第459話 現状把握と巻き返し会議伝説

 はい、泉州市を解放しました。

 この周囲からはダンジョンを一掃できたんじゃないかなーと。


「はづき! 君のお陰だ。本当に来てくれてよかった、我が友よ!」


「メイユーさんも無事で良かったー」


 二人でキャッキャしてたら、周りの配信者もわあわあ言いながら集まってきた。


「本物のはづきっちだ」「やっぱ本物つええー」「もみちゃんも一緒だぞ」「やっぱ本物かわいいー」


 私はつえーでもみちゃんがかわいいなのか!!

 まあいいでしょう……。


 配信も終わったということで、みんなでこの省の中心に向かうことになった。

 そこに、暫定政府があるんですって。

 車が出て、私とメイユーは一番前の車両に乗り込む。



 えーと、泉州市は福建省だから……。


「暫定政府は福州にあるわよ。もうこの国は、福建省、江西省、湖南省、広東省しか残ってないから」


「ひえええ、半分どころか二割くらいしか残ってないじゃないですかー」


「そう。上の連中が面子を気にして、外に何も言わなかった結果ね。多分敵は、政府が外国とやり取りをしてダンジョンの話を広めることを期待してたんじゃない? だけど国は箝口令(かんこうれい)を敷いて、情報を外部に漏らさなくなった。そんな状況が十日ほど続いたある日、あいつが宣戦布告……いえ、最後通告してきた」


 メイユーが顔をしかめる。

 あいつとは一体!

 まあ魔王じゃないですかね。


「詳しい話は政務官が話すから」


 なるほどー。

 車内の空気が重くなってしまったので、私は場を和らげるためにいかにして魔王と戦ったかとか、勇者パーティ育成の話とか、三曲目がバカ売れしている話をした。


「あー、前は他の国の音楽とかちょこちょこ検閲が入ってたけど、皮肉にも政府がダンジョンに呑まれたら、自由に聞けるようになったのよ」


 Aフォンに私の曲を全部ダウンロードしてくれているらしい!

 ありがたい~。


「そっか、さっきもはづきの曲を流しながら戦えば良かったんじゃない。その発想が出てこなかった……」


「まあ普通歌を聞いてパワーアップしたりしませんからね」


「歌手本人が言う?」


 メイユーが笑い、運転手さんも思わず笑った。

 いやあ、だって普通に考えて、歌で相手が弱体化するとか仲間がパワーアップするとか意味が分からないでしょう……!


 でもなんか効果があるからやってますけどね!

 自分の歌を流すのは、なかなか気恥ずかしいのだ……!!


 廈門市(あもいし)に到着です。

 結構走った!!

 ここにある豪華な建物が、暫定政府の庁舎なのね。


 廈門市(あもいし)から橋を通って、先に行った島に庁舎はあったんだけど、ここがもともとの都心らしい。

 なるほどー、確かに栄えてる。


 私達は中に案内されると、もうお料理が並んでいたのだった。


「おほー、お腹へってたところだったので」


「期待していいわよ。本場の中華はひと味違うから」


 メイユーがウインクしてくる。

 中華の誇りを感じる~。


 現在の書記代行みたいな人が出てきた。

 このおじさんが最高責任者っぽい。


「以前だったら、相手の格を見た上で対応を決めていたんだけど……。今回はそれが裏目に出て、国土そのものを失いかねない状況になったから。だから初手から彼が出てきているの」


 メイユーさんが解説してくれる。

 助かるー。


「きら星はづきさん! 助かりました! ダンジョンを迎撃してくれてありがとう!」


 書記代行が握手を求めてきたので、私も応じた。

 ちょっとペコペコしそうになったら、メイユーがお尻をぺちぺちした。


「あなた、今は日本の代表なんだから胸を張って」


「は、はいぃ。私だけじゃなくて、メイユーが凄く頑張ったので敵のボスをやっつけられましたー」


 メイユーを褒めたら、その場にいた偉そうな人たちがオー、と嬉しそうにどよめいた。

 やっぱり自国の配信者が活躍すると嬉しいもんね。


 そして、なんかその偉い人たちも思ったよりも若い顔ぶれだな、と思う。

 ベテラン政治家さんの大半がダンジョンに消えたかー。


 私はその後、色々お話を聞いた。


 魔王からの最後通告の直後、異形の老人がやって来たと。

 4mくらいあるひょろりと細長いおじいさんが、『魔王はこの状況をつまらないと仰っている。だから、ちょっと本気を出して状況を動かす。お前たち人間は必死に抗い、無理だったら助けを求めよ』

 そう告げて消えたのだとか。


 で、その日のうちに黒竜江省からダンジョンの猛進撃がスタート。

 同時多発的にあちこちからダンジョンも発生し、なんとその日のうちに内部から発生したダンジョンで北京市壊滅。

 上海と重慶も月内に落とされ、にっちもさっちもいかなくなったそうだ。


 ひえー。


「では魔王は日本だと本気出してなかったのではないか」


「はづきが真っ向から食い止めたからじゃない?」


 そうかなあ……。

 確かにあのタンカーのダンジョンは、放っておいたらすごい速度で広がっていった気がしたけど。

 私がサッと入ってサッと粉砕して良かった良かった。


「我々は、奪われた国土を取り戻したい。力を貸して欲しい……! 虚勢がこの状況を招いた以上、我々は君に助力を仰ぐ他ない」


 書記代行さんが真剣な顔でおっしゃる。

 な、なるほどー!

 実利重視の人が生き残ってトップになったのね。


「あ、じゃあやります。なので今は……ご飯食べていいですか」


 書記代行さんと幹部の人達がにっこりした。


「もちろん! 例え国が危機に陥ろうと、大事な客人を飢えさせるわけにはいかない。存分に食べ、英気を養ってくれ!」


 うひょー、ありがたい!

 

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