蛇神の加護と相棒の蛇で成り上がれ!
穂高稲穂
第1話 異色の子
無限に広がる宙(そら)。
幾多の星々が宝石のように煌めく。
とある星に宿る神が遠い星に生まれた子を見つめていた。
『適合する魂……見つけた。……我が祝福を授けよう』
巨大な星に巻き付く偉大な蛇の神に見つめられた子が産声を上げる。
生まれたときから体には蛇の鱗のような模様があって、皆は僕を気味悪がる。
そんな僕を忌み嫌って疎まれ、まともな仕事なんてさせてもらえず村の外に建てられた粗雑な小屋に一人で住んでいた。
ドンッ!
ドアが強く蹴られて開けられる。
「起きろ人もどき! 仕事だ!」
「は、はい!!」
床から起き上がり急いで家を出る。
僕がこの村で与えられた唯一の仕事。それは村人たちが便所でした糞尿の始末だ。
僕が村の中に入ると周囲に居た人達は顔を顰め口々に罵倒する。
「人もどき」
大人も子供も皆そんなふうに僕を呼ぶ。物心付いたときからそうで、それが当たり前だと思った。
地面だけを見て便所に向かう。頭を上げたら石が飛んでくるから、これも僕にとっては当たり前だ。
村の人々は僕に黒くて息苦しくなる心を向ける。
一つ目の便所に到着し、早速糞尿を組み上げる。
酷い悪臭の中、僕は素手で桶に組み入れる。
便所から糞尿を汲み取り、村の外にある肥溜めに捨てに行く。
二箇所、三箇所と掃除を終える頃には全身は悪臭と汚物に塗れる。こんな僕に誰も近づこうとはしない。
「ほらよ」
男は僕に小さな芋を投げる。
「臭いんだよ!! さっさと行けよ!!」
「あぅ……」
男の子に石を投げられた。
僕は芋を拾ってそそくさとその場から離れた。
仕事の対価として与えやれるのは一日1個の小さな芋のみ。
当然それ一個で腹は膨れる筈もなく、足りない分は森に入って食べれる雑草を取ってくるしかない。
泥が付いたままの生の芋を齧って森へと向かう。
目につく雑草を手当り次第毟っては食べる。
お腹が満たされる頃には辺りは薄暗くなっていて、僕は急いで家に帰った。
テーブルも椅子も何もない。
隙間だらけで多少の雨風を凌げるぐらいの家だけど、僕にとっては安心できて居心地がいい場所だ。
蹴られて外れたボロボロのドアをもとに戻すと家の中は暗くなる。家の中は隙間から照らされる月明かりだけ。与えられたこの場所が僕の居場所だ。
僕は一人、地面に寝っ転がって蹲った。
翌日も叩き起こされて急いで便所掃除に取り掛かる。
その日も仕事を終えて、小さな芋を貰って空腹を満たすために森に入った。
ガサガサと茂みが揺れる音がして何かが近づいてくる。
僕は手にしている雑草を捨てて息を潜めて木陰に隠れた。茂みから出てきたのは、この森に住んでいるヤツ。
僕みたいに全身が汚れていて悪臭を放つそいつはキョロキョロと辺りを見回す。
何度も襲われたことがあって、殺されかけたこともある。
必死に気配を消して立ち去るのを待つ。
「グァ!」
声を上げてそいつはどこかへ去っていった。
僕はホッと胸をなでおろして木に凭れて力が抜けて地面に座る。
まだこの近くにあの化け物がいるから、これ以上長居は出来ない。
まだ空腹ではあるけど、気配を押し殺して慎重にその場から離れ、家に帰った。
グ~とお腹がなるが、我慢して蹲り目を瞑った。
それから数日、森の中で雑草を食べていると、急に心がざわざわして落ち着かない。
「……なに?」
自分の胸に手を当てて、言いようのない不安に困惑する。
わからない。わからないけどなんか怖いという感情がどんどんと膨れ上がる。
僕は偶然そこにあった木のうろに入って膝を抱えて息を潜めた。
心の奥底から湧き上がる不安と恐怖にガタガタと体が震える。
日はどんどん暮れていき、ついには真っ暗になった。僕は不安と恐怖の心労でいつの間にか眠っていた。
鳥のさえずりが聞こえて目を覚ますとすっかり朝になっていた。
「い、急いで帰らないと!!」
便所掃除をしないと怒られると思い急いでうろから出る。
昨日感じた胸のざわめきと不安と恐怖はもう感じない。
僕は村に向かって走ると、村に近づくにつれて煙と血の匂い漂ってくる。
「……なんだろう?」
森を抜けると匂いはより強まり、村からいくつも黒煙が上っているのが見えた。
駆け足で村に向かい、入り口に到着してその光景に僕は愕然とした。
家は燃やされていて、沢山の男の人が血を流して倒れている。
僕はこの光景に驚きはするものの、悲しいという感情は沸かなかった。
ほぼすべての家が焼かれて燻っている中、幸いなことに僕の家は手つかずで無事だった。
翌朝、目を覚まして勢いよく起き上がる。
便所掃除をしなきゃと急いで家を出て村に向かった。
地面に転がる死体を見て直ぐにハッとする
「そうだ、もう便所掃除しなくていいんだ……。これからどうしたら良いんだろう」
僕は生き方を何も知らない。
これからどうしたら良いのかなんてわからない。
食べるものが無いか探してみたけど略奪されたのだろう何もなかった。畑も荒らされて酷い有様だ。
改めて死体の状況を確認してみると、瘡痕が目立つ。
そして、女性や子供の死体が無いことに気がついた。
キュルルルとお腹が鳴る。
村に食べ物が無いのならいつもどおり森で雑草を食べるしかない。死体をそのままに僕は森へと向かった。
いつもの食事場でお腹を満たしていると何かが足に当たる。
雑草を食べるのに夢中で気が付かなかったけど、いつの間にか小さな黒蛇が僕のそばにいて、僕を見上げていた。
真っ赤な目にテカテカとした真っ黒な鱗。僕はその蛇に見惚れていた。
不思議とその蛇とは心が通じ合うような感覚に包まれる。
黒い蛇は口先からチロチロと舌を出してなんだか可愛い。
人差し指で黒い蛇の頭を撫でると抵抗せず受け入れてくれる。
黒蛇は指に巻き付くとスルスルと腕を伝って登ってきた。
そして、僕の肩の上に来てとぐろを巻く。
「僕と一緒に居てくれるの?」
小さな黒い蛇は言葉を理解しているのか、頭を上げてコクコクと頷いた。
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