イケてる?私の勇躍編
第44話 きら星はづきウォッチ伝説
~冒険配信者うぉっちチャンネル~
─こんにちはなのだ!
─今日も冒険配信者うぉっちチャンネルをやっていくのだ!
合成音声が流れる。
様々な冒険配信者を紹介し、彼らの来歴や、関わった人々からのインタビューを伝える、人気まとめチャンネル。
アワチューブにおいて、冒険配信者系まとめ動画のトップクラスに君臨している。
─みんな、この間のダンジョンハザードは大丈夫だったのだ?
─東京二十三区が戦場に変わったあの一週間は、まさに戦争だったのだ!
─これを機に隣国が軍を動かそうとしていたという話もあるのだ!
─だけど、お隣の国でも首都近辺でダンジョンハザードが発生したので、そのお話はなかったことになったのだ!
─良かったのだ!
謎の伝手から、他のまとめ動画ではなし得ない情報濃度を誇るこのチャンネル。
本日もプレミア配信には多くの人々が詰めかけていた。
※『マジかよ』『だけどあの国広いからな。管理しきれないだろ』『常にどこかでダンジョンハザード起きてるらしいぜ』『まだ日本はマシなんだなあ』『都市圏だけだけどな』
─冒険配信をまかないきれない小さい国は、幾つかがダンジョンハザードで滅びているのだ。
─僕らも安心しきってたらいけないのだ。
─なので、こうやって冒険配信者を応援して、いざという時に備えるチャンネルがこの、冒険配信者うぉっちチャンネルなのだ!
※『そうだそうだ』『いつも助かってます』
─じゃあ今回の動画なんだけど。
─ここ最近は大手事務所所属の冒険配信者を取り上げていたのだ。
─今回は個人配信者を取り上げて行こうと思うのだ。
※『個人勢かあ』『今取り上げる個人勢っていうと……』『あの子でしょ。この間の、二十三区ハザードを解決した立役者の……』
─彼女はなんと、二ヶ月前にデビューしたばかりなのだ!
─噂によると、現役女子高校生らしいのだ。
─学校もあるだろうから、素性の詮索はやめてぼかしてあるのだ。
※『やっぱり!』『来ました!』『うおおおおおお』『うおおおおおお』『俺たちの姫』『なんだなんだ』『きら星はづきチャンネルから来ました』
─そう、ご想像の通りなのだ。
─彼女の名前は、きら星はづき。
─ヘタレっぽいムーブでゴボウを振り回す、陰キャ系冒険配信者なのだ!
※『おおーっ!!』『やっぱり!』『まとめいっぱい上がってたもんな』『あの女子高生自転車返してもらったの?』『なうファンタジーの職員さんが返しに来て、自転車を家宝として祀ってるって』
チャットが大いに盛り上がる。
この賑わいはSNSまで伝播し、ツブヤキッターでもトレンドになった。
ハッシュタグ、きら星はづき伝説。
誰もが、このとんでもない新人冒険配信者について語り始める。
だが、当の本人はこの時……。
兄からのお土産である高級店のチーズケーキを半ホール食べてコーラを飲み、ドカ食い気絶部をしていた。
体に悪い。
─まずはデビューから解説していくのだ。
─きら星はづきさんのチャンネルや、使用させてもらったまとめ動画は下に貼っておくのだ。
─動画全体を見たい時はぜひ見に行って欲しいのだ。
※たこやき『ありがたい。この収益でまたはづきっちにスパチャします』
─デビューはこれなのだ。
─なんと大型新人きら星はづきさんは、最初の同接数が2人だったのだ!
─この状態の上に、武器はゴボウでダンジョン初挑戦という死にに行ったとしか思えないライブ配信をしたのだ。
─正気の沙汰ではないのだ。
※『端的に言って頭がおかしい』『なんで生きてるの……』『デビューから普通ではないんだなあ』
─この配信の中で、普通にゴブリンに押され、ゴボウは切られかかって絶体絶命になるのだ。
※『そりゃあね』『残当』
─だけどここで旗色が変わるのだ!
─三人目の人が見に来て同接が三人になったことで、ゴボウの強度がゴブリンの手にしていた出刃包丁と拮抗したのだ!
─ここから、同接数三人でゴボウくらいの強度のものが金属並になる研究結果が発表されることになったのだ。
─これはダンジョン学において大いなる前進とされているのだ。
─近々、ダンジョン学会からきら星はづきさんに感謝状が送られる予定なのだ。
※『そんな学問が……!!』『そっか、ダンジョン研究する学問もなきゃおかしいもんな』『俺ら娯楽として消費してたから気付かなかったわ』
─次に、コメント欄に出現した荒らしによって、アワチューブのガバガバAIを利用されてBANされかかってしまったのだ。
※『アワチューブ、本当にあのガバ判定AI勘弁して欲しいよな』
─BANされてあわや引退と思われたきら星はづきさん。
─ここからは有名なまとめ動画で知っている人も多いと思うのだ。
─はづきさんが戦えなくなった状況を支えたチャラウェイさん。
─彼が限界に近づいた時、はづきさんの華麗な復活劇が起こるのだ!
─これまで、はづきさんはそこそこ有名になっていたけど、ここから彼女は本格的にバズったのだ!
※『ここ最高なんだよな……!』『復活からの、同接パワーで輝くゴボウ!! 一閃でデーモンを一掃!』『これ見て震えて即座に登録したもん』『ネチョネチョ動画にも転載されてるよな』
─はづきさんの快進撃が始まるのだ。
─企業案件、有名配信者とのコラボ……。
─その全てで、はづきさんはとんでもない実力を見せつけてくれているのだ!
※『必ずハプニングみたいなの起きるよな』『だけどそれを一番映える感じで解決するんだよ』『持ってるよな……』
─一見して自信なさそうな陰キャっぽい配信者だけど、いざとなった時の肝の据わり方と行動力、そして実力は超一流!
─このことから、はづきさんは別の有名配信者の転生アカウントではないかと疑う声もあるのだ。
─だけど当チャンネルの独自調査によると、はづきさんは本当にごく普通の女子高校生なのだ。
─特にスポーツも格闘技もやってないし、なんならパソコンもあまり得意ではないのだ。
─特技も特にないのだ。
※『細かい……!!』『さすがの取材力』『だけどよ、兄が確か、あの明星斑鳩なんだろ? ってことは英才教育とか……』
─きら星はづきさんのお兄さんが、あの明星斑鳩だということは周知の事実なのだ。
─はづきさんが使っているAフォンも、斑鳩さんが引退時に買い取ったものなのだ。
─だけど、斑鳩さんとはづきさんの活動スタイルを見比べて欲しいのだ。
─こいつを見てほしいのだ。どう思うのだ?
※『すごく……似通ってないです』『共通点が一つもない』『スタイリッシュガン・カタ配信と、ゴボウ振り回すあひー配信か……』『完全に独自じゃん』
─様々な運に恵まれ……だけどそれは裏返せば、危機的なハプニングの連続で、これを凄い才能と実力でひっくり返してきた……!
─それこそが、きら星はづきさんなのだ!
─最後に、ダンジョンハザードに見舞われた丘の上高校のインタビューをお送りするのだ。
※『はづきっちが出てきた高校だな?』『あそこに通ってるんじゃないかって説があったけど』『それらしい生徒はいないって話だったな』
『後ろから、はづきっちが出てきたんです! もう、もう、動画のままで! でも……本物はもっとずっとかっこよかった!!』
『デーモンが怯えたんです! はづきっち凄かった! あれが本物の配信者なんだって思った! もちろん、すぐにチャンネル登録しました!』
『自転車貸したんです。もう……もったいなくて乗れない……。家宝です……! はづきっちー! 大好き! 愛してるー!!』
─高校のみんなは、すっかりはづきさんのファンになっていたのだ。
─きら星はづき。凄い大型新人が現れたのだ!
─既にはづきさんのチャンネル登録者数は60万人まで増えているのだ。
※『ダンジョンハザード前の倍以上じゃん!』『しかもまだまだどんどん上がってるんだろ?』『すげえ……』『そしてこれだけ登録者数が増えてるのに、メンバー登録とかの課金コンテンツが一切ない……』『それ、絶対に思いついてないだけだって……』『金を払わせてくれ……!!』
─これからも、きら星はづきさんを応援して行こうなのだ!
─以上、冒険配信者うぉっちチャンネルでしたのだ!
─この動画を面白いと思ってもらえたなら、高評価とチャンネル登録を────
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