#71 女髪結と床屋の職人技
昭和前期の話 ほぼ母からの聞き書きです
床屋というのは 主に男性と子供の髪を扱う店です
今は理髪店 いや もっとおしゃれな言い方があるのかな
両親は私に〝お
これ
頭の上の方を丸くと左右の耳の前に毛束を残して 後は剃る髪型
いずめ人形の髪型です ますます分からない?
何しろ 首が座ったばかりの赤ん坊の頭や首筋を剃刀で剃るので
私が生まれた昭和20年代ですら その髪型をできる人は
一人しか 見つからなかったといいます
私は母の膝に抱かれて一本刃の剃刀でおとなしく剃ってもらった
と聞いています 母が認知症になってアルバム全部捨てちゃったので
その 名人芸をお見せできないのが残念です
女髪結の仕事は 日本髪の結髪です もちろんオンタイムでは知りません
母が子供の頃 料亭の女将だった私の曾祖母にあたる人が定期的に
家に髪結いを呼んで 髪を結ってもらった時の話です
とても詳しく 何度も話していたので子供の頃の母が食い入るように
その仕事を見ていた事が想像されます
まず客は縁側に座り 着物の衿に日本手ぬぐいをかけてカバーします
縁側には火を起こした火鉢にやかんを乗せて湯を沸かし その横には
水の入ったやかんも用意されます(これはその家の女中さんの仕事)
髪結いは木製のおかもちのような道具入れを下げて来て それを広げ
客の日本髪のもとどりを切り 荒い櫛で解きます
まげには形をキープするために〝しゃぐま〟というチリチリの入れ毛が
入っているので まずそれを取り除き
手桶にギリギリの熱さに調整した湯を作って それに布を浸して
絞っては拭きを繰り返して びんつけ油を取ります
柘植の櫛の歯の幅は荒いものから毛筋1本位の細かいものまで
次々取り換えて 髪についた汚れやふけを漉き取り
次に熱い湯で絞った布で 頭の地肌を拭いて行きます
それは 髪一筋分ずつ分け目をずらしては拭き を延々と繰り返す
作業だったそうです
湯は水を足し続け 水は女中さんが何度も運んだそうです
これだから客はシャンプーなしで数日は 結ったままの髪で過ごせる訳です
今 客の地毛で日本髪を結える美容師さんはどのくらいいるのでしょうか
もうすぐ傘寿の叔母が若い頃でも お正月だけ美容院の先生のお母さんが
登場していた位で 他の美容師さんは〝新日本髪〟というもっと簡単で
ピンなどで止める髪しか結ってなかったです
まあ 結ってもらったら最後 客も三が日は 箱枕という
耳の下あたりだけに当たる高い枕で寝てましたから
台形(跳び箱の形)の朱塗りの木の台の上に筒形の布に
きっちり詰め物をした〝枕?〟が乗っているまくら
ばあちゃんちにありました
今の人(というか私だって)には 到底無理でしょうね
祖母も戦争が始まった頃の集合写真では
白い割烹着を付け〝国防婦人会〟と書かれた たすきを斜め掛けて
写っていましたから 母の女学校時代はそれが普通だったんでしょうね
ただし 祖母は髪がくせ毛で柔らかく細かったので難儀だった
そうです 写真を見ても上にあげた前髪が軽く傾いてました
個人の毛質に合わせたスタイルではなかったから 困った人も多かった
事でしょうね
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