【意味怖】タバコ休憩

深夜の喫茶店で一服しながら窓の外を見ていた。


暗闇に浮かび上がる人影が気になったが、気のせいだろう


そう思っていた。






だが、喫茶店を出ると、同じ人影が近づいてくる。


タバコの火でその顔が明らかになり、私は凍りついた。


それは、数年前に亡くなった親友の姿だった。






彼は微笑みながら言った


『タバコ休憩は一人じゃつまらんだろう』




「そ…そんなことないさ。しかしどうしたんだ」




『まぁまぁ』




そういうと元…親友は胸ポケットからお気に入りのタバコの箱を取りだした。


一本口に含むと、火を付けろよとばかりに俺のライターを指さす。






ギクリとしたが、恐る恐る彼のタバコに火をつける。






『ふぅ~、やっぱいいなタバコ休憩


しかし…量増えたんじゃないか?


部長みたいになるぞ』






「心配ありがとよ…。まぁ俺はタバコで死んだって後悔はねーけどな」






『俺もそう思っていたさ。だが、死んじまうとやっぱり…な


ところで部長の奥さんは元気か』






「元気だよ、見てないのか」






『実物は見ていない』






「…ん


お前なんで部長が結婚した事を知ってるんだ。


そして、部長が死んだ事も…?


結婚する前にお前は死んだろ」






『スゥー…フゥー


聞いたからさ、部長にな』






「なんだと?部長はタバコを吸ってるときに急に倒れて…


今はもうこの世にいないんだぞ。」






『写真も見せてもらったからな。綺麗になってたな、あいつ―


俺の…婚約者』






「まさか、全て知ってるのか」






『全て?はて…なんの事やら』






「全部部長の指示だったんだ!」






『どっちでもいいよ、部長もそう言ってたし


あ、お前もうタバコ無いじゃん。これ吸えよ


俺も予備用でもう一本残してあるんだ』






「嫌だ!いらない!もうタバコはやめる!」






必死で逃げようとしたが


無理やり口にタバコを含まされると


タバコとは一味違う苦さが口の中に広がり


意識を失い、その後二度と目覚めることは無かった。




『タバコで死んでも後悔しないんだろ?』






スゥゥゥゥ…フゥーーー…!






『やっぱ仕事の後のタバコ休憩はいいわぁ』






そういうと彼は煙と共に天に昇って行った。

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