【意味怖】お盆の遊泳

「盆の時期は泳いじゃなんねぇ」






俺が子供の頃から、爺さんが口を酸っぱくして言っている。


久々に帰ってきたんだから、ちょっとくらい多めに見ろよ。






この村はあの世から一番近い所にある村で、お盆には海から祖先の霊が戻ってくるらしい。


海はめちゃくちゃ綺麗で、いつも人でごった返しているが


お盆のこの時期は、スっと人がいなくなり、南の島のリゾートビーチと化す。






昔から、誰もいないビーチを貸し切って使いたかった。


久々に戻ってきたんだからちょっとくらい。






そうして、俺は海に飛び込んだ。


さいっこー--!!


誰もいない透きとった海、真っ白な砂浜


小さいころから海に親しんだ俺がおぼれる訳がない。




その時、急に足を引っ張られた。


な・・・んだと!?






必死でもがくが海の上に戻れない。


爺さん・・・すまん。




そう思った瞬間、爺さんと村の大人2人がボートに乗って俺を引き上げに来てくれた。




「ばっかもんが!!!」




はぁ・・・はぁ・・・、ご、ごめん。




「だから言ったろうが、さぁ、清めの儀式をしろ」






清めの儀式、昔何度か見たことがある。


海で溺れかかった時には、海に来た時の靴を海に沈め


溺れさせようとした霊に、引っ張り込んだと思いこませる儀式らしい。






爺さんも、船にいた大人二人は、さっと靴を脱ぎ、投げ込み海に沈め手を合わせた。


俺もはいてきたサンダルをさっと脱ぎ、すぐに投げ込み、海の底に沈め手を合わせた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る