第382話 新学期始まり、新しい関係も生まれる伝説
翌日が始業式という夜。
以前、凸して応援した配信者の、ぱいかじゆくいちゃんが私に紹介したい人がいると連絡してきた。
石垣島出身で、八重山諸島を中心に活動しているゆくいちゃん。
ザッコで繋がってて、他に熊内またぎちゃんも同じルームでお喋りしてる。
北海道と石垣島の配信者が今、東京の私の仲介を経てつながる……!
『あのねー、紹介したい人っていうのはね、ばー(私)やまたぎちゃんと同じ個人勢で……あ、またぎちゃんは団体所属したんだっけ!』
『あっ、そうなんだべ! シューティング系女子配信者グループのDすぽ!に通ってー』
『すごいー!!』
「すごいー!!」
私とゆくいちゃんで、おめでとうおめでとうと祝福したのだった。
なんか、私に紹介された配信から同接がぐんと伸びて、業界的にも注目されてきたところでオーディション受けたら受かったんだとか。
私のおかげって感謝されたけど、それはまたぎちゃんの実力の賜物では!
それはそれとして。
「紹介したい人って?」
『あっ、あのねー。ロケットとか宇宙に詳しい配信者の人で、南くろすっていう人でー』
「ほうほうほう。あ、聞いたことある」
『でしょー。海外の探査ロケット発射の放送を同時視聴して解説してた娘。はづきちゃんがロケットで打ち上げられるって聞いたら、ぜひ友達になりたいって!』
「なるほどー。わかりましたー。紹介されます!」
『良かったー! じゃあ紹介しとくさ!』
ふむふむふむ。
思わぬところから人のつながりは生まれるなあ。
そんな事を考えながら一晩過ぎて、私は登校した。
久々の学校!
十日ちょっと離れてただけで懐かしくなるー。
そして始業式!
校長先生がもにゃもにゃ言って、すぐに終わった。
教室に戻り、みんながわいわい騒いでいる。
一瞬静かになって、なんかクラス中からの視線を感じた気がするが?
気のせいでしょう。
「ね、ねえ」
「あっはい」
委員長が、陽キャな女子と一緒に話しかけてきた。
この組み合わせは一体……!?
「はづきちゃんのロケットシミュレーション動画見た? すごかったねえ。みんなでロケットを打ち上げるとか……。あれって間近で見たらどうだったのかな」
「うんうん、うちも気になってんの! 師匠、なんか分かったら教えてよ!」
あのあと、シミュレーションのやつは短く編集されて動画がアップされてたのだ。
短いからたくさんの人が見たみたい。
「ははあ、近くで打ち上げロケットを見る……。あ、ブタさんの? ぶうぶう言っててかわいい」
「おおーっ」
なんか私のどうでもいい発言に、クラスがどよめく。
えっ!?
聞き耳立ててる!?
いやいや、気のせいだろう……。
「あれは衝撃的な動画だったものねえ」
ぼたんちゃんがうんうん頷いている。
隣でもみじちゃんは、妙にハラハラしてるような。
えっ? お口にチャック?
なにゆえー?
そうこうしていたら、先生が入ってきた。
おや? 先生の隣に、メガネのスラッとした女の人がいる。
「皆さん、今学期もよろしくお願いします。さて、これから二週間の間、当クラスに教育実習生の先生が入ることになりました」
「よろしくお願いします! 皆さんよりもちょっと前に卒業したOGなんですけど、母校で教育実習生やらせてもらうことになりました。お手柔らかにお願いしますね」
知的な美人さんだー。
クラスのみんなが、はーい、とか、よろしくねー、とか、かわいいー、とか盛り上がる。
うちのクラスの民度は高い。
その後、最初の授業をやる。
クラス担任の受け持ちは物理とか化学。
担当できる女性の教諭が少ないので、兼任してるそうです。
なので、来年からの文系担当のみんなは担任の授業を受けられなくなる……。
まあ、今でさえ担任の授業は難解みたいで、クラスメイトは背景に宇宙のある呆然とした顔の猫みたいな表情をして授業に望んでいるのだ。
理系の授業で専門的になるの楽しみー。
あれ?
ということは、教育実習の先生も理系?
「そうです」
そうらしい。
クラスメイトが質問したら答えてくれた。
「私は大学で、ロケット工学の研究室に入っててですね。将来的には自分の手でロケットを打ち上げたいんです!」
この話題がタイムリーだったので、クラスがワーッと沸いた。
「先生、はづきっちのロケット動画見た!?」
「見ました! 興奮しました……!! ロケットはもう、科学技術だけで上げる時代にあらず! 物理法則と魔法法則を理解した上で、技術と魔学の複合が求められるようになっているんですよね! まさにロケット新時代の到来です! 魔的エーテルの海に初めて到達したあの配信は歴史的意味があって……あっ」
すごい早口で、目をキラキラさせながらまくしたてる教育実習の先生。
クラスがポカーンとしたので、我に返ったらしい。
うちの担任がニコニコしながらフォローした。
それで挨拶はおしまい。
ここからは、実習の先生を補助にした授業となった。
クラスの半分以上はやっぱり、何も考えられない、背景が宇宙になった猫みたいな顔になって授業を受けていた。
理系、難しいのか……?
そして放課後。
イノシカチョウの三人と一緒に帰ろう帰ろう、という話になっていたところ……。
教育実習の先生がトテトテと駆け寄ってきた。
「あっ、あのっ!」
「あっはい」
私が振り返って応対すると、彼女が目を輝かせた。
「その挙動、返答、声質にトーン!」
ここでささやき声になって、
「きら星はづきさんですよね」
「あひー」
な、な、なぜバレたんだー!!
イノシカチョウにも緊張が走る!
あ、いや、三人ともやっぱりね、という顔をしてる。
なぜ落ち着いているんだー。
「あ、驚かないでください! 私、ぱいかじゆくいちゃんから紹介されて、イカルガに連絡したら偶然私が教育実習に行く高校の、しかもそのクラスにあなたがいるって聞いて……」
「ゆくいちゃんから!? と、と、ということは、あなたはもしや……」
「南くろすです。ロケット・宇宙解説系配信者の……! 新時代ロケットの第一人者にして、エーテル宇宙へ飛び出す宇宙飛行士第一号のきら星はづきさんにお会いできて、光栄です!!」
うおお、世界が狭いーっ。
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