第466話 絶景・魔将大集合伝説
本日はですね、桂林市に来てます。
川と山が組み合わさった、なんか絶景のところですね!
南部なんで拠点にしてる福州から近かったんだけど、空飛ぶキッチンカーで北上してたものでついつい見過ごしていたのだ。
あっ、黒竜江省を解放したので、北方まで一直線はもうダンジョンじゃない。
「じゃあ張り切って、絶景の土地で配信行ってみよう!」
おーっ!と盛り上がる、キッチンカーのスタッフなのだった。
キッチンカー、主に私のためのご飯を作るのでキッチンカー。
ついでにカナンさんもご飯を食べる。
そしてスタッフは全員、財閥から派遣された一流シェフにハイエルフ、仙人。
錚々たるメンバーだ……!!
「青椒肉絲弁当楽しみー」
「完成次第Aフォンを通じて送りますね」
「よろしくお願いしまーす!」
ということで、私とカナンさんは桂林市に降下するのだ。
遠く離れた内陸部では、もみじちゃんが現地のスタッフと合流して活躍してるみたいだし。
バングラッド氏も支援してるから、勝負は順調な感じ。
彼女はダンジョンを塗り替えて、パン屋さんをどんどん広げていくから、下手な魔将だと近寄ることもできない。
ははは、私達の勢いは圧倒的ではないですか。
「ではでは、こんきらー! 今日は桂林市からお送りします! 絶景ですねー。小舟を借りてですね、これで川を伝いながら観光と攻略をしていこうかと……。ここ、あんまり風景が変わってない感じ?」
「いや、本来存在しているはずの風景からはスケールアップしているようだ。つまり、魔族どもがこの土地を拡大してダンジョン化している」
「なるほどー……」
「しかし素晴らしい観光資源……。観光系配信者としての血が騒ぐ……。木刀とか売ってないかな」
ソワソワするカナンさんなのだった。
※『職業病だなw』『中国で木刀あるのw?』『どんな時でも観光地をアピールするプロ意識~!』
ほんとにね!
小舟を運用してくれるのは、財閥が誇るスタッフの一人。
ここは広西チワン族自治区なんだけど、ベトナムと国境を面してて色々めんどくさい話があって、ダンジョンから解放されたらあちらさんが持ってくんじゃないかなーという話がある場所らしい。
触らないでおきましょう!
で、スタッフさんはチワン族の男性で、御本人も配信者だそう。
「父の影響で武術を習いまして、僕が物心ついたころにダンジョンが発生し、これは天命かと思ったんですよね。その他、かつて名作と呼ばれていた香港映画などを見て育ちました。およそ数十本の映画のセリフとアクションをそらでいけますよ。あ、ここ有名なスポットです。映えますね」
「身の上の話がメインで観光案内してこない」
※『そら、本業配信者だからなw』『観光案内メインじゃない人に観光任せるのどうなってるのw』
「ダンジョン化が起きてから、観光資源としては活用しづらくなっているんだな。どれどれ……? 四半世紀前の記事が出てきた」
ダンジョン化現象が起こり始めた頃ですねえ。
その後、桂林市の説明をカナンさんが読み上げ、私とガイドの人……配信名がリー・ダオロンとか言うそうなので、リーさん。
この二人でカナンさんの話を聞いて「ほー」「そうだったんだ」と頷いた。
おいリーさん!
※『地元のことなんも知らなくて草』『この人、超武闘派の配信者らしい』『アーカイブだとヌンチャク使って戦ってるぞ!』もんじゃ『中国の配信者は、サイバー系、妖怪系、そしてカンフー系に分かれるからな。今はその数を減じてきている、カンフー系配信者ということだろう』
「はえー、リーさんは己の身一つで頑張るスタイルなんですね」
「ええ。僕、体を鍛え、カンフーを極め、映画を見ていれば天にも通ずると信じてるんですよ。だから武器はヌンチャク一つです。まあその場にある武器や準備したものは使いますけど」
人間にできる動作だけでダンジョンに立ち向かうスタンス!
潔いー。
「でも確かに、配信ってその人のキャラが重要ですから、ひたすらカンフーでやる人!ってイメージが固まればそこにバフが乗ったりしますもんねえ。リーさんの配信スタイル見てみたいですー」
「おお! 肉弾系配信者の頂点であるはづき小姐にそう言ってもらえると、僕も嬉しいです! なに、すぐに機会が来ますよ。今回、政府がはづき小姐の動向をインターネットニュースに流したそうなので……」
『やはり来たか!!』
『待ち受けていた甲斐があったわ!』
『好き勝手やってくれおって!!』
次々に声がした。
周りの空に向けて突き出した山々の頂上に、それぞれ人影が立っている。
「な、なにものだー」
※『付き合って上げる優しいはづきっち!!』『誰何(すいか)の声が棒読みなのよw』『でも形式上のお約束は守るのなw』『リーさんが嬉しそうだぞ!』『カンフーも型が重要だからなあw』
『よくぞ聞いた! 我らはジーヤ殿直下、魔将八十八傑! うち二十二人はお前たちに討ち取られたが……』
そんなに魔将いたの!
『残る全員でここに集い、お前たちを迎え撃つことに決めたのだ!!』
「あっ、虱潰しにしなくて良くなる!! ありがとう~」
『お礼を言うな!!』
むきー!と魔将の人たちが激昂した。
『きら星はづき!! この地こそが貴様の墓標となるであろう!! 者共、かかれーっ!!』
『命令をするな!』
『我ら魔将は同格だぞ! 偉そうな口を叩くな!』
『なんだと!?』
『何を!?』
『もがー!!』
あっ、言い争いを始めてしまった!!
「段取りを飛ばしてきてしまったから、魔王軍が機能不全を起こしているのだろう。はづき、やるなら今だが?」
「いえ、絵的に魔将が仲違いして乱闘してるの面白いから、しばらくこれを映して解説しましょう」
「さすがはづき小姐。目の付け所が違う……」
こうして私達三人は、開戦までの間、彼らが大騒ぎするのを眺めながら適当な解説を付けて遊んだのだった。
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