身近で事件が起きた

 私が仕事を終えて家へ帰っているとパトカーが何台もサイレンを鳴らしながら走っていた。


 いったいなにがあったのか?


 パトカーは私の帰ろうとしているマンションのあるほうへと次々と向かっていく。どうやら私の家の近くのようだ。


 案の定、パトカーはマンションのすぐ前のにある公園の入り口付近で止まり、警察らしき人たちが次々と公園のなかへと入っていった。


 その頃には公園の前には人だかりができている。


 公園は入り口に黄色いテープで規制せんが張られ封印された。外から中をのぞくとたすうの警察官たちがおり、だれかを押さえ込んでいる姿が見える。どうやら、その人物が何らかの事件を起こした犯人のようだ。


 いったいこの公園で何が起こったのだろうか?


 私は近くにいた人に尋ねた。



 すると公園で麻薬の取引があるという通報を受けて警察がやってきたそうだ。こんな小さな町にある公園でそんなことが行われていたとは信じられないことだった。だけど、よく考えたら小さな普段はだれも立ち寄らない公園だからこそ、麻薬の売買がしやすかったということなのかもしれない。


 やがて警察に捕まった麻薬の売人たちが公園から出てくる。


 売人は三人で、いずれも男のようだがみんな俯いていたから顔は見えない。


 だが、私の前を通りすぎようとしたとき、その一人が顔をあげた。


 その姿に私は声をあげそうになった。相手も驚いた顔をしている。やがて顔を伏せた彼は警察車両に乗せられた。


 パトカーたちは麻薬の売人たちをのせて走り去っていく。その後、野次馬たちは何事もなかったかのように公園から去っていく。



 私もまたそそくさと自分の暮らすアパートに帰ると、あわてて扉をしめた。


 同時に私の足が震え、そのまま座り込んでしまった。


 私と目があった男は私の婚約者だったのだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る