第2話
崩れたビルの瓦礫が折り重なり、コンクリートと鉄骨で出来た荒道を、4人の機体が進んでいく。
他の冒険者がまだ来ていない場所に向かっているため、彼らの進む道はどこも瓦礫で塞がっている。
基本的に大きな瓦礫を避けて行くが、迂回もできない時には機体に搭載されているブースターを吹かして、跳躍して飛び越える。
だが燃料の消耗を抑えるため、それは最後の手段だ。
多くの場合、こういった瓦礫の相手はルガの仕事になる。
緑色に塗装されたルガの機体は、剣や銃の代わりに大型の丸鋸やドリルなどの工具を装備している。
崩れない場所に辺りをつけ、コンクリートをバターのように切り裂いて、魔法のように道を作る
『……よし、この辺りをキャンプにしよう』
『『『了解』』』
ロッグの通信に、ネク、ベリ、ルガが応答する。
比較的崩壊の少ないビルの中の、広間になっている部分にまで移動すると、ベリとルガが回収物資などが入ったコンテナを降ろした。
ここを一時的な拠点とするため、遮蔽などを用意しておくのもルガの仕事になる。
その間に、ロッグとネクは周囲を警戒していた。
『モンスター、ドローン……なし』
『こちらも、居ません』
『さて、めぼしいものが見つかるといいけどな。ネク、いくぞ』
『はい!』
ベリの言葉に各々が同意する。
ロッグは一人で、隣のビルの中へと歩を進めていく。
ネクはベリと組んで、別のビルの中に入り探索を始めた。
通路を歩き、瓦礫をどかし、部屋の中を覗く。
そうやって進んでいくと拉げたドアを発見する。
『こことか良さそうだな。ドアが開かないってことは中身が無事だってことだ』
『なるほど……でも、どうするんです?』
『マスターキーを使うのさ……このメイスでな』
歪んだ金属製のドアを、ベリが引き抜いたメイスで殴りつける。
何度か叩くとドアが吹き飛び、砂埃が舞った。
『……ヒュゥ! 当たりだぜ!』
『わ……!』
ベリが口笛を吹き、ネクが言葉にならない声を上げる。
手つかずの部屋の中には、旧世代のコンピュータやサーバなどの機械類が放置されていた。
埃は被っており、そのまま使えるとは到底思えないが、しかしこういった電子機器は貴重品だ。
そこそこの数がある。これだけでも、今回の仕事の儲けは十二分にでるだろう。
『すごいですね、ベリさん!』
『っしゃ!全部持ってくぞ。ロッグ、ルガ、ちょっと来てくれ!コンピュータがゴロゴロしてるぜ』
『でかした、こちらの部屋の調査が終わり次第すぐに向かう』
『わかった』
ベリがご機嫌なまま通信をしている間に、ネクは目を輝かせて部屋の中を見回していた。
宝の山ではある。これだけあれば、一般的な街民なら暫くは遊んでいられるだけの額になるだろう。
しかし、ネクは金銭的なそれよりも、昔の文明の一端を見たような気がして、気分が高揚していた。
昔の人間は、ここで、どういったことをしていたのだろうと、思いを馳せる。
感じ入ったように周囲を見渡すネクを見て、ベリは苦笑していた。
宝の山は逃げない、多少は妄想に浸る時間があったっていいだろう、そう思っていた。
『……ルガは待機しろ。ベリ、ネク、こちらに来い。戦闘態勢で、だ。』
が、ロッグからの通信でその思いは吹き飛ぶ。
普段から冷静かつ真面目なロッグだが、しかし通信には緊張の色がにじんでいる。
『モンスターを見つけた』
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