第479話 せっかくだから新曲も流す伝説

 ぼたんちゃんが、シュノーケルを伸ばしてスハースハー呼吸しつつ戦ってますねえ。

 たまに水上に出てきて、


「これは色っぽくないのでは?」


※『うーん微妙w』『ぼた姉らしいっちゃあらしい』『ちょいちょいポンだもんな』


「なんですって」


 とかコメント欄とやり取りしてる。

 なお、その間にも水中には彼女の鱗粉みたいなものがばらまかれて、あちこちでボンボン爆発しているのだ。


 トラップ仕掛ける型配信者、ぼたんちゃん!


「お手伝いしましょうか」


「あらはづきちゃん! ありがたいけど、はづきちゃんじゃ威力が高すぎてプールが真っ二つじゃないかな」


「それもそうか……」


 ということで、ぼたんちゃんにお任せするのだった。

 さて、では手が空いた私はどうしたらいいのか。


「ユーシャちゃんを見に行きましょう。ただ、移動するだけというのもあれなので……。イノシカチョウが出した新しい曲をここに流します。Aフォーン」


 Aフォンが私の呼びかけに応えて、配信画面の右下にワイプ画像を出した。

 割と大きめだけど、MVをきちんと見せるためなので仕方ない。


 廃墟みたいなところで歌って踊る三人の映像が流れてますねえ。


※『イノシカチョウもビッグになったなあ』『大したもんだ……』『デビューして二年足らずだとは思えない貫禄』


 ほんとにねー。

 でも私からすると、一年ってかなり長いように思うんだけど。


※『しかしこの配信、小走りで移動するはづきっちの後ろ姿を堪能できる』『水着かわいい』おこのみ『ナイスお尻』


「センシティブの香りがする……」


※『気のせいです気のせい』『拙者らははづきっちを見守る会の会員ですぞ』おこのみ『エチチスイッチ・オフ! 健全!』


 コメント欄の男子たちが、こぞってそっぽを向いて口笛を吹いてる気がする!

 まあ、良しとしましょう。


 私はイノシカチョウの曲とともに、勇者パーティが活躍しているところへ……。

 あっ、プールサイドにもモンスターが出てるんで、それは片っ端からチョップで倒してますよ!


※『おお……! オーガの巨体がチョップでくの字に折れ曲がった!』『岩石の怪獣みたいなのがチョップで唐竹割りになったぞ!』『はづきっちのチョップが止まらねえ』もんじゃ『何気に雑魚狩りだと、はづきっちはよくチョップで敵を仕留めてるんだ。使用率は実はゴボウよりもチョップの方が高い』『な、なんだってー!!』


 なんだってー!!

 私、そんなにチョップを多用してたかなあ……。

 あっ、よく使ってたわ。


 何も用意しなくていいし、ていっとか言って繰り出せばそれっぽく見えるから便利なんだよね。

 まあ、ここはチョップで切り抜けていきましょう。


※『屍山血河を作り上げながら突き進むはづきっち!』『助けられた人たちからの声援も聞こえますなあ』『振り返って手を振ったりするサービスするからあんま進まないのよ』


「あっ、ちょっと向こうでユーシャちゃんの攻撃の光が!」


※『終わったか……』『ちょっと間に合わなかったね』『だけど我々ははづきっちの水着を堪能できたから満足だ……』


「諦めるにはまだ早い! 御覧ください! えっと、なんか向こうの山みたいな形になったウォータスライダーを覆い隠さんばかりの巨体が! 大きいモンスター!」


※『シーサーペントだ!』『プールの水で出来た巨大ウミヘビだな!』もんじゃ『ということは……このダンジョンそのものがシーサーペントの体だった!?』


「な、なんだってー!!」


 もんじゃの考察を読み上げてから、私は驚愕のリアクションをした。

 いちいちその度に振り返るのだけど、配信にもメリハリが出て良い。


 ユーシャちゃんの必殺攻撃を受けたシーサーペントが傾ぐ。

 で、勇者パーティの一斉攻撃だ。


 タリサがウォータースライダーを逆に駆け上がりながら、連射する。

 モリトン&ゼルガーコンビは高く跳躍して、シーサーペントの頭の上から。


 シェリーはたくさんスポンジみたいなのを召喚してる。

 そっか、シーサーペントの水分を吸わせて動きを鈍らせるのね。


「勇者パーティの戦い方は知的だなあ。あっ、タリサのヒョウ柄ビキニかわいいですねえー。体も鍛えられてて見栄えがします! モリトンくんは普通のトランクスだ。馬の柄? ゼルガーくんはあれ全裸じゃないかな」


※『ケンタウロスに水着は難しいでしょw』『しゃあない』『女子ケンタウロスは胸だけ水着つけてたぞ』


 この辺のセンシティブ問題は今後色々考えられるようになるかと思われます!


「スポンジたちに担がれて騎馬戦してるシェリーは、銀色の紐なしワンピですね! キュート&セクシィ~。あ、スパイスちゃんもいる。ピンクと黒のビキニがかわいいですねえ。きゅっとちっちゃくてコケティッシュな感じが」


※『むちゃくちゃかわいいおじさん……』『アバターの下はどうなっているんだ』『考えるんじゃない! スパイスちゃんは幼女だ!』『シェリーの正統派なかっこかわいさを見て落ち着こう』


 大変に見どころ満載な勇者パーティ。

 そこに、カラフル水着なホセ&パンチョが参戦し、堪らずシーサーペントが逃げ出そうとする。

 だが、プールの水に逃げられては大変。


「ベルっちー!」


『ほいほい!』


 呼びかけに応えて一瞬で戻ってきたベルっちと合体し、彼女にコントロールを渡してチェンジ!


『ベルゼブブ、フライングクロスチョーップ!』


 腕をばってんの形にしたベルっちがシーサーペントに突撃し、その胴体を粉砕した。

 水だろうがなんだろうが、粉砕したったら粉砕したのだ。


 で、ゴゴゴゴゴ、っと崩れていくシーサーペントに攻撃が集中!


 周囲のダンジョン化がどんどん解けていくのだった。


「いやあー、お祭りみたいなダンジョンでしたねー」


※『水着祭りだった』『今年は賑やかだったなあ』『あっ、売店の人たちが戻ってきて商売を再開してる!』『たくましいな……』『このプールの売店、歩合制でボーナスが出るらしいから売るほど給料良くなるって』『それで……』


「あっ、じゃあ私は早速かき氷を買いに……」


※『はづきっちーw!』『配信中w!!』『あーっ、ベルっちと二人並んで走っていってしまった!』『カロリー補給をするのかね?』


 私達が放置したAフォン、ベルっちと二人でかき氷をもりもり食べ、頭がキーンとして同時に「うーわー」とか言ってる姿をバッチリ配信されてしまっていたのだった。


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