第160話 VRダンジョンはゲームっぽい?伝説

 廃病院めいたダンジョンをトコトコ歩く。

 視界が赤いなー。赤黒いなー。

 そして、歩く感触や音で感じるそれっぽいリアル質感が、逆に作り物だなーと思わせてくれて微笑ましい。


 本物の廃病院ダンジョンは、もっとこう……チープな感じなのだ。

 私は詳しいんだ。


「えー、では探索していきますね。えっと、ゲームっぽい感じ?」


※『他の配信者のを見てるとそうだねー』『フラグ立てて行かないと攻略できないっぽい』チャラウェイ『見に来たぜ!』


「あっ、チャラウェイさん!」


※『チャラウェイおるやん!』『チャラウェイもVRダンジョン探索してたな』『アバターをむっちゃマッチョに改造してて笑ったよなw』『有識者チャラウェイ』


 チャラウェイさんは私が初めて正式にコラボした個人勢で、リアルではウェイウェイ言ってる陽の者、配信はヒャッハー言ってる棘肩パッドモヒカンの先輩配信者さんだ。

 色々とても頼れる。

 私が密かに兄貴分だと思っている人なのだ。


「チャラウェイさん、面倒くさい探索必須なんです?」


 襲ってくるナースの格好をしたゾンビみたいなのを、床に落ちてた点滴つける棒で小突き倒す。

 天井を這いながら飛びかかってくる患者さんみたいなゾンビを、点滴つける棒ではたき落とす。


※『病院の間合いを見切ってるぞw』『へっぴり腰にしか見えないのに恐ろしく巧みな棒術だw』チャラウェイ『ウェイ! パターン的にはフラグ回避したほうがいいんだけどさ、割とパワー押しで行けるよ。ま、そこでペナルティみたいな強力なデーモンが湧くけど』


「なるほどー。じゃあノーリスクみたいなもんですね……」


※『ペナルティって言ってたろw』『デーモンをリスクに数えない女w』『あ、そこフラグの閉ざされた病室……』


「あちょっ」


 私は病室の鍵をゴボウでペチペチ叩いた。

 扉ごと砕け散る。


『ウボアーッ!! ペナルティーッ!!』


 叫びながら、地面からにじみ出してくる大きな影みたいなやつ。

 

※チャラウェイ『そいつには実体が無いから物理攻撃が通じないぜ! 気をつけろはづきっち!』


「あっはい! じゃあアメリカで覚えたこの攻撃で……。あちょっ」


 私は同接パワーをゴボウに集めて、床を叩いた。

 広がるピンクの波紋。

 それが影みたいなのを飲み込んで……。


『ウグワーッ!!』


 粉々に吹き飛ばした。


※『本当にノーリスクで吹き飛ばしやがったw』『物理攻撃が通じないとか大した問題じゃないんだなw』『凄まじい安心感』


 みんな私を化け物みたいに言うのだ……!

 こうして、フラグをショートカットしてサクサクダンジョン探索を進めていく。


 どうやらここって、何かのゲームで使われていたステージに繋がってるらしい。

 で、このゲームをダウンロードした誰かがデーモン化したので、ステージごとModのダンジョンとして出現した……みたいな。


「これ、他の扉も入れたりします? あ、できない? あー、壁に書かれた絵なんだ……」


※『ゲームあるあるですね』もんじゃ『はづきっち、病院の地図を手に入れよう。このゲームなら知っている。そこの宿直室で地図を手に入れられる……』『あ、そこゲームと一緒だったんだ!』


「ありがたい~」


 コメント欄の誘導に従って廊下を進む。

 なるほど、ここが宿直室ですね……。


「じゃあ無理やり入りますね。あちょー」


 扉ごとふっ飛ばし、ペナルティで出てくるデーモンをぶっ飛ばす。

 そして地図をゲットなのだ!


「なるほど……流石はホラーゲームで使われていた病院ステージ。ありえないくらい入り組んでる……。この広さの病院ってもう迷路でしょ。私なら絶対迷う……」


※『ゲームですからw』『はづきっちマジレスやめてくれw』『ダンジョン化したから複雑な形になったんだろ』『はづきっちいつもダンジョン化して拡張したところ冒険してるじゃん』


「言われてみれば……。うう、偏見に囚われていたので恥ずかしい」


※『反省できて偉い』『モンスターやデーモンを縦横無尽にしばきながら反省するのほんと器用w』


「現実よりもですね、割とこのダンジョンはシステマチックな感じでして。えっと、こういうタイミングだと出てきますあちょっ」


※『いきなり振り返らずに背後のモンスターを倒したぞ!』『毎週ダンジョン配信してるような人だからな……』『理不尽なモンスター出現を知り尽くしているw』


 ということで、楽しくVRダンジョンを拝見して回ったのだった。

 地図を見ながらなのでとてもイージーだったし、最後は手術室で機械の触手みたいなのを振り回すデーモン戦を、ちょちょっとこなしてクリアした。


※おこのみ『分かってはいたが、中途半端な触手程度でははづきっちのセンシティブに触れることもできないか……!』『勝って欲しいがちょっとはセンシティブへの期待もある……』『悩ましいところですな……』


 なんでセンシティブに期待している人たちがいるんですかねえ……。

 

※『お前らの中に、センシティブ勢と考察勢とエンジョイ勢が混在しているんだよなw』『海外ニキたちはエキサイト勢か』


「来る者拒まずですから……。えーと、今回のダンジョンは全体的に楽な感じでした! VRは仕掛けがはっきり分かって理不尽さが少ないですねー。クリア時間は25分です」


※チャラウェイ『はっや!! RTAかよw!』『アメリカ最難関ダンジョンをRTAした女に何を言ってるんだw』『現実のダンジョンはクソ理不尽なんだろうな』『ダンジョン配信失敗して行方不明になった配信者のアーカイブ見たか? 無理ゲーでクソゲーだよこんなの』『はづきっちを基準にしたらいかんぞ……』『彼女がおかしいだけだからな』


 褒められているんだろうが、散々言われている気もする……。


※チャラウェイ『ウェイウェイ! でも凄いぜはづきっち! 今度またコラボしようぜ! 俺もそっち行くからさ!』


「あっ、はーい! ぜひお願いしますぅ」


 これはすっごく久しぶりのチャラウェイさんとのコラボになるかも知れない!


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