第482話 いきなり!オーストラリア決戦伝説
えー、いきなりですが!
私は今オーストラリアはシドニー上空に来ていてですね。
ここを支配する大魔将、ジーヤ・シックスと戦うところです!
空の上だけど、もみじちゃんが展開した空飛ぶピタパンがあるから安心。
私は攻撃だけに専念できるっていう寸法ですね。
「いやー、しかし驚きましたねー。オーストラリアが陥落寸前だったとは」
※『いきなり説明セリフが始まったぞ!』もんじゃ『実際、はづきっちや大罪勢が関わってない地域は大魔将に対抗する手段がないからな』『あ、でもアメリカは解放の女神像が動き出してジーヤを叩き出したんだろ?』『あれも実質はづきっちだからなw』『追い出されたジーヤがカナダに逃げて、そこを丸ごとダンジョン化してしまった』『あー、人間とダンジョンは共存できる! って言ってた国かあ』『全部ダンジョンになることで共存はしてるのかも知れない……』『ちなみに追いかけていった解放の女神、通称メカはづきっちがその場でジーヤを粉砕したぞ』『メカwwww』
今日のコメント欄は賑やかだなあ。
8月も終わりに差し掛かった頃、オーストラリアに住むお前らからのヘルプコールを受けて出発した私なのです。
今回はもう、遠征というものではなく!
マウント・オーガスタとエアーズロックによって、なんか不思議な力が働いてダンジョン化と戦えていたオーストラリア。
だけど、よそから来た魔法使いが「守るべきは都市です!!」とか言って霊的なパワー? とか言うのをシドニーに集めてしまったら、一気に全土が急速にダンジョン化したんだそうで。
「我々は抗議したんですが、まあ聞く耳を持たなくて。その結果がこれですよ。力が集まる場所には理由があるというのに。だが安心して下さい。シドニーが陥落した後で、我らの象徴は再び力を取り戻すでしょう」
私の隣に、アボリジニ系配信者の人がいる。
ジュエンさんと言う、なぜか超能力を使う系の人なのだ。
浅黒い肌の男の人で、笑うと歯が真っ白。
「でもシドニーが落ちた後だと犠牲者がすっごいのでは?」
「あ、それもそうですね。リスナーが減って大変です。でははづきさん、私がジーヤに宣戦布告して来ます」
そう告げると、ジュエンさんがビシッとポーズを決めた。
彼の足元から光の粒がたくさん湧き上がってきたかと思うと、ジュエンさんの姿が消える。
「¿De verdad? テレポーテーション本当に使ったぜ!!」
「オカルトだオカルト! 科学的じゃない!」
わあわあ騒ぐホセ&パンチョだけど、「パンチョの分身してサッカーするやつはオカルトを超えた良く分からないサムシングだと思うなあ」と私が言ったら。
「そこはセニョリータの言う通りだぜ……」
※『はづきっちの前だと素直なんだよなあ』『眷属らしいからな』『濃い眷属だなあ』『で、こっちのジュエンって配信者はどうなの?』もんじゃ『やはり眷属判定じゃないか?』『やっぱり……w』『風変わりなのばかりが集まってくるぞ』『きら星はづき軍団はあまりにも濃いw』
そんな軍団はありませえん!
ということで、ぐんぐん進むピタパン。
もみじちゃんはこれの制御に力を使ってるので、雑談をする余裕はあんまりないのだ。
「さすがにうちも、野球場くらい広いピタを出すの初めてなんでー」
「がんばれ! がんばれ!」
※『はづきっちが後ろでハートマークがついてそうな声援を送ってる!』おこのみ『この声援も心の声で聞けばまたセンシティブ……』たこやき『後日ショートで切り抜くから楽しみにしててね』『マ!?』『できる男』『公式切り抜き師頼むぜ!』『あっ、後ろでホセ&パンチョが演奏を始めやがったw!』『すげえ上手いし聴き応えあるんだけど言わせてくれ、うるせえw!!』『今は静かにしててくれw!!』
大変賑やかな中、私たちが近づいていくのはシドニーの中心部。
そこに、吹き上がる真っ青の光の束があって、頂点にジーヤ・シックスがいる。
周囲に無数の銃を浮かべた老人という感じの見た目で、射撃しまくり。宣戦布告しに行ったジュエンさんは瞬間移動を連続しながら回避している。
頑張ってるなー。
「おーい! 来たよー!」
ジュエンさんは頷くと、シュンっと消えて私の隣にまた現れた。
おっ、結構怪我してるじゃないですか。
「場を温めておきましたよ。やつは焦っています。さすがはづきさん、大魔将すらあなたを恐れています。やつを叩き潰し、あの悪魔どもと、都市さえ守ればいいと考えた権威主義者どもを分からせてやってください」
「かしこまり~」
ジーヤの無数の銃がこっちを向いた。
「ホ! 俺とやり合うのかい? ガンってのは数じゃない……情熱の量で勝負するもんだ!」
ホセが駆け出しながら、ソンブレロに仕込んだエアガンを展開する。
あと、ギターケースに仕込んだスポンジバズーカ。
日本の法律に合わせて、全部安全なおもちゃになってますねー。
でも、配信者の実力は本物を使ったか、おもちゃを使ったかは関係ないのだ!
ホセのコメント欄にラテンアメリカのリスナーが結集して、大盛りあがり。
ジーヤが放つ弾丸の雨と、ホセが放つBB弾とスポンジの雨が正面からぶつかりあう!
拮抗してますねー。
ジュエンさんがものすごく驚いていらっしゃる。
「なんですかね、これ……。私は夢でも見ているんでしょうか」
「日本のトップクラスの配信者は武器がスポンジライフルだったりするんで普通ですねー」
兄はBB弾を発射するエアガンだし。
「そして私はゴボウで」
「セニョリータ、道は切り開くぜ! あんたがフォワードだ!」
パンチョが駆け出した。
分身した彼らが、全員でドリブルからのドライブシュートを連発し始める。
無尽蔵サッカーボール~!
「オ、オカルト……!!」
ジュエンさんがものすごく驚いていらっしゃる。
「なんですかね、これ」
「分かりません」
私はそう答えてから、ゴボウを抜いて小走りに動き出した。
『きら星はづき!! 速い、速すぎる……!! どうしてここに一瞬で到達……!!』
「じゃあ倒しますね」
ホセとパンチョのアタックで、私まで弾丸は一発も漏れてこないのだ。
優秀~。
なので、サッと駆け寄ってゴボウでコツンと叩いた。
『ウグワーッ!!!!!!!!』
ジーヤ・シックスの頭頂部から、乗っかっている光の束まで一瞬で一直線に亀裂が走った。
で、パカーンッと真っ二つに割れる。
『も、申し訳ございませんマロン・グ』
「あちょ」
『あぁ~』
横から叩いたら、ピチューンと消えてしまった。
「断末魔も許さねえぜ!!」
「ジーヤに一切の主張も見せ場もなし! 恐ろしいぜセニョリータ!」
ホセがギターをかき鳴らし、パンチョが11人で踊る。
※『実家に帰ってきたかのような安心感』『大魔将を鎧袖一触なのよw』『居場所が知れればRTAだよなあ……』『しかしずっとホセ&パンチョが賑やかだったなw』
「これほどとは……。確かにあなたこそが、人類の希望です。中国、オーストラリア、日本、イギリス、インド、アメリカで大魔将は倒された。ロシアは大魔将によって支配されたが、各国の配信者たちが急行しているはずです」
「うんうん、頑張って欲しいものです」
「はづきさん、これはもしや……最後の戦いが近いということではないでしょうか」
「あ、はい。秋ごろには終わりです」
私が宣言したら、ジュエンさんが目を白黒させるのだった。
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