる。
天井を仰ぎながら、カミカさんと恋さんが驚きの表情をしているのが見えた。僕は背中を廊下について薙鬼流の重みを感じながら考える。
──この状況……なんて言い訳すれば良いんだ?
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