第3話 恐怖
「お疲れさまでしたぁ」
後片付けを終え最後の作業員達が、乗った送迎車を見送った青年は、仮設の事務所に戻る。
中では監督が、今日の業務報告と明日の予定をノートパソコンに打ち込んでいた。青年は横からパソコンを覗きながら監督に声を掛ける。
「今日は散々でしたね。明日十時までには、新しい掘削機を届けると本社から連絡ありました」
「うん‥御苦労さん。コーヒー入っているぞ」
「いただきます。アチッ‥」
「拝み屋…来ねえな。どうだ…終わったら飲み屋で一杯」
「いいですねえ。どこ行きます」
同意の返事を返しまだ熱いコーヒーを啜りながら青年はふと窓の外に視線を向けた。
ライトに照らされ闇に浮かぶ発掘品が見える。
「あれっ」突然・窓に駆け寄る青年の驚きの声にパソコンの画面より顔を上げた監督が見たものは、窓ガラスを突き破り飛び込んで来た黒い大きな腕と格闘する青年だった。
反射的に壁に立て掛けた備品のスコップを握り窓際に駆け寄ったが、既に青年は外に引きずり出され闇へと消えていた。
「おいっ…どうした…おいっ」
脅えながら窓の外に呼びかける監督に応えたのは、耳を覆う絶叫そして恐怖だった。
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