第386話 打ち上げ秒読み伝説

 もの凄い状況になりつつ、プライベートジェットはひたすら西へ西へ。

 とにかく種子島に向かわないといけないわけだ。


 普通の飛行機なら、眷属の攻撃でもう落ちてると思うんだけど、そこはアバターとか魔法とかの技術を使ったジェット機。

 ちょっとした破損箇所も、リアルタイムでアバターを使い補修できちゃう。


 今の最新機器は、物質半分、アバター半分とかになってきてるみたいですねー。


「さすがスレイヤーVさん強い。マイ・サンがんばれー!」


「女子高生の息子が元迷宮省長官ってどうなんですかねえ……」


 しみじみ呟く、迷宮省職員さん。


「私が作ったアバターを着て活躍してるだけで、なんか感慨深いですよー。応援しちゃお」


 私がコメントを打ち込んだら、※『!?』『はづきっちじゃん!』『ママいたw』『スレイヤー、ママを守れ!』とか盛り上がる。

 戦闘中もきちんとコメント欄を見ているスレイヤーVさんは、サムズアップして見せた。

 武器にしてるマトックが、群がる眷属を薙ぎ払う! そしてマトックが纏っていた爆裂火球魔法が爆発を起こす!

 やっぱ個人戦力だとこの人はめちゃくちゃに強いなあー。


 カナンさんはサポートに回ってるみたいだ。

 精霊魔法で飛行機周りの風の動きを制御して、火の眷属をスレイヤーVさんの攻撃範囲に送り込んでる。


 おかげで、マトックが振り回されるたびに眷属が『ウグワー!!』と消し飛ぶ。

 スレイヤーVさんは普通に現代魔法も使えるみたいですね。


 ファイアボール、アイスブリッツ、サンダーニードルという三つの技を使い、これと物理攻撃を組み合わせて三属性で殴れるんだそうで。

 元長官強かった。


 頼れるマイ・サン。


 がんばえー、と応援してたら、もう町中を抜けて海の上。

 種子島へ向かって一直線です。


 おお、四国が見えるー。


 機上のドタバタもかなり収まって参りました。

 あ、いや、なんか種子島に直接攻撃を仕掛けてない?


 これはまずいまずい。


「えーと、予告なしの緊急配信なんですが」


 ツブヤキックスの放送機能を使って、宣言する。


「今から種子島到着まで各動画サイトで配信します! えー、今から山程式神を作るので……むにゃむにゃ」


 開いたばかりの配信枠に、どんどん人が集まってくる!


「じゃあですね、今から式神を作って行こうと思うんですけどー。どんどん生産しますねー。ブタさん! ブタさん! ブタさん!!」


 機内にフライングブタさんが溢れていく。


「えー、皆さん! これから皆さんは高速飛行ブタさんです!!」


『ぶいーっ!!』


 ブタさんがいいお返事をする。

 いいですねいいですねー。


※『かわいい』『かわいい』『コブタの大合唱だw』『でもこのブタ、実力的には大罪勢の眷属なんでしょ……?』『幹部はイノシカチョウだからw』


「うんうん、イノシカチョウの三人もどんどん強く魅力的になってますので、ぜひフォローしてね! はい、じゃあブタさん行ってみましょー! 壁を超えて、しゅつげーき!」


『ぶいーっ!!』


 ジェット機の中から、豚さんたちがもりもりと飛び出していく。

 そのついでで、火の眷属にガンガンぶつかってやっつけていくのだ!


『ウグワーッ!?』『なんだこいつら!? ウグワーッ!』『つ、強いぞ!!』『我らが押されている!』


 そりゃあもう、世界中に降り注ぐ火の眷属と違って、こっちは私が作った少数精鋭ですので。

 ブタさんたちは次々に加速モードに入る。

 で、ビューンと種子島へ飛んでいった。


 ロケットを守り切るのだ!


 私はここで、栄養補給の機内食。

 専用でレンチンのお弁当が用意してあった!


 配信しながらもしゃもしゃ食べる。

 美味しい美味しい。


※『突然飯テロ動画になったぞ』『世界中で戦っているさなか、このチャンネルが癒やしであるw』『腹が減っては戦はできぬ的なのだなw』


「さくっと食べ終わってお茶もいただきましたので、そろそろ種子島かなーと思います。えー、ここからロケットに乗って打ち出し、そして空にやって来てる恒星みたいな大魔将との対決までをですね、シームレスで配信して行きますんで」


※『世界の命運を掛けたいつもの配信じゃん!!』『毎度ながら唐突に超重要なことをしてくるw』『うおおおはづきっち頑張れー!!』『会社の業務全部止めて応援してるわ』


 今回は、ブタさんたちが露払いをしてくれたので、ジェット機は無事に降りていきます。

 ここで、スレイヤーVさんとカナンさんが発射場の守りにつく。


 あちこちでブタさんが頑張っている中、私は空港に降りるのでした。


「どうもどうも」


「はづきさん! お待ちしていました! アメリカのスタッフも遠隔で参加しています!」


 種子島さんだ!


『グランマ! プリンセス・トゥインクルスター号は基本見た目はあのまま! 外装に凝ってる時間が無かったの! だからこのまま乗り込んで! 中身はグレードアップしたから!』


 ケイトさん!


※『グランマ……!?』『はづきっちがママを通り越してついにおばあちゃんに……』『あれ? はづきっちの孫ということは、もしかしてスレイヤーVの娘さん!?』『なーるほど! ロケット開発者だったのか!』


 察しがいいお前らなのだった。

 そしてロケットの全貌が明らかになると、コメント欄が大騒ぎになった。


※『うおおおおおおお』『キラキラピンクロケット!!』『僕の知ってるロケットじゃないw』『多段式じゃないのかw』『星の部分がキラキラ輝いてるんだけど!?』いももち『大変はづきちゃんらしい……』


「凄いでしょう。プリンセス・トゥインクルスター号です! あと、私も着替えますね。宇宙服~」


 アバター製の宇宙服、登録しておいたんだよね。

 パッと私の姿が切り替わると……。


※『うおおおおおおおおお』『おおおおおおおおおおおお』『体ピッタリフィット宇宙服!!』おこのみ『セン、セン、センシティブ!!』もんじゃ『確かに隙間がなくなれば気密は万全と言えるだろう……しかし、なんというか、体にピッタリフィットするとは……』


「まあ水着よりも露出が少なめですので……。じゃあ、早速乗り込んで秒読み行きますね。こうしている間にもどんどん火の眷属が降ってきますんで! 宇宙で会おう」


 私はコメント欄に手を振って、ロケットに乗り込んだ。

 まあ、外で打ち上げを配信した後、すぐにロケット内に切り替わるんですが。


「種子島さん、ケイトさん、秒読みお願いします!」


『はい!』


『3! 2! 1! 発射!』


※『はやいはやいはやいw!!』『こんな超速の秒読み初めてだわw』『あっ、飛び上がった!』『女子高生、宇宙に……!!』


 行ってきます!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る