第227話 私がゲームキャラになったなら伝説

 紆余曲折あって、ついに私の格ゲーキャラがゲームに実装された。

 VRの総合ロビーから行けるらしいので、私は渋々VRに移動したのだった。


「お前らー、こんきらー! 今日はですねー。私のゲームキャラが実装されたので見に行きます」


※『こんきらー』『こんきらー』『もう使った』『いやー、流石に現実よりもナーフされてたな』『現実的なはづきっちだった』『原作を知らないやつが、このショボいゴボウの突きで三割持っていくのおかしいだろって言ってたけど』『原作知ってるとこれで十割持ってくもんなあw』


 原作!

 現実の私のことかあ。

 しかしナーフとは一体何事だろう。


 弱くなってるっていうことだろうけど……。

 

「一体どうなってるんです?」


※もんじゃ『被弾しないはづきっちをそのままゲームにしたら、ゲームにならないんだよ……』


「なるほどー!」


 もんじゃは分かりやすいなあ。

 こうしてやってきた621ロビー。


『はづきっちだ!』『予告通りはづきっちが来た!』『うわーっ!』


 ぎゅうぎゅうに詰めかけてくる人たちを、ゴボウからピンクの光を放ってポーンと押しのける。


『ウグワー』『やられたー』『はづきっちと言えばこれ』


 なんかコメントしながら吹っ飛んでいく。


「通してくださーい」


※『ぶっ放してから言うやつがあるかw』『もうごく自然に大罪勢のパワーを使いこなしているな……!』『この間の配信では全然使ってなかったのに、一般人には使う不思議w』


「このピンクのパワーが一番威力も弱くてみんな怪我をしないからですねー」


※『ゴボウで直に叩く方がヤバいのかw!!』『大罪勢のパワーが前座扱いかあ……』


『見ろよ、ゴボウビーム実績が解除されたぜ』『やった!』


 コメント欄も、私に押しのけられた人も、なんかみんな変な感じの笑顔になっている気がする。


『はづきっちだ! だが、俺は付き合いが長いから詳しいんだ。付かず離れずの距離で行くぞ。今日も最高のセンシティブをお願いします!!』


 なんかちょっと離れたところをついてくる人がいる。

 なんだろう……?

 広島VS大阪というお好み焼き柄のシャツを着た人だけど……。


 まあ気にしないでおこう。


 総合ロビーに降りたら、やっぱり人だかりだった。

 なんだなんだ。


 あっ!!

 あの人は!!


「カンナちゃーん!」


 私がぴょんぴょん飛び上がって声を張り上げると、なんかピンク色のオーラみたいなのが空間に広がった。

 喧騒をぶっ飛ばして、私の言葉が彼女に届く。


「はづきちゃん! ……じゃない、はづきさん! 奇遇ですわねえ。実はわたくし、はづきさんのキャラを見に行くところなんですの」


「本当!? じゃあ一緒に行こう行こう」


 そういうことになった。


※『突発コラボじゃん!』『てえてえ』『はづきっちニッコニコ』


 こうしてやって来た、格闘ゲームゾーン。


 ストレートファイター6というゲームで、私のキャラが実装されていた。

 おお、対戦が行われてる。


 格ゲーキャラとなった私は……。

 なんか、ガードしながら小走りで画面の前後を動けるらしく、トリッキーなキャラらしかった。


 アーカイブで見た私の動きだ!

 あと、ゴボウの当たり判定が大きい。

 だから、ゴボウは必殺技ゲージみたいなのを消費しないと出せないようになっていた。


 それから見たことがない私の動き!

 えっ、しゃがみ小キック!?

 ジャンプ大パンチ!?


「うーむ」


「わたくしたちそのままの動きだと、ゲームになりませんもの。はづきさんも不思議なポーズを取らされたりしたでしょう?」


「した!」


 あれはそういうことだったのか。

 そしてやられモーション。


※『はづきっちがやられている! ゲームのキャラだけど』『違和感凄いなあw』『あー、スーパー必殺技決められて負けた!』『負けているはづきっち、違和感が凄いな……w!』


『最近のゲームは服が破れたりしないんですな……残念』


 広島VS大阪シャツの人が呟いていた。

 そんな時代が過去に……!?

 センシティブじゃないですか。


 そしてカンナちゃんとシャツの人と三人で並んで格ゲーを眺めつつ、色々感想を喋る。


「……はづきさん、この人はどなた?」


「多分うちのリスナーだと思います。だよね?」


『うす! 初回から見てる』


「初回から……!? ま、まさか粉物三人衆の一人……消去法的に……おこのみ!」


『イエス! たまたまVR空間に来たらはづきっちがいたのでついてきた!!』


 ぴょーんと飛び跳ねるおこのみ。

 うーむ、想像通りの人だ。

 VRのアバターだけど。


「基本的にあんまり一人ひとりのリスナーさんに個別サービスとかできないので……」


『全然OK! ちょっと離れたところから見てる!』


 そう告げると、おこのみはサササーっと自分から距離を取り、遠くからこちらを観察しだした。


「ある意味、ファンとしての距離感をきちんと分かっている人ですわね……」


「変なところで男前だよね」


 そういう話をしていたら、近くで見覚えのある鎧武者が対戦を見学しているのだった。


「あっ、あなたは確か、えーと」


『おお! きら星はづき! 久しいな!』


※『当たり前みたいな顔して魔将バングラッドがいるやんw!!』『普通にVR世界に溶け込んでるのどうなのw』『誰かのアバターだったりしない?』もんじゃ『バングラッドの姿は規定で再現できないようにされているはずだ』『ほな本物かあ』『本物の魔将じゃん!!』


 コメント欄が賑やかになった。

 そうそう!

 バングラッドさん!


「バングラッドさんもまた遊びに来たんですか」


『うむ。他の魔将はゴボウアースのリアルに進出する準備をしているがな。我はまだここでやり残した事がある。ああ、このゲームは頂点のプレイヤーを倒した。今世界ナンバーワンは我だ』


「つよい」


『むはははははは』


 私が素直な感想を述べたら、バングラッドさんが機嫌良さそうに笑った。


『だが、我でもまだまだ及ばぬ世界がある。ついてこい、きら星はづき』


「なんでしょう」


「はづきさん、こ、この人? についていってもいいんですの!?」


「なんだかんだで正々堂々な人だから大丈夫じゃないかなあ……」


 三人+後ろにおこのみで移動する。


 バングラッドさんが案内してくれたのは……。


『スーパーオクノカート!! これよ! 圧倒的スピード感! アイテムを使って互いの邪魔をするタクティクス! そしていつ順位が入れ替わるか分からぬヒリヒリしたスリル! 我をも手玉に取る強者ばかりがおる……!! 今の我はこれの頂点を目指しているのだ!!』


「なんとレースゲーム!!」


 スーパーオクノカートは、人気ゲームキャラのタマガワ・オクノが愉快な仲間たちと繰り広げるレーシングゲーム。

 ゲーム中に!(ビックリマーク)ブロックを取ると、ピコーン!と技を閃いたりして相手の妨害や自分のパワーアップができる。


 奥深いゲームなのだ。

 ちなみに私はこのゲーム超弱い。

 人と競い合う系のは全部苦手でな……!


『どうだきら星はづき! 我と余興で戦って見ぬか!』


「あの、私こういうの凄く苦手で」


『なんだともったいない! では我が教えてやる。やるぞやるぞ』


「あひー」


「はづきさん!? ああ、もうー!」


『えっ、俺も参加する流れ!?』


 こうして、妙な面子でレースゲームをすることになってしまったのだ……!


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