第4話 さんかく山には銃弾があった

小学校の頃 新宿区にさんかく山と言われる場所があった

それは4階建の建物の高さくらいの赤土の〝山〟で

(後に聞いた話では日本軍が作った土塁の一部らしい)


その三階位の位置には横に大きくえぐったような穴があって

下から 勢いをつけてそこまで登り そこから滑り降りるのが

一番普通の遊び方だった 

斜度はかなり急で 時代劇や戦争映画でザコ兵が取り付いては

ずり落ちていくあの感じで 小さいうちは到底穴まで届かない

その困難さが面白いし 登れた時の達成感も半端なくて

当時はメチャクチャ子供を引きつける遊び場だった


この場所には もう一つ言われていた事があって

ここは戦時中 射撃訓練の的になっていた

だからこの山の土の中には大量の銃弾が埋まっている と

確かに 下の部分は踏み固められ滑り落ちられて 

壁を塗ったようになっていたが

上の方には指が入る程の穴が一面にあいていた

それが 弾が打ち込まれた後なのか 

戦後 鉄くずを求めて掘り返した後なのかはわからない

けれど

ある日の朝礼で 別の小学校の生徒が さんかく山で拾った弾を

ズボンのポケットに入れていたらそれが不発弾で暴発したらしい

あそこには 近づかないように と言われた事があるから

掘った事はないが 銃弾が埋まっていたのはホントだったらしい


そんな事言われたって こんな面白い遊び場は他にないからね

中学に入って「泥遊びはしないわ」となるまで 遊びに行ってたが

その後 さんかく山は立入禁止になった


大人になってから行ってみたら あたりはすっかり開発が進んでいて

そもそも さんかく山が どこにあったかも分からなくなっていた


さんかく山も 泥で塗りこめたような服で遊んでた子供たちも

まるで 夢のように昭和と共に消えてしまっていた

今時は あんな風に遊べと言っても子供が拒否するんだろけどさ

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